アヴェスターにはこう書いている?
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小林多喜二 『小林多喜二名作集「近代日本の貧困」』
「失業貨車」より。

 波止場の「石炭置場」に、網の目のように敷かれている入換線の所々には、事業不振から送貨の減少で、沢山の貨車が遊んでいる。それを一箇所に集めて、この冬をどうしても過ごせないような「紹介所」襲撃や「市役所」押掛けの常連をそれらの貨車に三百人ほど住み込ませて、一日一回だけ「粥」の支給を始めたのである。――ところが、それは思い掛けない程の歓迎をうけた。ジメジメした長屋よりガッシリしているし、暖かかったし、それよりも何よりも「お粥」の支給がある!みんなは別人になったように温なしくなってしまった。
 警察からは交代に巡査がやってきて、その辺を見廻って歩いた。
 毎日の新聞がそのことを書き立てた。それからO市では「失業貨車」という言葉が、大流行になった。市の色々な名士が見学にやってきたりした。(p.11-12)


これはまさに現代日本における「年越し派遣村」とほぼ同じものである。ただ、これは行政が主体なので、昨年末から今年にかけての「官製派遣村」ということになるが。

やはり昭和初期の頃と現代とは社会の状況に類似が多いということを再確認させられる。

もっとも、この「失業貨車」というものが実際にあったのかどうかはわからないが、同じ発想があったということだけは確実である。



「銀行の話」より。

 ――銀行と産業企業がこのように網の目に入り交じってくると、銀行は大事な金を入れ注いでいる「産業企業」をただそのままに放って置くことが出来なくなります。債権者の立場と特権を持っている銀行は、当然会社の企業を「監視する権利」を持っている。するとそれを土台にして、今度は積極的に会社を「統制する」権利までも得る。何しろ依存関係が関係だから、これは当然そうなるわけである。――と、どういう事になるか?
 皆さんも知っている通り、「重役を入れる。」こいつを行うのです。重役を入れるというのは、自己の「財閥」の代表者をその会社の重役にさせることです。こうなれば占めたもので、ここに所謂「閥」というものの網が張られるわけです。今迄資本の物質的な依存関係から絡がっていたものが、この結果更に人的なつながりででもつながってくる。――まことに念の入った水も洩さない結合関係が出来上るのです。
 日本の三井、三菱、住友、安田と数えて来て――これ等の銀行の各々が一体どれだけの会社へ重役を入れているか、それは中々素晴らしいものです。(p.45-46)


元銀行員・喜二の面目躍如といった感がある。

現代の金融権力の強大化は100年前とは若干様相が異なっているが、基本的な仕組みは大差ない。「金融」にカテゴライズされる勢力は、会社を「格付会社」や「株主総会」などの場において圧力をかけたり、監視・介入したりしようとする。金融勢力から企業に対する監視と統制が一体になって行われるところは何ら変わっていない。

人的なネットワークが形成されることについては現代の状況について詳細はよくわからないが、多喜二が指摘する銀行と企業との間の関係とは別の形態をとっているように思われる。株主が経営者を決めるという形での統制や大投資家同士が人的ネットワークを形成することによって、相対的に優位に立ちやすくなるということもありうる。

金融による権力生成プロセスについてはさらに学んでいく必要がある。




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