アヴェスターにはこう書いている?
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小林英夫 『BRICsの底力』

国境線が長いということは、それだけ辺境貿易が発達する可能性が高いということを意味する。(p.151)


一般的な考察の際にも考慮に入れてもよい要素。あとは、どれだけの数の国と国境を接しているかということも影響するだろう。



 2000年代に入りNIEsに代わり脚光を浴びてきたのがBRICsである。BRICsはNIEsとは対照的に人口・資源大国であり、大国であるだけに内部の均一性がなく、発達した都市部の1人当たりGDPの高い教育水準層と農村部の低い教育水準層が、強靭な二重構造を形成し、高度成長のなかでそれが切り崩された日本や韓国とは異なり、高度成長の進行過程でも根強く存続し、あたかも2つ以上の国が合体したかの観を呈しているのである。
 しかし、元来1国レベルの閉鎖された社会であれば、この構造は固定したまま強固で動かないのだが、この構造を動かす力が、内側からではなく外側から現れたのである。その力こそグローバリゼーションであった。・・・(中略)・・・。
 BRICsをBRICsたらしめたものは、これまで眠ったように隔絶していた二重構造が外界の力を取り込むことで巨大な人口と資源が合体して発熱を開始した点にあるのである。

構造社会からネットワーク社会へ

 二重構造を破壊した後で、この異質の両者を融合させる契機となったのはコンピューターの普及だった。(p.170-171)


ここでは中国などを語るときしばしば指摘される社会内部の貧富(教育水準等も含めて)の格差が、肯定的に語られている点で興味深い。実際に、この社会内部の多様性の存在はある程度までBRICs諸国の強みになっている部分はあるという点で、著者によるこの「評価の転換」は首肯しうる。

しかし、それが筆者によっては定義されていない「グローバリゼーション」によって活性化されたとし、さらにその構造を融合させたのがコンピュータ、すなわちインターネットなどによる情報およびIT産業の出現といった変革だったとする点には大いに疑問がある。

著者の理論的なスキームには、70年代ないし80年代以前に語られていた産業社会論(脱産業社会としての「情報化社会」)の古臭い見方がそのまま残っている。インターネットの普及によって情報のあり方が変わったことは確かであり、それによって産業なり商業なりのあり方が変わったのも間違いない。しかし、それによって教育された階層と教育されておらずネットともほとんど縁のない生活をしている貧困階層がどのように融合されるというのか?本書を読んでもこの点についての具体的な説明はされていないはずである。

インターネットが普及したとしても、「国民経済」を基調として、各国は各々の内部に資本や投資を留めておくようなシステムがある限り、ネットが産業の連結のあり方を変えることはない。むしろ、産業が行われる地点を決定する投資のありようが変わり、ネットはそれを情報流通の面で補完しているに過ぎない。それはグローバル化を推進する積極的な原因ではなく、グローバル化が進展することを補助的に推進する「環境」に過ぎない。そして投資のあり方を変えているのは国際的な金融や貿易に関するルールである。グローバリゼーションと呼ばれる現象の本質的な構成要素は「金融グローバル化(マネーが国境を越えて自由に移動できるようになること)」なのである。

どこにでも自分に有利な地点に投資できるようになった投資家(資本家)にとって、BRICsの環境は魅力的なのである。安価な大量の労働力が存在し、それなりに教育されたエリート階層が存在することによって品質管理等もある程度のレベルまでは容易に行えるようになってきている。商品の種類によって人を使い分けるなどすることができることが、投資する側には魅力があるからであり、それゆえにこれらの国々がグローバル化の進展とともに急速に発展しているのである。

そのあたりの認識においては本書は参考にならないが、BRICsの表面的な特徴やミクロな各分野の企業の動き等を概観するには有益な書である。



 ところで、中国では人民元の高騰が叫ばれている。この人民元の対ドル相場の高騰が中国の対米輸出にかげりを落としている。しかし中国の対米貿易減退は、その輸出品の中間財を日韓に依存しているぶん、日中韓貿易に影響を与えざるを得ない。だから人民元の対ドル相場の上昇は単に中米関係だけの問題ではない。日・中・韓3カ国が貿易で連動しているだけに、この問題が日・韓に及ぼす影響は大きい。
 2006年度の日中韓貿易関係を見ておこう(図表63)。この図から明らかなように、日韓関係は日本の対韓貿易黒字で、その額は254億ドル、韓国と中国をみれば、韓国の対中貿易は黒字で、その額は209億ドル、そして中国と日本をみれば、中国の対日貿易は黒字で、その額は255億ドルである。つまり日中韓3国は、3すくみの状況で、約200億ドルの資金が循環しているのである。したがって、人民元の高騰と中国の対米貿易輸出減少は、単に中国だけの問題ではなく、日中韓の貿易亜kんけいを通じた東アジア全体の問題でもあるのである。(p.180-181)


こうした相互依存関係についての知識や理解を深めることは非常に重要である。

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