アヴェスターにはこう書いている?
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西澤泰彦 『日本の植民地建築 帝国に築かれたネットワーク』(その2)

 このように、満州国政府の建築組織の設立経過を見ると、支配地での活動経験のある人物を組織の中心に据えるという方法がとられ、それは、満鉄がその建築組織を作ったとき、その総帥に小野木孝治を置き、人材の確保にあたったことと同じであった。組織の設立とともに活動を始めなければならない組織にとって、個々人の活動経験が重要な意味を持っており、支配地での活動経験は欠くことのできないものであった。満鉄や関東都督府の設立から四半世紀、台湾総督府の設立から35年を経て作られた満州国政府の建築組織も、同様の方法がとられたことは、支配地における建築組織の設立方法が確立したことを示していよう。(p.123)


本書の特色が現れている箇所の一つ。このように建築家やその所属組織にまで視野を広げて建築を見ていくことは、確かに個々の建築だけを見るよりも、新たな発見ができそうな気がする。

ただ、そのためにはある程度建築を見るための基礎的な素養が先にないと、ここまで頭に入れておくことはできない。また、近代以降の建築だからこそ、こうしたことまで追うことができる可能性があるのであって、何百年も前の建築ではそれはほとんど不可能とも言える。こうした見方は近現代の建築だからこそ可能であるところの独特の見方だというべきだろう。



 一方、台湾、朝鮮半島、中国東北部という東アジアの日本支配地で成立した植民地建築では、いずれも赤煉瓦が主要な建築材料となった。いずれの地においても、日本国内で西洋建築を学習した建築家たちが植民地建築成立の中心にいたことがその理由の一つであり、支配地に共通した赤煉瓦普及理由の一つであった。しかし、それぞれの地で成立した植民地建築において、赤煉瓦が積極的に導入された理由は、違っていた
 台湾では、19世紀末、台湾総督府が設立当初に建てた建物には、台北医院をはじめ木造の建物が多くあった。また、台湾銀行本店をはじめ、市街地に新築された民間の建物にも木造のおのが多くあった。ところが、これらの木造建物は、シロアリの被害に遭い、建築後10年程度で建て替えを余儀なくされた。
 1911年に台湾総督府技師となった井出薫は、1936年1月に「改隷40年間の台湾の建築の変遷」と題した文章を『台湾建築会誌』八巻一号に記し、被害に遭った木造建築についてシロアリの「餌食」となったという旨の報告をしている。そこで、台湾総督府では、基礎に「防蟻コンクリート」と呼ばれた厚さ四寸(約12センチメートル)のコンクリートによるべた基礎を用い、さらに上部構造を木造とせず、煉瓦造建築を大量に建てていくこととなった。台湾総督府は、1900年に台湾家屋建築規則とその施行細則を作ったが、そこではシロアリ被害が想定されていなかった。そこで、1907年の改正によって、この防蟻コンクリートを奨励した。しかし、建物全体を鉄筋コンクリート造とするには普及に時間がかかるため、上部構造として、煉瓦造が普及していった。
 中国東北地方では、関東都督府も満鉄も、徹底的な煉瓦造建築の普及を図った。それは、煉瓦造建築の普及によって都市全体の不燃化をめざし、結果として洋風建築が軒を連ねる街並みが出現することを狙っていた。関東都督府も満鉄もそのために煉瓦造を前提とした建築規則を実施した。したがって、煉瓦の生産は、それらの前提となるものであり、重要な産業であった。(p.136-137)


台湾の近代建築=植民地建築を見ていくにあたっては、こうしたシロアリ被害という、風土に根ざした問題を念頭に置く必要がありそうだ。(なお、この結果、台湾は日本本土よりも早く鉄筋コンクリート造建築が普及することとなった。)

中国東北部の不燃化のための煉瓦という発想は、小樽の運河沿いの倉庫群や北のウォール街とも呼ばれる地域をなす銀行建築群が木骨石造建築となった理由と同じであり、興味深い。日本では煉瓦が少なくなったのは地震が多かったためであろうが、中国東北部はそうした問題がなかったということが差異の要因の一つであろう。


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