アヴェスターにはこう書いている?
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西澤泰彦 『日本植民地建築論』(その3)

亭仔脚については、マレー半島やシンガポールでの、前面にアーケードが設けられたショップハウスと呼ばれる建築と同じ形態であるが、都市建設の中で行政が積極的に導入した19世紀前半のシンガポールのアーケード、歩道の不法占拠を19世紀後半に合法化した香港のアーケード、という具合に成立過程は異なり、台湾でも、日本の植民地化以前に清朝の台湾巡撫として台湾に滞在した劉銘伝がアーケードを導入しようと試みていた。ただし、ここでの大きな問題は、亭仔脚の起源ではなく、この建築規則を公布した時点で台湾総督府が積極的に亭仔脚を奨励し、その建設を義務付けるかたちで、各地への普及を図ったことである。そして、実態として、台北における市街地再開発を通して、新しい亭仔脚が次々と建てられた(図4-12)。実際に建てられた亭仔脚を見ると、赤煉瓦を用いたものは、赤煉瓦をむき出しにした壁体をつくり、クィーン・アン様式をとっているものが多く、それは結果として、煉瓦造の街並み、洋風の街並みを出現させることとなった。(p.301)


アーケードの起源やそれが街並みにもたらす効果。また、建築規則が街並みにもたらす効果。これらについての興味深い事例。



 このように台湾家屋建築規則とその細則について、総じていえることは、これらの規程が、個々の建物が持つべき最低限の居住性を確保しながら、それらによって構成される市街地の不燃化、衛生、利便性、美観を考えていたことである。(p.303)

 このようにして実施された大連市家屋建築取締総仮規則は、個々の建物の構造や規模を規定しながら、都市全体の不燃化と美観を確保するものであった。それは、結果として耐火性能のある煉瓦造の建物が推奨されることとなり、また、構造が煉瓦造になったので建物の様式は洋風となり、軒高の最低限を定めたことで幹線道路に面した建物の高さが揃うこととなったのである。そして、この規則は、1919年7月1日に大連市建築規則が実施されるまで効力を持ち、それによって、大連は煉瓦造洋風建築が建ち並ぶ都市となった。(p.309)

 また、これら多くの建築規則には、市街地の美観という言葉と概念が盛り込まれた。その具体的な規定として見られるのは、建物高さの最低限を規制すること、前面道路幅員に応じて建物の高さを制限することであった。これによって、道路幅員に応じた規模の街並みが形成されつつあった。これは、都市の美観維持という発想であり、後に満洲国政府による容積率制限が導入されるに及び、その発想は、都市空間の創造という概念に変わった。
 そして、建物と都市の不燃化のため、実質的に進められた煉瓦造の奨励は、その結果、建物が洋風建築として建てられることになり、洋風の街並みが出現した。特に徹底的に木造建物が排除された中国東北地方では、大連や鉄道附属地沿線にその傾向が強かった。そして、大連など中国東北地方で出現した建物高さの最低の制限によって形成されたスカイラインと煉瓦造の建物が建ち並ぶ街並みは、関東都督府や満鉄にとって、その支配能力を欧米列強諸国と被支配者である中国の人々に見せつける場となった(図4-13、図4-14)。(p.332)


個々の建築を規制しながら都市の不燃化、衛生、美観などまでデザインする力を持つ建築規則の影響力に興味を惹かれた。

また、都市の不燃化が煉瓦造の構造を採用させ、それが洋風建築が並ぶことに繋がったとするのも面白い。前のエントリーでも取り上げた小樽の場合は煉瓦造も作られたが木骨石造という構造が採用され、結果として外観は石造の倉庫が並ぶこととなった。煉瓦造ではないが洋風であることには変わりない。鉄筋コンクリートが普及する以前の不燃化は基本的に組積造となるが、日本にはそうした蓄積がないため欧米から導入された技術で建てられることとなったわけだ。

小樽の木骨石造倉庫群についても、大連や台湾などと同様に建築規則の影響が見いだせるだろうか?なかなか興味深い問題である。(同じ港町でも函館や舞鶴は煉瓦造が多そうな気がするが、小樽だけ木骨石造が群として残っているのには何か理由があるのか?(地震の少なさなど幾つかの理由は容易に推測できるが。)


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