アヴェスターにはこう書いている?
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萱野稔人 インタビュー・編 藻谷浩介、河野龍太郎、小野善康 『金融緩和の罠』(その1)

藻谷 順番にひもといていきたいのですが、なにより最大の問題は、金融緩和の始まった90年代後半以降の日本の景気低迷は貨幣供給量の不足が引き起こしているわけではないということです。足りないのはモノの需要です。いまの日本では貨幣を増やしてもモノの需要を増やすことはできません。(p.22)


妥当な指摘。この点に関して日本社会全体としてコンセンサスがとれるようになれば、経済政策もまともな方向に向かう可能性が増大するのだが。



藻谷 リフレ論はそもそも「供給されたお金はかならず消費にまわる」という前提に立って構築された理論ですから。「人はお金さえあれば無限になにかを買いつづける」というのが、とくに実地で証明された話ではないのですが、彼らの理論の基盤になっているのです。(p.22)


需要や消費については、従来の経済学のほとんどの理論が適切に説明することができていない。ある特定の種類の財を生産・供給する人は少数であり、その行為を理論化することは、その他大勢の消費者の行為を理論化するよりも相対的に容易であるという事情があるように思われる。



藻谷 ……(中略)……。1995年を境にして、生産年齢人口、つまりバリバリと働く現役世代の人口が減少し、同時に就業者数、これは一週間に一時間でも賃労働をした人のことで非正規労働者を含む数字ですが、これも減りはじめているのがわかります。
 ……(中略)……。
藻谷 ……(中略)……。
 セオリーベースで考えるマクロ経済学では、就業者数の増減は景気次第とされているわけですが、ファクトベースでみると、日本の雇用の増減は景気ではなく生産年齢人口の増減で決まっています。つまりは、65年前と15年前のどちらに生まれた人が多かったかで、いま働いている人の増減が定められてしまうわけです。
 ちなみに、日本の質漁者数は300万人台。失業率は4%台と、先進国のなかでも最低水準です、景気がものすごく良くなって失業率が2%まで下がったとしても、新たに職を得る人は200万人に満たず、2005~10年に減ったぶんを補うくらいにしかなりません。
 ところが足元の2010~15年には、日本史上最高の400万以上の生産年齢人口減少が新たに見込まれているのです。(p.23-26)


需要不足が不況の大きな要因であり、人口動態がそれを規定しているという議論は、非常に参考になる。近々、藻谷氏の『デフレの正体』を読んでみるつもりである。



藻谷 ……(中略)……。たとえ話で話を単純化するとこういうことです。仮に自動車しか生産していない国があるとしましょう。その国では車を運転する世代の人口が激減し、高齢者が激増している。当然、車は売れ残り、値崩れをおこし、みなさんがいう「デフレ」がおきた。そんな国で金融緩和をすると、自動車の売れ行きが回復し、価格が元にもどるでしょうか。運転する人の頭数が減っているのだから、やっぱり販売台数は減っていくでしょう。
 ……(中略)……。

―― 要するに、需要が縮小するのは現役人口減・高齢者増加という人口構造の変化によって生じた現象であって、貨幣現象ではないということですね。

藻谷 そう、そこなんですよ。この日本の経済状況を「デフレ」と呼んでしまうこと自体が、間違っているのです。
 私は貨幣現象であるデフレについて語っているのではなく、日本で「デフレ」と呼ばれているものがじつは、「主として現役世代を市場とする商品の供給過剰による値崩れ」という、ミクロ経済学上の現象であると一貫して指摘しているわけですが、そうであればこそ2010年に出した拙著の題名についても、『「デフレ」の正体』と、デフレに「 」をつけておくべきだったと反省しています。……(中略)……。
 そもそもファクトベースで考えれば、1990年代後半以降極端に値崩れしている商品の分野と、むしろ値上がりしている商品の分野と、日本には両方あることに気づくでしょう。後者の典型例がたとえばガソリンであり、ガソリンの二倍以上の単価で売られているペットボトルの水です。……(中略)……。
 すべての商品が値崩れしているわけではないということは、マクロ経済学のいう、物価が一律に下がっていく貨幣減少としてのデフレがおきているわけではないということなのです。(p.30-33)


分かりやすい説明。貨幣現象であれば金融緩和でも効果があるが、現役世代の減少=需要減少による値崩れが起きているのであれば、貨幣量を増やしたところで問題は解決しない、ということ。



藻谷 ……(前略)……。
 だから本当は、マネーゲームを加速させる金融緩和なんかよりも、株主資本主義のあり方を考え直すほうが、本質的な解決に近づくと思うんですけどね。
 実際にはマスコミ報道まで、目先の株価が上がれば正義、下がれば悪と、とても短期的な視点に立ってしまっています。現時点でのアベノミクス礼賛も根拠は足元で株が上がっていることだけですが、バブルを何度繰り返しても学ばない人は学ばないのだな、と感じてしまいます。

▼消費よりも貯蓄にむかう高齢者
――せめて株で得たお金を投資家たちが消費にまわしてくれればと思いますが、それもなさそうですね。

藻谷 個人投資家の多くは高齢富裕層なのです。彼らには、現役世代のようにモノを消費する理由も動機もないですからね。(p.48-49)


同感。

「アベノミクス」などと、表面上はもてはやされている経済政策も、選挙対策だった財政出動の反動としての緊縮財政が近々始まるだろうし、金融緩和の歪みは恐らく4~5年くらい後(2016~2018年)あたりに表面化して(マスコミでも問題として騒がれるようになる)のではないか、と見ている。その頃にこの記事を読み返したいと思う。(「拍手」を頂いたページはその都度自分でも「こんなのを読んだな、とか、こんなことを考えていたな」ということを振り返る意味でも読み直しているので、ちょうどよい頃合いに拍手を頂けるとありがたい。)



 そして、これからおきる最悪のシナリオは、円安がこのまま進み、仮に輸入燃料や原材料の価格上昇で平均値である物価だけをみればインフレになったとしても、内需が復活しないという展開です。つまり、原材料費と燃料費が上がるだけで賃金水準は上がらず、むしろ物価の上がったぶんだけ実質賃金が下がっていくことで、内需がさらに縮小するというシナリオですね。(p.55)


「アベノミクス」による金融緩和とともに円安になったのを見たとき、私の念頭に最初に浮かんだのは、このシナリオだった。安倍政権は財界に対して賃金を挙げるよう要請したり、厚労省に対しても最低賃金を引き上げるよう圧力をかけているようだが、恐らく、これは選挙後すぐの時期には賃金上昇したかに見える反応を若干引き出すことはできるかもしれない。しかし、その傾向が持続するとはとても思えない。

「成長戦略」という名前だけは良いことであるかのように聞こえても、内容を何も語っていない言葉によって、安倍晋三は賃上げを実現すると言い逃れをする場面が出てくるだろうが、現実に持続的な賃上げが続くと信じるような人は今の日本にはほとんどいないだろう。

このような「インフレ」による弊害が目に見えて実感されるようになるのは、数年かかるだろう。先の参院選で自民党に投票した人びとは、その時に騙されたと気づくわけだ。



藻谷 アメリカみたいに金融緩和をすれば日本も景気がよくなるのか、という質問に戻りましょうか。
 日本は既に1990年代の後半からゼロ金利政策をつづけています。とくに2001年から2006年まで、小泉政権とほぼ重なる時期には、当時史上空前の金融緩和がおこなわれましたよね。その時期には円安も進行し、輸出も2007年にはバブル期の二倍と史上最高水準を記録した。いざなぎ景気を上回る「戦後最長の景気拡大」が実現したわけですが、その当時でも日本の小売販売額は伸びなかったんですよ。

―― 当時の量的緩和の効果をどうとらえるかは、論者によって正反対ですね。

藻谷 当時政府内部にいたリフレ論者たちの言い分としては、「あそこで金融引き締めに走ったのが致命的だった。もうちょっと頑張って金融緩和をつづけていればかならず消費も増えたはずだ」というのです。
 彼らは数字を見ていません。金融緩和が本格化した2003年から2006年にかけて、日本人が個人として税務署に申告した課税対象所得額は14兆円も増え、バブル期の水準を大幅に上回ったのです。ところがそれでも消費は増えなかった。増加したのは高齢富裕層の所得だけだったからです。

―― 個人所得へのトリクルダウンはたしかにあった。ただし、流れた先は富裕層だったと。なるほど。
 でも、藻谷さん、どうして富裕層だったといえるんですか。

藻谷 勤労者の所得である雇用者報酬は2002年から減りつづけているのです。つまり働いていない層の不労所得が増えたということ以外に考えようがない。
 ちなみに全国で14兆円増えた個人所得のうち、3兆円はなんと、国内の高齢富裕層が集中していると推測される東京23区民の所得増加なんですね。ですがこの時期、東京都でも雇用者報酬の総額は減っています。


著者(インタビュアー)である萱野氏は、(恐らくリフレ論者たちへの皮肉を含めてではあろうが)トリクルダウンはあったと言っているが、お金が下層の方向へ流れないのであれば、トリクル「ダウン」とは言えないのではないか、とツッコミを入れたくなる。これこそ金融緩和は(地域的にも偏った)格差拡大政策だったということだろう。

なお、所得申告額が14兆円増えたという点について、私が思いつくことを一つ付け加えておくと、この期間中に(平成17年分から)公的年金等の控除額が縮小されたことにより、同じ額の公的年金を受給していても所得が多くなるようになっている。14兆円の中にはこれにより「所得」が増えた分も含まれるのではないか?(それともそのくらいのことは分かった上で調整した数字なのだろうか?)



藻谷 消費が増えなかったことについて、もう少し正確な議論をしておきましょう。商業統計によれば、2003年度と2006年度の比較では、日本の小売販売額は1.4兆円だけ増えました。これを金融緩和の効果だと述べたリフレ論者もいます。ですが商業統計は全数調査ですので、部門別の内訳がわかるのです。

―― 内訳がわかるんですね。どんな業種の売り上げがのびたのですか。

藻谷 この時期に売り上げが増えたのはなんといっても燃料小売業でした。燃料小売業の売り上げを両年とも除外すると、2003年度から2006年度にかけての日本の小売販売額は減少だったのです。
 ……(中略)……。いずれにせよ金融緩和で消費が回復したわけではなくて、ガソリン以外の消費はむしろ減っていた。(p.74-75)


これと同じことが今後数年でも起こるだろう。



藻谷 ……(前略)……。
 ただリフレ論の信者に、ある共通の属性があることは間違いないでしょう。それは「市場経済は政府当局が自在にコントロールできる」という一種の確信をもっていることで、だからこそ彼らは日銀がデフレもインフレも防げると信じるわけです。
 これを私は「近代経済学のマルクス経済学化」と呼んでいます。昔ならマルクス経済学に流れたような、少数の変数で複雑な現実を説明でき、コントロールできると信じる思考回路の人間が、旧ソ連の凋落以降、近代経済学のなかのそういう学派に流れているということなのではないでしょうか。


確かに、インフレターゲットなどの政策を初めて知った時に、私も前段と同じ考えを持ったのが想起された。


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