アヴェスターにはこう書いている?
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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シーナ・アイエンガー 『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』(その3)

 もし個人的な趣味を説明するのが難しいのなら、恋愛感情を説明するのはほとんど不可能ということになる。「考える葦」でおなじみのブレーズ・パスカルが言うように、「心には理性でわからない理由がある」のだから。ウィルソンと同僚たちは、恋愛関係にあるカップルに、相手への満足度に関するアンケートに回答してもらった。このとき一部の協力者には、二人の現在の関係を作ったと思われる要因をじっくり考えて、できるだけたくさん書き出してもらった。残りの協力者には、心に浮かんだ要因をそのまま記入してもらった。七ヶ月から九ヶ月後、カップルがまだつき合っているかどうかを追跡調査したところ、直感的な評価が二人の関係が長続きするかどうかを正確に予測していたのに対し、理性的な分析に基づく評価はほとんど無関係だった。つまり、二人の関係を徹底的に分析して、非常にうまく行っていると結論づけた人たちは、重大な問題があると判断した人たちと同じくらいの確率で、破局していたのだ。(p.168-169)


直感的な判断と理性的な判断には相違がある。ある意味では認識できている事柄の情報量や質は直感の方が勝っている。しかし、これを制御できない、制御することが難しいところに難点がある。

本書では引用文の実験結果は人を直観に従おうとする気にさせることを指摘しつつ、これに続けて直感に頼ることの難点を示す実験結果をも紹介し、両方に限界があることを示している。



 また感情は実際より長く持続すると考えられがちだ。今日昇進して有頂天になっている人は、二ヶ月後も有頂天な気持ちでいられると思うかもしれない。だが実際には十中八九、新しい職務にすぐ慣れてしまうだろう。たとえ宝くじに当たったとしても、長期的な幸福度が高まることはない。だがその反面心強いのは、衝撃的なできごとが呼び起こす後ろ向きの感情も、思ったほど長く続かないということだ。家族のだれかが亡くなったり、自分がガンと診断されたり、体が不自由になるといったできごとが起っても、最初は深い悲しみや嘆きを感じるが、時間がたてば立ち直るものだ。(p.172)


感情は思われているほど長くは続かない。ちょうど本書を読んでいる時、これに深く関連する状況が身の回りで起こっていたため、この部分は特に印象に残った。

なお、感情が持続しにくいということは河本英夫の『オートポイエーシスの第四領域』の定式化からも理解可能であると思われる。すなわち、感情が複数の要素が複合的に連動するシステムであること。



第3講で見たように、わたしたちは使用価値だけのために商品を選ぶのではなく、その商品を選ぶことで、自分の人となりを表そうとする。(p.192)


この故に、ブランドや商品のイメージが商品選択の際に強く作用することになり、売る側からするとイメージを売っていく戦略が重要な意味を持つことになる。



 ほとんどの商業分野で、製造業者による合併、買収、ブランド売却が進んでいる。こうした一握りの巨大企業は、商品が店頭に並ぶはるか以前に、傘下のブランドで何種類の商品を提供するかを、はっきり定めている。しかも、何種類もの商品を取り揃える目的は、本当の意味で製品の幅を広げるためではない。むしろイメージ的な違いを前面に押し出し、多様性に富んでいるという幻想を生み出すことによって、できる限り少ないコストで、できる限り多様な顧客の気を惹こうとするのだ。
 ……(中略)……。
 こうした戦略が積み重なった結果、わたしたちは多様な製品に囲まれているようでいて、実は質的に異なる選択肢の数は思ったよりずっと少ない。そのため選択が、非常に難しいプロセスになっているのだ。(p.195-197)


グローバル化の過程で巨大企業が多数誕生している現状における消費社会を選択肢という観点から見事に切り取って示している。質的に異なる選択肢の数は思っているより少ないというのは、特に参考になる。



そのほかの研究でも、公選職員は人口全体の平均に比べて身長は約10センチ高く、禿げでない確率も高いことが示されている。これは政治の世界に限ったことではない。さまざまな研究が、身長と年収が比例の関係にあることを明らかにしている。特に男性の場合、身長が2.5センチ高くなるごとに、年収も2.5%増え、また性別にかかわらず、非常に魅力的な人は、それほど魅力的でない同僚に比べて、年収が12%も多いという。実際外見は、就職面接では職務資格よりも採用の決め手になることが多いのだ。それに刑事訴訟では、魅力的な被告人はそうでない人に比べて刑が軽く、刑務所に行かなくてすむ確率は二倍も高いのである。
 ……(中略)……。わたしたちの頭の中では、外見的な魅力と専門的能力は、自然に結びついている。なぜなら、どちらも望ましい特質だからだ。その結果、わたしたちはどちらか一方に触れることが呼び水になって、もう一方を連想するのだ。このような連想は、文化を通じてさらに強化される。シンデレラに始まり、古今東西のテレビや映画のヒーローがその例だ。物語にこの「容姿端麗=有能」の連想が組み入れられるのは、人々の願望を充足するためでもあり、長々しい生い立ちを省略して簡単、便利に登場人物を描くためでもある。だが悪影響として、このような連想が現実世界の判断にまで、条件反射的に適用されることがある。(p.210)


大変興味深い指摘である。



 わたしたちは自分の決定権が脅かされそうな気配を感じると、反射的に拒否反応を示すことが多い。わずかでも決定権を放棄すれば、やがてロボット同然になってしまうのではないかという恐れがあるからだ。この不安はあながちいわれのないものではないが、過剰な不安は何も生まない。問題は、わたしたちが選択を理想化しがちなことにあるのかもしれない。選択をあまりにも偶像化し、すべてを自分の意思で決めることができてあたりまえと考えているのだ。もしかしたら、自分の価値観を脅かすような影響と、基本的に無害な影響とに分けて考えた方がいいのかもしれない。(p.215)


選択が理想化されがちであるという指摘は特に重要であると思われる。自由を標榜する思想において、選択はそのまま善なるものと考えられる傾向があり、しばしば絶対化されるからである。自由や選択に対する批判的な考察は現代においては必要なものであるように思われる。


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