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アヴェスターにはこう書いている?
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産経新聞大阪社会部 『生活保護が危ない~「最後のセーフティネット」はいま~』(その2)

 映画を見た大和総研の原田泰チーフエコノミスト(57)にとって印象的だったのは、ミリキタニ氏*に米国の生活保護を受給させようと奔走するカウンセラーらの姿だった。
 「カウンセラーは、それが仕事なのですから、本来、一生懸命になって当然です。ところが、日本の場合は非常に奇妙で、現場のケースワーカーたちは、なんとか生活保護を支給しないように仕事をやらされている。でも、ある意味、それは当然なんです。生活保護のレベルが高すぎるからです。映画に出てくる米国の生活保護も日本の水準よりは安い」(p.149)


この指摘は的を射ていると考える。生活保護の基準が高すぎることが制度の運用や他の制度との繋がりの悪さ(保護受給状態と受給していない状態のギャップ)の大きな要因なのである。本当に日本国内の福祉水準全般を増進させなければならないと考えるならば、生活保護基準を引き下げることを前提としたうえで、それ以前のレベルのセーフティネットを拡充するという戦略が必要になる。

(なお、私見ではここに制度の分立を絡めていくことが必要だと考える。また、生活保護基準を下げずに他の福祉も増進させるならば、劇的に大幅な増税――国民負担率を2倍くらいにもするようなもの――を甘受するとともに、経済政策的にも劇的に一般的な家計の所得水準の向上――中国の中間層のようなレベルでの所得向上――が可能なものを提示して実行することで、名目上は現状の基準を維持しても実質的な水準が下がることを仮定しなければならず、経済環境的にそれはあり得ないと考えられるため、保護基準を下げる必要があるということである。)

もちろん、現実の政治過程ではそれを実現するのは容易ではないだろうが、保護の基準を高める(デフレや一般家庭の生活水準が下落する中で基準を維持することを含む)ということは、一見福祉の充実のように見えて、実際は中長期的に問題をよりこじらせてしまう方向だということには左から運動している人々は気づく必要があるだろう。保護の基準を下げることには同意しながら、ある意味ではその代替として生活保護と他の社会保障制度のギャップを埋める措置を準備していくという戦略が必要である。



生活保護を受給させる権利の獲得には熱心な弁護士の先生はいても、いったん受給を認めさせると、その後の生活や、生活保護からの自立のことまで考える人はほとんどいない。ずさんな行政側の対応が、訴訟や交渉を通じて改善することに意義はあると思います。しかし、求める人に生活保護を受給させることは人権派弁護士としての実績になっても、生活保護から脱却し、社会的にも経済的にも自立した生活を送れるよう支援するような活動は、法律家の世界ではあまり評価されていないのではないでしょうか。弁護士は生活保護に入れるまでのことしか考えない。ケースワーカーは入った後の対処しか考えようとしない、根本的なところでそんなすれ違いがあるような気がします」。そんなケースワーカー経験者の声は無視できないだろう。(p.179-180)


妥当な批判である。生活保護の申請に弁護士が付き添うと(申請をスムーズに受けさせるのに)効果があるなどと弁護士が書いた生活保護関係の本などにはよく書かれている。しかし、彼らは同行までして生活保護を受給させた以上、その受給者(正確には要保護者)に対して保護受給後もそこから脱却するところまで支援する責任を持つべきではないか?保護だけ受けさせて後は行政に丸投げし、経済的にも財政的にも法的にも何の支援もしません、というのは、あまりに無責任であるように思われる。

たとえば、その申請の際に不正に隠されていた資産があり、それが発覚した場合などは連帯責任を取るくらいのことはした方が良い。(実際、法律上も、不正に保護を受けさせた者には損害賠償請求をすることができることが生活保護法第78条に規定されている。)そのような覚悟や責任ある対応すらせず、受給権があるから受けさせろ、というだけで、そのまま保護受給が続くことを良しとしているかのような対応には疑問である。つまり、本当の意味で相談者(要保護者)のためを考えて行動しているとは言えない面があるのではないか。

もちろん、生活保護受給後に支援していけることは限られているが、たとえば、自立のための指導指示や助言指導などに対して、それを側面からバックアップして受給者となった相談者にきちんとした行為を促すような支援があれば、行政側もやりやすいだろうし、両者の協力関係が構築されてこれば、法律家が相談者を申請させに来た時の行政側の対応もより受容的になるのではないか。現状では、ケースワーカーの側から見ると、確かに、仕事を半ば強引に押し付けられて、そのまま無責任に立ち去っていく人に見えても仕方ないだろうし、実際にそういう面があることも否定できないだろう。その意味で引用文の批判は当たっている。

そして前に述べたことの繰り返しになるが、根本的には保護基準の高さがこうした状況の改善を困難にしている



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