アヴェスターにはこう書いている?
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藤井康生 『神戸を読む』

 こうした地震によるイメージ・ダウンは神戸にとって致命的に思われた。ところが、都市のイメージは、いかに浮華的であっても、一度形成されると簡単に壊れないことも分かってきた。無意識的に形成された都市のイメージは、都市の付加価値として一人歩きしていたのである。例えば、震災後に延べ150万人に及ぶボランティアが集まったのも、神戸に対するイメージぬきには考えられないことであった。150万人といえば、神戸市の人口に匹敵する数である。実際、「自分の町はこんなに沢山のボランティアが来てくれるだろうか」と話していたボランティアもいた。つまり、都市のイメージは、いったん形成されるとなかなか崩れず、むしろ復興の有力な武器になるのである。
 では、そうした漠然としたイメージはいかにして作られたのか、先ほどは<霊力>に培われたと述べたが、この曖昧な<霊力>による集団的欲望こそ、都市を考える上において重要である。都市は、地理学、経済学、歴史学の対象になる前に、イメージ学の対象にならねばならない。(p.9-10)


「都市」にはイメージがあり、それがその「都市」の持つある種の力になるということを指摘しており、確かに参考になる。都市のイメージは都市のある種の「資産」ではないか

神戸が震災の時に多くのボランティアを集めたという点について「自分の町にはこんなに沢山のボランティアが来てくれるだろうか」という疑問は、私も思ったし、これだけの人が来る神戸はそれだけ大きなイメージの「資産」を持っている(持っていた)ということだろう。

しかし、イメージだけによってはボランティアの集まり具合を説明するのは不当だろう。ボランティアたりうる人が存在する地域からの交通アクセスの問題などもあるからだ。例えば、神戸は人口約150万人でボランティアも同じくらい延べ人数で来たが、札幌は人口約180万人だが、同じくらいの震災が来て同じくらいの被害を受けたとして、同じくらいのイメージ資産を持っていたとしても、恐らく150万人や180万人のボランティアは集まらないだろう。近傍にほかに大都市圏がなく、アクセスの際の交通の便などもかなり違っているからである。

ボランティアを動機づけた一つの契機として都市のイメージの力は小さなものではなかったとは思われるが、そればかりを強調しても現実を読み誤る。文学やエッセイによる社会批評を読む際にはこうした点に注意しなければいけないように思われる。



今日では想像しがたいことだが、明治35年の『神戸又新日報』の社説に「神戸に光彩を与ふるは天然の良港に非ず、壮麗なる旧居留地に非ず、実に湊川神社あるが為なり」(奥村弘「みなとの祭りから神戸のまつりへ」『歴史のなかの神戸と平家』神戸新聞総合出版センター、1999年所収)とあるように、戦前までは湊川神社こそが神戸の代表的なシンボリック・スポットだったのである。このことは戦後の神戸を考える上で忘れてはならないポイントである。(p.139)


神戸が戦前は「皇国都市」としての側面を強く持っていたという本書の指摘は、モダンでハイカラなイメージばかりが先行しがちな神戸のイメージに変更を迫るものとして重要であると思う。

ただ、国粋主義的なものと明治時代にモダンであることとを本書では矛盾ないし二面性を持つものとして捉えているが、それに対しては私はナショナリズムの研究者である小熊英二の捉え方の方が妥当であると。すなわち、国粋主義者、ナショナリストは当時の最も西洋化された人々であることが多く、ナショナリズムは非常に近代西欧的なものであるという指摘である。そう捉えれば、モダンな神戸が戦前にあって国粋主義的な傾向を牽引したとしても何らの不思議もないことになると私は考える。



大戦勃発後、松方はヨーロッパへ飛び、とりわけロンドンとパリで絵画を買いあさり、のちに松方コレクションとして知られる美術品の収集が始められるのだが、資金が足りないときは鈴木商店の援助を受けていたから、松方コレクションは松方幸次郎一人の功績のように言われているが、鈴木商店の名も忘れてはなるまい。(p.179-180)


戦前の日本の歴史には私は未だ疎いのだが、金融や資本の動きなどを追っていくにあたり、この鈴木商店は注目する価値がありそうだと踏んでいたので、少し興味を引かれた箇所。また、鈴木商店は私の研究対象の土地の一つである台湾とも密接に関わっているので尚更興味を引かれたところである。

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