アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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星野博美 『愚か者、中国をゆく』(その1)

何かを嫌いな理由は確固としているが、何かを好きな理由というのはいつでも漠然としている。(p.5)


なるほどねぇ。言われてみればそうかもしれない。

このあたりは、いわゆる「愛国者」たちの「愛国的」な観念がいつも曖昧模糊としていることとも深くかかわってくるだろう。

まぁ、それはさておき、何かを嫌いなのも本当は同じくらい漠然としていると思うが、それに対して行われる理由付け(合理化)の段階ではっきりと固定した理由になりやすいように思う。この合理化された理由は、場合によっては、かなりこじつけと思えることもあるが、それでも人はその理由を変えようとはあまりしない。好きなものに対しては結構理由付けは変わる。

嫌いなものはそれを避けることさえできればいいから、一つの理由があれば足りることが多いが、好きなものはそれを追い求めていくことになるから、対象自体が変化し、対象と主体の間の関係も時とともに変化していく以上、理由付けも変化せざるを得ないのであろう。

もちろん、合理化しきれない感覚が、これらの根底にはあるのだが。



 なぜバックパッカーは、何日も並んで安い座席をとり、ホテルはあまたあるのにドーミトリーのある安宿を目指し、なるべく速度の遅い乗り物に乗り、ホテルやレストランではなく路上の屋台で食事をしたがるのだろう?
 ・・・(中略)・・・。
 それは、旅という非日常の中では、金がないことで冒険が買えるからだと私は思う。金をかけなければかけないほど、旅は刺激に満ちたものになる。何でも金、金、金の世知辛い世の中で、旅先では冒険が安価で、時にタダで買えるのである。もともと何がしかの冒険がしたいと潜在的に思っている旅行者にとって、これほどお得な話はない。欲しいものが高価ならどこかで諦めるかもしれないが、安価になればなるほど刺激が増すため、歯止めも利かなくなる。それがバックパッカーのはまる旅の魔力だと、かつてそこにはまりかけた私は思っている。
 世の中には、自分を現実より大きく見せるための一つの方法としてブランド品を身につける人がいる。バックパッカーは往々にして、パリやミラノでブランド品を買いあさる旅行者を毛嫌いし、自分はそんな価値観とは無縁であると主張したがるが、バックパッカーの心理は実は、ブランド品を求める人のそれとよく似ている。
 旅という非日常の中では、日常の中で通用する「高くて有名なブランド品を身につける」感覚が、「金では買えない貴重な体験をする」に替わる価値となるからだ。
 ブランド品は、誰も銘柄を聞いたことのない本当に高くて良い物を身につけたのでは意味がなく、相当数の人――それもあまり数が多くなればまた価値が下がってしまう――が「あれは高くて有名な物だ」と評価してくれなければ身にまとう意味がない。そこで意識されているのは、あるまとまった数の他者の視線である。
 旅行者の冒険欲も、ブランド品を求める欲望と似たような心理構造を持っている。誰も知らない場所で誰の目にも触れず、誰もしたことがないような冒険を一人黙々とする旅行者は少ない。旅というのは人様に聞かせてなんぼのもの。誰かに聞かせる機会がなければ、誰も無茶な旅行などしない。旅行者もまた、常に他者からの評価を意識して旅を続けている。そしてその他者とは、現地の住民ではなく、同じように旅をしている旅行者が適任者となる。だから外国人――自分と同じ出身国の人間がパラパラいるとなお都合がいい――がたむろするところに出入りし、自分がどんな無茶をしてここにいるのかを他者から認めてもらう。それこそが旅における「ブランド」なのである。(p.56-58)


かなり的確にバックパッカーの心理の一面を捉えているように思う。

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