アヴェスターにはこう書いている?
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西澤泰彦 『日本植民地建築論』(その1)

 そのようなヨーロッパにおける建築の状況を踏まえて、20世紀前半の東アジア地域の建築を考えるとき、そこには、従来の東アジア諸国・地域が持っていた建築文化の伝統と19世紀後半から流入し続けるヨーロッパ建築の影響が存在し、かつ、建築を産み出す人間にとって、それらの相克と融合が問題になる。よって、東アジア地域における20世紀前半という時代設定は、そのような地域外からの影響と伝統的な建築文化が併存しながら、新しい建築を産み出していく時期であり、この地域の建築を歴史の視点から捉えるとき、建築の様式・意匠、構造・材料、機能・用途、技術、組織という点において、それぞれに大きく変化した時期であったということができ、建築における世紀の転換点であった。それは、建築を論じる上で大きな意味を持つ時期であったということができ、建築における世紀の転換点であった。それは、建築を論じる上で大きな意味を持つ時期であるといえる。(p.11)


技術的な変化と様式の変化、グローバル化による各地の伝統の創造と融合があったというあたりが、この時代の建築の面白さであるように思う。

ただ、ヨーロッパ中世の建築や中東のイスラーム建築などと比較すると、空間を体感することについての配慮はごく少なく、形だけで飾られた建築という印象も個人的には強く持っている。その点での物足りなさは残念なところである。



 結局、日本の建築史上にも、それぞれの国や地域の建築史上にも位置づけが可能なこれらの建物は、実際には、第二次世界大戦後の約40年間、どちらからも扱われることなく、どちらからも建築上に位置づけられないという「逆の二面性」を持つものとなった。(p.12)


植民地建築が、本国である日本の建築史上からも、当時の日本の支配地の建築史からも扱われてこなかったことを指摘し、その穴を埋める研究を行う。

本書の植民地建築についての研究のサマリーを読むと、それが一般的なポストコロニアル・スタディーズの進展と並行していることがわかるが、植民地建築はスピヴァクの言う意味でのサバルタン(通常は下層民などの意味だが、彼女はこれを「自らを語ることができない者」であるとする)と似た側面を持っているように思われた。

そのサバルタン的な建築をして語らせようというのが本書の研究である。もちろん、植民地建築の多くは支配する側と密接にかかわっているという意味でサバルタンとはかなり違う側面も多く持っているが。



 ところで、『全調査東アジア近代の都市と建築』が刊行される遠因となった書籍が二点ある。一つは村松伸・西澤泰彦編『東アジアの近代建築』(村松貞次郎先生退官記念会、非売本、1985年)であり、もう一つは加藤祐三編『アジアの都市と建築』(鹿島出版会、1986年)である。これら二冊と『全調査東アジアの都市と建築』とを比較すると、これら二冊に示された建築の情報は、不確定なことがあまりにも多く、1980年代半ばでの研究水準が、いわば「駆け出し」の状態であったことがわかる。特に、建物の名称や建築年は、皆目わからない状況であった。ところが、それから10年が経って発行された『全調査東アジア近代の都市と建築』によって、19世紀以降の東アジア地域における建築の変遷などについてその大枠が示されるに至った。わずか10年で研究が大きく進展したのである。(p.18)


ポストコロニアル研究と同じ傾向と言えよう。ソ連崩壊などによって調査を妨げる環境がなくなったことや、冷戦の恐怖によって封殺されてきた植民地化の歴史を語ることが解放されたことが背景にある。



 一方、台湾では台湾総督府が主力産業である製糖業を奨励したため、日本資本の製糖会社が多数参入し、地元の零細な製糖業者は駆逐され、独占化が進んだ。これは、台湾総督府という「官」の機関が製糖業を直接行うわけではなく、「民」である日本資本の製糖会社に製糖業の進展を委ね、独占化を促す、という構図であった。(p.34-35)


台湾の製糖業の展開については後に少し詳しく調べる機会を持ちたい。

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