アヴェスターにはこう書いている?
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A.O.ハーシュマン 『離脱・発言・忠誠――企業・組織・国家における衰退への反応――』(その3)

 メルドレージが指摘しているように、この時期の経験を通じてハーシュマンは、正統的なものであれケインズ的なものであれ、そしていかに善意に満ちたものであれ、「究極的処方箋」を外部から押しつけること、すなわち「経済学の反民主主義的利用」の危険性を認識したといえるであろう。狭く経済的な、あるいは経済学からの一方通行的な分析の危険性を察知し、実践と理論の間の双方向的(帰納的かつ演繹的)なプロセス、、経済学、政治学、その他の社会諸科学間の双方向的プロセスに基づき、実現されるべき変化の具体的可能性を研究することに専心するようになったのである。(p.198)


訳者補説より引用。

「経済学の反民主主義的利用」は、昨今、日本でもかなり強引に行われた(行われている)経験がある。

小泉政権時代の「構造改革」は、竹中平蔵らの「経済学」を強行して「小さな政府」を実現しようとする「市場原理主義」であったし、第二次安倍政権の現在、「アベノミクス」と呼ばれているものが動き始めたとき、日銀に対して自民党がどのような強硬な姿勢・手段をとって政策を変えさせたか、という一点をとっても、その政策が「リフレ派」の「経済学」の強制という面を持つことは周知の事実であろう。

こうしたことの結果、どういうことが起るのかに、われわれは想像力を働かせる必要がある。

例えば、最近話題になることが多くなった「ブラック企業」の跋扈という事態は、自民党による労働の規制緩和を本質的な原因として背景に持つものであることは、もっとよく認識されなければならないだろう。余談だが、国会で野党が「ブラック企業」を語るとき、自民党のとってきた政策との結びつきを強調して批判しながら、改善するための方策を提示することが望まれるだろう。

「アベノミクス」の結果については、例えば、金融面では数年後の資産バブルの崩壊の危険性や国債の利子率上昇による財政破綻(デフォルトの可能性も否定できないのではないか)といったことが懸念される。財政面では選挙目当ての公共事業の大盤振る舞いが行われたが、交通インフラ、土木系インフラなどのメンテナンスの問題にどれだけ対処しているのか、ということが問われることになるだろう。そして、成長戦略の関係になるのだろうか、「限定正社員」の導入という話は「ブラック企業」の更なる量的増大と悪質化のような問題を想定できるだろう。

数年後にこの記事を読み返すことがあった時、予想が外れていること、あるいは、何らかの軌道修正により危険が回避されていることを期待したい。




 <訳者補説>でも触れたが、本書におけるハーシュマンの眼目は、経済学と政治学の生産的対話にあった。しかしながら彼がのちに述べているように、だからこそ原著執筆時点における関心は、自由競争による効率化を説くだけの経済学者に対して「発言の可能性」を訴えることにあった。(p.208)


訳者あとがきより引用。

原著執筆時点(本書は1970年に出版されている)におけるハーシュマンの関心が自由競争による効率化を説くだけの経済学者に対して「発言の可能性」を訴えることにあったというが、この関心は現在の日本においても必要なものであると思う。その意味で、本書は全く古くなっていない。



正統的経済学の「緊張経済観」に対し「スラック経済観」の立場をとって「余剰」に対する見方を変えるとともに、「品質」を真正面から取り上げて、日常的に発生する「とりかえしのつく過失」(repairable lapses)からの回復過程に注目した。こうして、実験心理学の成果も取り入れながら、政治学など他分野に議論を開くきっかけをつくり、競争を回復メカニズムのなかの一つとして相対化する枠組みを提供しようとしたのである。(p.209)


こちらも訳者あとがきより引用。

本書の「とりかえしのつく過失」に着目した視点は非常に参考になった。いろいろなものを切り捨てていこうとすることが、昨今の政策論議の中に頻繁に見られるが、そうした議論に欠けているのは、この着眼点だからである。それによって「切り捨てること」自体を相対化することも必要だろう。


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