アヴェスターにはこう書いている?
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張承志 著、梅村坦 編訳 『モンゴル大草原遊牧誌 内蒙古自治区で暮らした四年』

 だが、歴史上のさまざまな遊牧騎馬民族の勇壮なロマンも、草原で営まれる牧羊など日常的な生活を母胎としている。それにもかかわらず、英雄や戦乱の陰に有史以来かわることなくひっそりといきづく一般の牧民の暮らしぶりや心情について、私たちはほとんど知らない。(p.3)


本書は86年に出されたものであるが、当時の歴史学では社会史が流行し始めた時期であることと、本書のこの視点は共有しているように思われる。

確かに、草原の民の日常について私たちはほとんど知らないのであり、本書は非常に有益な情報を提供してくれたと言える。そして、本書の体験が概ね1970年前後から80年代前半までの経験であることから、それ以後、30年余りが経過した内モンゴルの現状について、どのようになっているのか少し気になるところでもある。好奇心が刺激されるものがある。



 ハンウラの遊牧民のアイマクの組織は、血縁的な意味での「一族」を構成しているとともに、何よりも生産単位を軸とした自然的結合の一種であるという点に、最も基本的な特質を見出すことができるように思う。(p.42)


遊牧生活は生産と生活が一体となっているとされることからも、この点は了解されるように思われる。



要するに一年の四季それぞれに家をあげて移動する方法から、冬と夏の二回だけ、それぞれの営地に設けられた定住的な家に向かって移動する方法に変わる過渡期にささいかかっているのだ。(p.85)


70年代の中期頃にこうした過渡期であったというから、現在は相当状況が変わっているのではないか?と想像される。相当に定住化が進んでいるのではないだろうか?という予想。



 モンゴル遊牧民は、農民、商人、軍人、労働者、職人など、ほかのあらゆる職業の人びとと根本的に異なっている。ほかの職業についている人びとは仕事と生活が分離しており、仕事以外は生活であり、仕事上の技術は生活とは直接には関係がなく、甚だしい場合には仕事と生活が厳しく対立していることさえある。しかし、牧民はそうではない。牧民の仕事と生活とは完全に一体化し、仕事すなわち生活そのものである。仕事上の技能は生活上の技能となるのだ。(p.164-165)


この点はモンゴル遊牧民を捉える上で最も基本となる認識の一つであるように思われる。歴史上の遊牧民を見ても、彼らは生活と軍事が一体であり、それゆえ強力な軍隊でありえたという議論があったが、それと同じである。思うに、彼らにあってはこの一体性は、仕事と生活の分離と言われる際の、「生活」の部分が非常に小さく、生きている活動の大部分が「仕事」になっており、その仕事をすること自体が他の人々における「生活」として区分される領域の事柄をも含んでいるのではなかろうか。

なお、先にアイマクという組織が生産単位を軸としている点に特徴があると著者が指摘している箇所を引用したが、私の考えはこの点とも整合的であるように思われる。



草原はなるほど限りなく美しく麗しいだろうが、牧民たちは草原の荒涼として単調なさまを誰よりも深く知っている。災害のとき、彼らは草原の恐怖と無情の日々を味わわされる。この遼々と広がる世界の中で成長し大人となる彼らには、外の世界の人びとの抱くようなロマンティシズムの微塵とさえ、きっぱりと無縁である。(p.203-204)


外から見た際に喚起される情感と内にいて暮らしている人びとの感覚とは異なっている。一つ前のエントリーで紹介した『内モンゴルの草原日記』という本には、やはりこのロマンティシズムが垣間見えた。

モンゴルに限らず、シルクロード然り、そして中国然りであるが、日本の人びとにはこれらの地域に対するロマンティシズムが比較的強いように思われる。(欧米でもそうかも知れないが。)ちなみに、中国へのロマンティシズムは若者よりも中高年の中国好きの人に多いように感じられるのだが、思うに、これらの人びとは文学や歴史物語によってこれらの地域を認識していることが、そのロマンティシズムの要因になっているように思われる。文学の副作用、観察者の視点。


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