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アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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文春新書編集部編 『論争 格差社会』(その1)

 この本は、ここ数年世論をにぎわせている「格差」を巡る論争の全体像を知りたいと願う読者のために、主な論文を集めたものである。(p.7)

 よりよい現実認識と、それに基づく少しでも現実的な展望を開くために、この小さな本が助けになることを心から祈りたい。(p.16)



これは本書の「はじめに」における最初と最後の一文である。しかし、この本が「格差」を巡る論争の「全体像」を示しているとは思えない。また、「よりよい現実認識」に役立つとも思えない。むしろ、「より悪い事実誤認」に役立ちそうである。

確かに、『世界』から『文芸春秋』までの記事は載せているが、そのような形式的なやり方では、左(格差を小さくすべき)から右(格差は大したことがない or 格差は拡大していない or 格差があって何が悪い)までを集めているが、問題は内容である。

全体的な論調が「格差があって何が悪い」という方向に偏っているのである。しかも、そうした論調であるほど、「現実」ないし「事実」による根拠の提示がなく、言いっぱなしの文章なのである。

また、「格差」や「ニート」を問題視する側については、それを提起した本人の議論はほとんどなく、その問題についての有名な論客が不在である中で、彼らの議論を一方的に、十分な引用もせずに否定するような議論が多い。

むしろ、「全体像」を示したいならば、そうした議論を提起した張本人とそれを否定する人たちの議論を両方とも併記すべきだと思うが、本書では、そうしたことをせず、全体として一方的に議論を「垂れ流している」傾向が強い。一応、複数の論者による独立した論を掲載しているために、その傾向は多少弱められているが、全体としては「格差があってもそれは必ずしも悪くない。その中で下流・下層はそれなりに生きていく道を探すように努力しろ」という方向になっているのである

しかし、「格差は小さくするような対応が必要だ」という議論をする人々のほとんどは、「下層」(例えば、失業や自営業の廃業)に転落してしまった人々には、努力するチャンスすらなく、そもそもそうしたチャンス自体から排除される傾向があり、しかも、そのように転落する危険性は、親の収入や地位などによる影響がかなり大きいことが統計的に明らかになっているという事実から出発している。

その事実が間違っていると実証的に示した上で、上記の主張をするならまだよいが、それとは全く逆に「貧しいのは努力が足りないからだ」と前提しながら「格差は悪くない」と主張する議論が多すぎるのである。そのようなものは私にはとてもではないが、「まともな議論」とは思えない。

あまりにも突っ込みどころが多く、また、荒唐無稽の論が多すぎるので、いつものように引用してコメントをつけていたら、何ヶ月もかかってしまう。続きの記事では、コメントする価値があるものをかなり限定して述べていくことにする。
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「格差」問題を語る際の4つの注意

これまで何度も「格差」について書いてきたが、まだ幾つか強調しておきたいことがある。第一は、「格差」を容認する人の基本的な論拠は、暗黙のうちにどこかで――ほとんどの場合、本人も気づかずに――「機会が平等」であると前提しているということ。「人によって能力や努 ツァラトゥストラはこう言っている?【2006/12/16 16:14】