アヴェスターにはこう書いている?
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北岡伸一 『後藤新平 外交とヴィジョン』(その3)

 また後藤は、対外発展について、対象地域と隣接国家とに利益をもたらす方法で組織することによって、それによってのみ可能になるとした。後藤にとって満鉄を中心とする満州経営は、世界の文明化に貢献し、清国、ロシア、および対象地域たる満州に利益をもたらし、それらと日本を結びつけ、順調な日本の対外発展を保証するものであった。このような、一見して対立関係にあるものの中に共通の利益を発見し、それを組織することによってこの対立関係を新たな統合関係に止揚していこうとする発想――これを統合主義的国際関係観と呼ぶことができる――が、後藤の対外発展論をユニークなものとしていた。
 もちろんこれらについても批判は可能である。当時の状況で日本と清国あるいは中国が提携したとしても、それは対等の関係ではありえなかった。見方によっては、後藤の対外発展論は最も巧妙、狡猾にして悪辣なものであったかもしれない。
 それにもかかわらず、後藤の統合主義的国際関係観は、少なくとも近代日本外交史上、極めて重要な存在意義を持っている。
 あらゆる国際関係には常に対立の側面と統合の側面とが含まれている。近代日本が重視したのは、その成立が外圧によって触発されたこともあって、常に対立の側面であった。明治前・中期の指導者は、朝鮮半島が清国またはロシアによって日本に突き付けられた刃となることを極度に恐れた。シベリア鉄道は、彼らにとって、ロシアが極東に向けた凶器であった。山形有朋は、日露が提携してそれぞれ南北満州の経営に邁進していた明治末期においてすら、それによってロシアの軍事基盤が強化されることを恐れ、また日露接触の増大によって衝突の可能性が高まることを危惧した。
 このような国際関係における対立の側面への著しい注目は、その対立が不利な状況に展開する前に何らかの手をうとうとする、いわば防衛主義的な積極主義を生み出した。やや誇張していえば、朝鮮半島に対する危惧は日清戦争を、シベリア鉄道に対する危惧は日露戦争を、山県の危惧は二個師団増設問題を生み出した。対立の激化に備え、不敗の体制をとろうとすることは、一概に悪いこととはいえない。しかし、運輸技術の発展や兵器の発達によって、無条件生存可能性(K・ボールディング)がもはや消滅した段階において、可能なあらゆる対立に備えて絶対不敗の国防圏を樹立しようとすることは、やはり無謀なことであった。中国のナショナリズムとソ連の軍事力とアメリカの経済力のいずれにも脅かされない体制など、ありうるはずがなかった。その模索が悲惨な結果に終わったのは当然であった。(p.230-232)


本書の結論的な部分からの引用。本書は1988年という冷戦時代に出版された本であるが、現在においても有益な見方を提示してくれている。外交関係においては、対立の側面にばかり注目されがちであるが、むしろ統合(共通利益の実現)の側面にもっと注目して考えていくべきであると思う。

また、この引用文で示されている状況と最近の政治状況(憲法9条の改変や集団的自衛権の行使に関する議論)が私には重なって見えた。まず、対立の側面にばかり注目する傾向も、9条を変えたり、集団的自衛権を使えるようにしようとする議論に多くみられる特徴である。明治中期までの指導者が朝鮮半島が中国やロシアの影響下に置かれることを恐れたのと同じように、現在の政治家たちは北朝鮮と中国を恐れている。そして、不安に駆られて防衛する範囲を拡大しようとしている点も同じである。本書で「防衛主義的な積極主義」とされているもの(私見ではこの用語は「防衛という名目で軍事力を積極的に活用しようとする姿勢」とでもいうべきだろう)は、安倍晋三が「積極的平和主義」の名の下で語っていることとほぼ同じであろう。

本書が言うように、こうした対立の側面を強調してとられる軍事力の
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