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伊藤潔 『台湾 四百年の歴史と展望』(その3)

その後、1965年に援助が打ち切られたのちも、米の生産コストが高いことと、対米輸出の黒字を削減する必要から、台湾は米国の小麦を輸入してきた。これが台湾の米作農業に大きな影響をおよぼすと同時に、台湾人の食習慣を変え、パンや饅頭(マントウ)など小麦食品が嗜好されるようになった。(p.193)


戦後に於けるアメリカとの関係は台湾社会の多くの部分を規定する要因として作用している。



 台湾経済の工業化の展開をかえりみれば、1950年代の輸入代替工業化、60年代の輸出志向工業化、70年代の重工業化、80年代のハイテク産業育成の過程をたどり、90年代はハイテク産業を軌道に乗せ、技術先進諸国に伍すだけの競争力の確保をめざしている。(p.201)


簡潔な要約。



…(前略)…「台湾関係法」は中国の台湾に対する武力侵攻と、国民党政権による台湾住民の人権抑圧を念頭においている。
 中国の武力侵攻はさておき、「台湾関係法」の第二条のC項には、「すべての台湾住民の人権を守り、かつこれを促進する合衆国の目的をここに改めて表明する」と記されている。これを受けてレーガン大統領が、1985年8月に署名した「外務授権法(1968-87年度)」には、「台湾における民主主義」の項目がもうけられている。それには「台湾における民主化運動のいっそうの発展は、米国が台湾関係法で規定されている道義的、法律的な義務を継続するための支えとなる……台湾関係法の精神にもとづき、その目的に向かって、台湾が力強く前進するよう、米国は台湾当局に勧告する」と強い調子で明記されている。このいずれも、後日の台湾における民主化に大きく寄与している。(p.209)


アメリカの国内法で台湾との関係が扱われることによって、台湾の民主化が劇的に進展することとなった。本書でもこの少し後で「国際社会で孤立を余儀なくされている台湾、とくに国民党政権にとり、米国こそは頼みの綱であり、民主化の要請は無視できなかった」(p.210)と述べられている通りである。このプロセスは、歴史的にも非常に興味深い事例ではないかと思う。そして、一つ念を押しておきたいのは、独裁政権の下で、自ら内部的な要因によって民主化が進んだわけではないということである。



中国政府は香港とマカオの「一国両制」を「台湾統一」のモデルと位置づけているが、総督の立法に関する諮問機関に過ぎない、立法評議会の民主化でさえ認めない「一国両制」を、民主化の進んでいる台湾住民が受け容れるはずはない。しかも植民地支配下の香港とマカオは、日常生活物資の大半を地続きの中国に依存しており、軍事的にも中国に対抗する意思も能力もない。香港やマカオは「一国両制」を受け容れざるを得ない事情があり、台湾とは同列視できないのである。
 1992年の中国人一人あたりのGNPは380米ドルほどで、台湾の1万200米ドルとは25倍もの開きがある。また、中国政府は「社会主義市場経済」のもとで、今後も政治の民主化を拒否することから、経済的にも政治的にも中国と台湾の格差は拡大するであろう。これほどの格差が存在する限り、中国の台湾統一は非現実的である。(p.228-229)


前段は説得力がある。香港・マカオと台湾は一国両制(一国二制度)では前提条件が異なっており、香港・マカオに対してできたからと言って台湾に対しても適用できるわけではない。

後段は17年前には中国と台湾の間にはこれほどの差が存在していた。2008年には中国の一人当たりGDPは3,266ドルであり、初めて3,000ドルを超えたという。これに対し台湾は30,911ドルとなっており、約9.46倍にまで縮まっている(ちなみに、日本は34,115ドル)。恐らく、中国沿海部の省の平均的なレベルは中国全体の平均より高いだろうし、一人当たりGDPという指標は人口が少なめの方が高くなりやすいとも思われるため、あと10年あまりで中国東部の平均レベルは台湾と大差ない状態にまで到達すると思われる。そうなると、統一について「非現実的」という条件がかなり緩和されることになると思われる。

また、「社会主義市場経済」だから経済的格差が開くと予想するのは言葉に騙されているとしか言えない。社会主義市場経済であると言うこととと、社会主義市場経済であることとは別のことであり、また、社会主義という形容詞が意味を持つ形で現実に作用しているかどうかを考えると、中国の場合、それを肯定する材料はほとんどないのではないか。この部分の予想は2009年現在から見ると大きく外れている。ただ、政治の民主化の程度という点については台湾と中国の差は大きく開いたとは言えるだろう。




共産党の一党独裁を堅持する、重症の「民主恐怖症患者」の中国政府にしてみれば、民主化は恐るべき「洪水猛獣」であり、「台湾化」は「台独」または「国独」への道と映る。(p.232)


民主恐怖症患者というのはなかなか毒があるが的確な表現でもある。

台湾のみならず、新疆やチベットとも問題を抱える中国政府には経済成長という追い風があるため、ソフトランディングしやすい環境があるが、それがうまく行くかどうかが、今後20~30年ほどの中国の見所であると思う。




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