アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

田村秀 『暴走する地方自治』

政治と金の問題や政治家個人のスキャンダル、さらにはマニフェストで有権者に約束した政策が相次いで見直されるなどして、国政に対する期待は失望に変わり、その反動として地方のモノ言う首長に対する期待が高まっているとも言えるのだろう。
 また、良識の府の名のごとく、衆議院のチェック機関としての役割を果たすべき参議院が、実質的に政権のキャスティングボートを握り、3年ごとの改選が様々な形で政権基盤を揺さぶっていることが、結果として日本の政治の安定性を阻害しているのだ。(p.10)


橋本徹(大阪市長)、河村たかし(名古屋市長)、石原慎太郎(前東京都知事)などが注目を浴び、期待の目で見られる背景には、国政への失望があるという指摘は参考になった。

後段の参議院に関する認識については、本書では、参議院の見直しをすべきだという方向へと議論が進められる。しかし、逆に言えば、参議院があることによって国政の暴走はある程度抑えられているのであって、このタガを外すことは「暴走する地方自治」以上にたちの悪い「暴走する国家(政府・与党)」を実現させてしまう危険性が非常に高いとみるべきだろう。その意味で、この問題に関する本書の議論は妥当とは言えない。

むしろ、各政党に「党議拘束」を禁止させるなど国会の運営のルールを変える方が国政を立て直すには近道であるように思われる。



 本来は新潟市長選の一大争点となってもおかしくなかったのが中国総領事館への市有地の売却問題だ。……(中略)……。
 さらに、2010年、中国では国防動員法が施行された。この法律は中国国内で有事が発生した際に、すべての青年が重用されるもので、外国に住む中国人も対象となる。また、中国国内に進出している日系企業も政府や軍の管理下に置かれることとなる。そうなれば、1万5000㎡もの広大な土地はどのような形で使われるのか、想像に難くないだろう。中国が日本海に面した北朝鮮の港を租借したというのも大変気になる点だ。(p.64-66)


こうした中国への警戒感も著者の見解に特徴的なところの一つだろう。

90年代以降、自治体の財政悪化が進んだが、中央政府とは異なり債務に限度が設定されていることから、中央省庁と比べ自治体では財政再建に対して切羽詰まった状況に追い込まれているところが多く、市有地や市有財産などの売却もかなり行われるようになっている。中国に売却することが問題だというより、切羽詰まった焦りの中で財産の売却などによって収支の帳尻を合わせなければいけないような状況に自治体が追い込まれていることの方をよりクローズアップすべきであろう。冷静に判断できる状況であれば、わざわざ市の中心の一等地を外国に売却しようなどと考える者はそう多くはないだろう。



 非核三原則は、1967年12月に佐藤栄作首相が衆議院予算委員会で答弁したのが端緒であり、核兵器に対して「持たず、作らず、持ち込ませず」という日本政府の方針である。……(中略)……。神戸港は戦後、米軍の第七艦隊の基地となり、朝鮮戦争の際には数多くの軍艦が出入りし、また、歓楽街等での米兵の行状が社会問題化するなど、様々な課題を抱えていた。
 このような状況の中、1974年にアメリカ議会におけるラロック元海軍提督の核持ち込み証言を受けて、当時の神戸市長が市当局として疑わしき艦船は入れないと言明し、さらに75年には神戸市会が「核兵器を積載した艦艇の神戸港入港を一切拒否する」との市会決議を行ったのであった。この決議に基づいて、神戸市は港に入港する船舶が外国艦船である場合には「非核証明書」の提出を求め、この提出がない場合には入港を拒否することとした。これが世に言う「非核神戸方式」である。
 神戸市が、非核神戸方式を実施したことによって、それ以降、米軍艦船はまったく入港することはなくなった。他方、他の国の外国艦船は非核証明書を提出して入港しているため、これまで神戸港が非核証明書の不提出を理由に入港拒否をした事例はない。
 ……(中略)……。
 法的には、非核港湾条例や非核神戸方式は多くの問題点を有し、証明書の不提出によって不許可にすることは違法という結論にならざるを得ないのではないだろうか。国際法と国内法の関係をどのように捉えるべきかなど様々な論点があるが、結果として我が国の外交関係に悪影響を及ぼしかねない行為であり、特に日米関係にひびを入れかねない内容であることから、橋本氏の「マスコミ的嗅覚」に端を発した提案は、暴走する地方自治をまさに体現してしまったのだ。……(中略)……。
 ……(中略)……。この問題は、本来は国が責任を持って対処すべき安全保障に関するものであり、また、外交政策として真剣に考えるべき性格のものである。……(中略)……。
 ……(中略)……港湾という安全保障上重要な施設について、空港と同じように主要なものは国が管理するというシステムを導入すべきではないかと思われる。(p.82-86)


非核港湾条例や非核神戸方式に対する著者の否定的な評価には、私は同意しない。

著者に非核港湾条例等を否定しようとされている最大の理由は、どうやらアメリカとの関係が悪くなったら大変だ、という感覚にあるように思われる。中央政府が安全保障に対して責任を持つべきだという点には異論はないが、それは中央政府だけが独占的に独断で関連する事柄を決めることができることを意味しないと考える。

また、田村氏の論で意味不明なのは、非核証明書を提出しなければ入港を不許可にすることは違法だという判断である。何の法律に抵触するのかがよく分らない。それに、中央政府も非核三原則をその方針としており、非核神戸方式は、それに反する(例えば、核を積んでいる艦船でも入港してよい、といったような)内容であるわけではない。むしろ、政府の方針を適切に実施するための方策であると評価すべきであろう。

こうしたことを「自治体の暴走」として問題とするのは不当ではないか。むしろ、問題とすべきは、非核証明書の提出を求めた途端、アメリカの艦船が入港しなくなったことであろう。これは核を積載した艦船が入港することがあると言っているようなものであり、また、神戸方式のようなやり方は、本来は非核三原則を掲げる中央政府自身が実施すべきものであり、現状では日本政府はアメリカが核を持込むことを黙認しているに等しい。田村氏は、自治体を否定的に評価するのではなく、アメリカと日本政府の欺瞞的な姿勢をこそ批判すべきだろう。



一人当たりの県民所得と財政力指数(3か年平均)の順位から、改革をキャッチフレーズに登場した知事たちが地域経済に何らかの貢献を果たせたのか、定量的な分析を行ってみた。なお、経済効果は当該年度に生じるというよりも2、3年の遅れがあるのは当然のことであるため、就任後から4年刻みに退任後3年までを対象期間とした。(表1、表2)
 ここでは、「改革派」知事として、増田岩手県知事、浅野宮城県知事、田中長野県知事、梶原岐阜県知事、北川三重県知事、片山鳥取県知事及び橋本高知県知事の7人を対象とした。
 一人当たりの県民所得では、北川三重県知事を除いて軒並み在任中に順位を下げている。……(中略)……。
 地方自治体の財政的な強さを示す財政力指数でも、県民所得ほど変化は大きくないが、概ね順位は横ばいに留まっている。
 このように、経済的な指標で見る限り、改革によって地域経済の好転は進まなかったどころか、むしろ相対的に全国順位を下げる結果になっているのがほとんどのようだ。(p.100-101)


橋下徹や河村たかし、さらには安倍晋三のアベノミクスなどもこれらと同じようなものであることが明らかになるだろう。

スポンサーサイト

テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/917-e7180ed8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)