アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

萱野稔人 インタビュー・編 藻谷浩介、河野龍太郎、小野善康 『金融緩和の罠』(その2)

河野 ……(前略)……。
 金融危機時の大量の流動性供給というのは、本来、金利を下げることで設備投資を刺激するというような発想で考えられた政策ではありません。繰り返しますが、危機時に無制限の流動性を供給し、金融システムを安定化させる、というのがもともとの考えなんです。いまは、危機時の流動性供給政策と、金利政策による景気刺激政策が混同されている。
 ところで、それらはまったく別ものだということを、はじめてはっきりと認識した人は誰かというと、19世紀半ばに『ロンバード街――金融市場の解説』という本を書いたウォルター・バジョットという人なんですね。
 ……(中略)……。
 昔は金融市場に流動性を供給する機関がなかったので、金融危機がすぐにおこりました。彼は、危機対策として最後の貸し手が必要だということをいっていいるんですね。「危機がおこったら無制限でお金を貸しなさい」と。つまり無制限の流動性の供給ですね。
 ところが、そのとき同時にもうひとつひじょうに重要なこともいっているんですよ。「担保をとって十分な金利を取りなさい」と。

―― 流動性の供給に際して金利を取るということですか。それは日本ではおこなわれていないことですよね。

河野 そうなんです。世界中のどの中央銀行もおこなっていません。バジョットがなぜそれが必要だといっているかというと、危機がおこったときに金利ゼロで資金を貸してしまうと、本当は資金を必要としない人も資金を取ってしまう。じつはこれが次なるバブルを引き起こす、ということです。(p.128-130)


なるほど。ゼロ金利がなぜよくないか、ということを明快に説明している。



河野 ……(前略)……。そもそも代議制民主主義というのは、産業革命がおこって、どんどん社会が豊かになっていくときに発達した、利益分配のためのシステムですよね。(p.131)


代議制民主主義の一つの見方として面白い考え方。

ただ、利益分配の「ための」システムであるかどうかは、そのような機能を果たしてきたという事実とは分けて考えなければならないようにも思う。



河野 私は、低成長を認めようが認めまいが、ぜひ政治家にも理解しておいてほしいことがあるのです。そもそも政府には恒常的・継続的に成長率を高める能力は残念ながらほとんどないということです。

―― それは、原理的に政府にはそういう能力がない、ということですか。あるいは日本政府にかぎってない、とか、いまの政府にはない、ということでしょうか。

河野 日本政府にかぎらず、多くの政府にはないでしょうね。政府が経済政策としておこなう財政政策や金融政策は、いまの日本でなにか本質的に経済を動かしていけるものであるかのようにあつかわれていますよね。
 しかし、こうした財政・金融政策はそれ自体で新しい付加価値をうみだすものではありません。財政・金融政策の本質とは、「財政政策は所得の前借りであり、金融政策は需要の前倒しである」ということなんです。(p.133-134)


参考になる。

ただ、帝国主義の時代などに企業と政府が結びついて特定の企業の利益を上げさせることはでき、そうした特定の者の利益のために政府が利用される傾向が強まっている、ということは併せて理解する必要があるだろう。




小野 そうです。つまり自分の生活を考えれば、デフレをすごく幸せに思う状態になっている。だって、ちょっとした公共料金の値上げだけですごい反発がありますよね。明らかにデフレのほうが好ましいという心理があるんです。一般の人びとの心理から、それにあわせようとする政府の政策まで、そういう面が強くなってしまった。だからすべてをそのまま維持するような構造へむかっている。それがすごくまずいんです。(p.187)


なるほど。確かにデフレを望む心理が強まっている。



小野 ……(前略)……。つまり、なにか成長戦略があるはずだといって、そのときのはやりの分野、話題の分野をはやしたてて、わーっと飛びつく。政権が変わるたびにだされる成長戦略ってみんなそれです。
 私はそんな発想で介護といったわけではありません。そもそも、介護ビジネスで昔の高度成長のような成長ができるなんて思ってもいない。
 では、なぜ私が介護と言うかというと、多くの人手が必要で大きな雇用効果を期待できるからです。成熟社会の成長戦略とは、余り気味の生産能力をどうやって少しでも国民の役に立つ仕事にまわすか、ということです(p.189)。


前段の「成長戦略」に対する批判はもっともと言う感じがする。アベノミクスの「第三の矢(成長戦略)」もこれと同じであろう。

成熟社会では、「供給過剰=需要不足」による不況が恒常化しやすく、それを改善するには需要側を強化することがポイントとなる。



―― ただ、増税は景気を悪化させる、という意見は根強いですよね。エコノミストや経済学者のなかにもそのように考える人は多い。たとえば、増税が景気を冷やした例として、1997年に橋本内閣が消費税を上げたときのことをあげる人は多いですよね。

小野 あのときの景気悪化は、じつは増税が原因じゃないんです。図3を見てください。あの時期に一気に景気が冷え込んだのは、政府が公共事業を減らした結果、建設労働者が大量に解雇されたからです。4年間でおよそ50万人も建設業の就業者が減っているでしょう。(p.202)


消費増税が97年不況の主因ではないというのは正しい。つい最近も内閣府と財務省が増税が主因ではなかったとする報告をしている。次はasahi.comの8/23の記事から引用。

内閣府の資料は、97年の増税直後の景気の落ち込みは増税前の「駆け込み」の反動が大きく、1世帯が生活に使えるお金の減少は月562円で、景気への影響は小さかったと分析。「(増税は)景気後退の『主因』とは考えられない」と明記し、その後のアジア通貨危機や日本の金融危機を不況の「主犯」とした。財務省の資料も、通貨危機後に景気後退が深刻化したと強調する統計をまとめた。





―― ……(前略)……。
 ベーシック・インカムとは、最低限生活ができるだけの現金を国民全員に一律に給付しましょうという政策です。その人が失業していようが、たくさんお金を稼いでいようが平等に現金を配るということですね。こうした案が少なからぬ人に支持されてしまう。私はここにも、お金がなによりも重要だという、人びとの現金志向を感じます。雇用を増やそうという政策よりも、現金をとにかく渡そうという政策に注目が集まってしまうわけですから。
 ……(中略)……。日本維新の会もベーシック・インカムを掲げていましたが、完全にあの政党はデフレ政党ですね。(p.212-213)

 
所得再分配があまり機能しなくなっているという問題意識のもとでベーシック・インカムへの注目が一部で高まってきたのは確かだろう。適切に制度設計されれば必ずしも全否定すべき政策ではないが、現状との相違の大きさから見て、実現は当面不可能だと考えている。

ただ、この政策に支持が高まること自体に、現金を欲しがる風潮が反映されている面があるという指摘はこれまで気づかなかった点であり、興味深い。
スポンサーサイト

テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/901-827b8d25
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)