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藻谷浩介 『デフレの正体――経済は「人口の波」で動く』(その1)

……(前略)……、中国もアメリカの四割程度の規模で日本の黒字に貢献しているわけです。
 一言注釈すると、この数字は対中国と対香港の合計です。三角貿易とはこのことなのでしょうか、日本の対中輸出は香港経由が多いのに、中国は日本に直接輸出しています。香港を忘れて日本と中国の数字だけを見ると、日本の方が赤字に見えますが、日本の対中赤字よりも対香港の黒字の方がずっと多いのでご注意ください。(p.40)


貿易収支は中国に対しては黒字であるということは、中国は日本から見ると市場としての価値がそれだけある、と言えるだろう。



そういう韓国と台湾に対して、日本は貿易でも劣勢なのでしょうか。
 とんでもない、日本は中国(+香港)からだけでなく韓国、台湾からも、07年、08年と続けてそれぞれ三兆円前後の貿易黒字をいただいているのです。中・韓・台から稼いだ貿易黒字の合計は、00年に比べれば二倍以上に膨らんでいて、この二年間はアメリカからの貿易黒字を上回っています。つまり、アメリカに匹敵する輸出市場が、今世紀になっての中・韓・台の経済的な擡頭のおかげで出現したわけです。ちなみに先方の人口当たりに換算すれば、中国に比べて韓国は30倍、台湾は60倍、さらに豊かなシンガポールに至っては160倍の貿易黒字を日本にもたらしている計算です。(p.43)


中国、韓国、台湾を合わせるとアメリカ並みの輸出市場となっている。



 習い性と申しますか、日本人は自分のことを、「ご近所のブルーカラー」「派遣労働者」だと思い込んでいます。「賃金の安い仕事が得意だったのに、それを周辺の新興国に奪われてジリ貧になっている」と、勝手に自虐の世界にはまり、被害妄想に陥っている。ところが実際は日本は「ご近所の宝石屋」なのです。宝石屋なので、逆にご近所にお金がないと売上が増えません。ご近所が豊かになればなるほど、自分もどんどん儲かる仕組みです。(p.45-46)


このあたりは、産業空洞化という議論が見落としているものがあることを示唆している。ただ、輸出で儲けるといっても、「日本」という抽象的な主体が存在して他国にモノを売っているわけではない。輸出で儲ける企業とその恩恵を受ける人がいる一方、その恩恵を受けない人々も多数いるという点には注意が必要だろう。



 と、ここまで強気なことを申し上げてきた私ですが、「呑気なことを言うな、失業率は高まる一方で、低所得にあえぐ人がどんどん増えているではないか」と言われればひとたまりもありません。「輸出が倍増したというけれども、日本の経済規模は10年以上も停滞しているではないか」とのご指摘は、まったくその通り。ですが、これらは国際競争に負けた結果ではありません。国際競争にいくら勝っても、それとはまったく無関係に進む日本の国内経済の病気、「内需の縮小」の結果です。これはいわば経済の老化現象でして、企業のせいでも政治のせいでも霞ヶ関のせいでもない。従って、日本が国際競争に勝ち続けることは、実は対策になってきませんでしたし、これからも対策にならないのです。(p.46)


失業率や低所得者の増加、日本の経済規模が大きくならないこと、これに対しては国際競争で勝つといったことでは対策にならない、という。輸出で儲ける場合の儲けは広く一般に広がる構造が日本の経済に存在している場合、国際競争力を高めることはこうした問題の解決につながるだろうが、そうした条件が欠けている場合、国際競争で勝ち、輸出を増やしてもこれらの問題を解決することにはならない。

生産年齢人口が減り、内需が縮小していることが、国内の経済の流れを止めているのであり、失業率や低所得者の発生などに対して処方箋は、内需縮小の悪影響を抑えることにあるわけである。



 ということで我々が目指すべきなのは、フランスやイタリアやスイスの製品、それも食品、繊維、皮革工芸品、家具という「軽工業」製品に「ブランド力」で勝つことなのです。今の不景気を克服してもう一回アジアが伸びてきたときに、今の日本人並みに豊かな階層が大量に出現してきたときに、彼らがフランス、イタリア、スイスの製品を買うのか、日本製品を買うのか、日本の置かれている国際競争はそういう競争なのです。フランス、イタリア、スイスの製品に勝てるクオリティーとデザインとブランド力を獲得できるか、ここに日本経済の将来がかかっています。(p.48-49)


「ブランド力」が重要というのは、日本経済といった視点だけでなく、地域経済というもっと小さな範囲での、いわゆる「地域おこし」的な問題に取り組む際に非常に示唆に富む指摘だと思われる。この点についての理解を深めてくれた点は本書から得た大きな収穫の一つだった。



 ちょっと横道にそれますが、なぜこのように重要な長期トレンドを絶対数で把握している人が少ないのか。なぜテレビも新聞も断片的に「対前年同期比」を報道するだけなのか。彼らには彼らの理由がありますのでここで述べておきます。それは、マスコミ経済情報の主たる消費者である金融投資の関係者が、短期の上下の話だけに関心を集中しているからです。(p.59)


絶対数の長期トレンドを把握することが重要だ(事実に基づいて物事を判断するために必要だ)、というのは本書のメッセージの一つだが、それを阻害する要因としてマスコミ情報が短期の変化率ばかりを報道する傾向があることや、そのような報道が行われる理由についてのこの指摘は非常に納得させられるものだった。



 ですが、アメリカのファイナンスの世界で実際に行われていたやり方には、仮定に立った机上の計算が多いこともとてもよくわかりました。その中でも最大に間違った仮定が、「投資先の商品や会社が生む収益は、平均すれば長期的に一定の成長率で増加していく」というものです。実際にはそんなことがあるはずはない。商品にもプロダクトライフサイクルがありますし、会社組織にも寿命があります。……(中略)……。その際の損を含めて長期的な投資収益を計算してみれば、決して彼らの机上の計算のような成長率にはなりません。つまりビジネススクールで教えられていた米国流のファイナンスの世界全体が、怪しい投資話に投資家を誘うための甘いフィクションに貫かれていたのです。
 その後すっかり日本にも広まった米国流のファイナンスですが、本当は関係者だって構造に無理があることをわかっていないはずはない。でも事実がどうであるかは短期的投資の世界ではどうでもいいのです。倒産やリストラの前に「自分だけは売り抜ければいい」わけですから。倒産間際の会社であっても、市場で「成長企業」という噂が流れていれば、株を買ってくれる人はいます。「事実は何か」ということよりも「皆がどう思っているか」、その結果売りと買いどっちに動くかが重要になる。だから、四半期決算だの対前年同月比だの、短期的でデジタルな指標だけが注目されるのです。
 結局、車というような重要な産業を、短期的な投資の対象とみるのか、日本の中長期的な経済的繁栄を支えるインフラ的なものとみるのかによって、「対前年同期比」の世界に浸っていればいいのか、長期トレンドを把握すべきなのかも変わってくるわけです。そして本当は、長期的な視点に立つべき銀行家やその他の国民が、売り抜けを狙う一部の短期的投資家にお付き合いをする必要はありません。
 ところが経済報道のお客様はどうしても、彼ら短期的な売り抜けを志向する連中なわけです。ということでお客の方を向いていれば報道が短期的な傾向ばかり報じるようになるのは避けられません。その結果、去年の、一昨年(08年)の水準はどうだったかという、実数の変化に誰も気がつかないという事態が生じてしまっています。皆さんには、報道のそういう避けられない欠陥を踏まえた上で、ご自分で絶対数を確認されしっかりと長期トレンドを把握する癖を付けられた方がよろしいかと思います。(p.60-61)


まったくもってその通りという感じがする。ただ、絶対数を確認する癖をつけろとのことだが、どの統計のどこを見ればよいか、具体的にまとめておかないと、実践は難しいだろう。


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『デフレの正体』

藻谷浩介 『デフレの正体』(角川ONEテーマ21)、読了。 研修などで、SWOT分析などをやると、 外部環境の欄に必ずといっていいほど出てくる「人口減少」「少子高齢化」といった言葉。 しかし、イメージ先行で、いまいちピンと来ていませんでした。 いったい、どんな風に、この企業の業績、もしくは日本の経済に響くのだろうかと。 本作で、ようやく、人口問題のインパクトの内容そのものと... 観・読・聴・験 備忘録【2013/10/20 16:53】