アヴェスターにはこう書いている?
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長友薫輝、正木満之、神田敏史 『長友先生、国保って何ですか』(その1)

 65歳以上75歳未満の割合では国保は3割を超えており、加入者1人当たりの医療費で比較すると、約2倍の費用を要していることがわかります。(p.24)


2011年度の国保と他の公的医療保険との比較。

65~74歳の割合は協会けんぽは4.7%、組合健保は2.5%と、国保が突出して高い。被用者保険の被保険者が退職すると(任意継続を経ることはあるが、最終的には)国保に加入することになるのだから、半ば必然的にこのようなことになるわけだ。

1人当たりの医療費が高いのも高齢者、特に70歳以上の加入者の割合が高いことが大きな要因だろう。このことが保険料が高くなる要因になっている。



 国保料は、「加入者が支払えるかどうか」という観点から設定されていません。国保は、必要な医療費を加入者に割り振る仕組みとなっています。加入者の負担能力や生活実態を把握し、負担できる保険料額が課せられるといった仕組みではありません。必要な医療費を加入者に負担させるという観点から国保料を算出するために保険料は高くなり、国保料を滞納せざるを得ない人々を生み出すという構造がつくられています。(p.29)


国保関係の本を何冊か読んでいるが、保険料が高いことに対する批判はどの論者も指摘しており、国保の問題点としての共通認識が成立している感すらある。料金の設定の仕方が、加入者本位ではないという指摘は正にその通りではある。

高い料金→滞納の増加→さらに高い料金→……という悪循環があるのは確かだろう。その大きな要因が国庫負担金削減だという点も国保研究関係者の共通了解のように見受けられる。



 国保は、結果的に負担能力が高くない人々が集まる仕組みとなっていて、当然のことながら国庫負担がそれなりに投入されなければ維持することができません。にもかかわらず、市町村国保に占める国庫支出金の割合は、公的医療費抑制策が展開される1980年代以降低下し、その分が加入者の保険料、あるいは自治体独自の負担(一般会計からの繰り入れ等)に転嫁されてきました。国の責任と財政負担を減らすことによって、加入者である住民と運営している自治体に転嫁されてきたという背景があります。(p.30)


この点は国保制度の問題点として、強調してもしすぎることはない。ただ、いくつかの国保に関する本を読んでいて思うのは、その国庫負担を復元するためにどれだけの財源が必要で、どれだけ増税しなければならないのかという点とセットで議論することが必要であるにもかかわらず、そこまで具体的に行われているものを見たことがないというところに不満がある。



 年々高くなる国保料をつくり出している主な原因は、国保の運営に対して国がお金(税金)を出さなくなったからです。
 1984年の国民健康保険法改正により国庫負担が削減されました。それ以降も事務費の国庫負担廃止などの削減を続けた結果、国保の総収入に占める国庫支出金の割合は1980年代の約50%から約25%(2008年度)になっています。
 国保において公的医療費抑制策が展開された結果です。国の負担を減らした分は、国保加入者と自治体に転嫁されるという構造が継続されてきました。(p.30-31)


国庫負担がどれほど減らされたかという割合はよく語られるが、これが金額としていくらなのか、という議論はあまりされない。ここに批判者側の不備があると私は見る。割合ではなく数量で示すべき



 国保は加入者の保険料だけで運営しているわけではありません。実は、ここに大きな意味があるのです。そもそも国保に国庫負担が投入されているのは、「国保が社会保障として運営されている」ことを意味しています。この点が民間の保険と大きく異なります。
 国保が社会保障であるというのは、社会保障の一環として国保という制度が整備されてきたということを意味しています。具体的には、自助や相互扶助では決して支えることのできない人々の医療保障を図り、受診する権利、健康になる権利、生きる権利を保障するために、公的医療保険の一つである国保が歴史的に整備されてきたというわけです。(p.32)


このあたりの理解は、国保関係の本を何冊か読んで行く中で理解が深まってきた部分。まだまだ入門レベルだが、今後、もう少し医療保険や医療政策に関しての理解を深めていきたい。



 国保をはじめ公的医療保険は、この社会原理と保険原理の2つの性格でなりたっています。国保の問題点のうちいくつかは、2つの性格のうち「保険原理」のみが強調されて、社会原理が薄められていることから生じています。(p.37)


社会原理は、自助や相互扶助では対応できない病気、老齢、失業などの問題に対して社会的対応が必要であるという考え方で、被用者保険の場合は事業者負担の義務、国保の場合は加入義務、いずれの場合でも公費負担などの形で具現化しているようである。被用者保険の事業者負担が原理的にはこうしたものであるという理解ができたのは収穫だった。

こうした社会原理の希薄化と保険原理の強調という傾向は、中央政府の国庫負担金の削減と結びついたものであることは確かだが、これとは全く逆に、国保への加入手続きを怠った者が、国保料を遡って賦課される事に対して文句を言う場合などを想定すると(国保研究者や国保問題に取り組むジャーナリストなどがこうした遡及賦課を批判することがあるが)、これも同じ論理に立つ、社会原理を否定するような立論である、という点は指摘しておきたい。



 自治体の国保窓口では、「助け合い」を強調し、加入者に過酷な負担を強いているところがあるようです。「国保は助け合いの制度なんだから保険料を納めなさい」という理屈です。しかし、国保は「助け合い」で運営されているわけではありません。言い換えれば、民間保険のような保険原理のみで運営されているものではありません。あくまでも社会保障であり、保険原理だけでなく、むしろ社会原理を理解して国保をとらえる必要があります。保険原理のみの不当な強調は問題です。
 ……(中略)……。
 現在の国保法では「助け合い」との文言はどこにも書かれておらず、いたずらに相互扶助を強調することは歴史に逆行するものだということになります。(p.37-41)


確かに、国保のパンフレットなどの説明では「助け合い」の制度であると書かれているようだ。これは税による公的負担も「助け合い」の範囲に入れて考える限りは必ずしも誤りとは言えないとも言える。悪く受け取れば、地方政府側はそうした計算の上で様々な誤読を前提してこうした記載をしているのかもしれない。

「相互扶助の精神」は旧国保法に記載があったが、現行の国保法にはそうした文言がなく、むしろ条文上は社会保障の側面が強調されているということは理解しておくべき点ではある。



所得割の計算方式には、旧ただし書き方式(所得比例方式)と住民税方式の2つがあります。なお、2013年度からは例外を除いて旧ただし書き方式とすることになりました。(p.47-48)


思うに、旧ただし書き方式の方が、低所得者の料金負担は重くなるように思われる。住民税で非課税基準に該当することで最低料金で済むような人でも、旧ただし書き方式のような単純に所得だけで算出する場合には、最低料金では済まない事例は容易に想定される。例えば、扶養親族が複数いるような世帯。



 国は1995年の国民健康保険法改正によって応益割の比重を高め、応能割と応益割の比率について7:3から5:5へと変更することを推進しました。このように応益割の比重が大きくなったことで加入者の保険料負担が過重になり、滞納者の増加につながっていると考えられます。(p.49)


なるほど。所得税や住民税の税率のフラット化、消費税の増税といった流れと同じ方向性の事態が国保料でも起こっていたわけだ。



 国保のみならず皆保険体制をめぐっては、参加交渉が進められているTPP(環太平洋経済連携協定)による影響が案じられています。……(中略)……。
 たとえば、混合診療の原則解禁、株式会社による病院経営、薬価の高騰などが起き、保険診療については、保険給付の範囲を縮小し、自由診療(全額自己負担の医療)を拡大する方向で検討されていくのではないかと危惧されています。
 ……(中略)……。海外投資家や多国籍企業から日本の医療制度が障壁であると提訴され、外圧によって皆保険がなし崩しとなってしまうのでは、とい危惧も現在では成り立ちます。(p.63-64)


TPPでは、農業や畜産業といった一般の人の生活とは少し離れた「一部の人たち」の問題に見えることばかりが報じられ、こうした点はほとんど議論されていない点は極めて危険であると言わざるを得ない。


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