アヴェスターにはこう書いている?
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ニーチェ 『ニーチェ全集8 悦ばしき知識』(その1)

たとえばわれわれはみな、人間平等のに――平等そのものではないにしても――慣れっこになっている。自分自身を意のままにできないし閑暇も持っていない人間、――そういう者がわれわれの眼にはもう決して軽蔑すべきものとは映らない。(p.84、本文傍点部には下線を付した。以下同様。)


ニーチェがここで語っている文脈を離れて、このフレーズはある想念を喚起させた。

確かに、人間は平等であるべきだという説に私たちは慣れっこになっているが、平等は現実には存在しない。ニーチェはむしろこうした理念に胡散臭さを感じており、古典古代のギリシア的であると彼が想定するような価値序列を是としているように思われる。むしろ、そうした理念Ideeが観念なり言説なりの世界に存在することによって、現実の問題が感知され、認識されることになるのだから。

ただ、その説に「慣れっこになって」しまうことにも、確かに問題があるように思われる。なぜそうあるべきなのかということが問われなくなるからであり、そうした絶対化は如何にその理念が美しく崇高であり善であると感じられるとしても、暴力的な行為へと転化するものだからである。そして、そのようになった場合には、慣れっこになり無自覚である方が修正の余地が乏しいために、タチが悪いものになることが多いからである。



無私な者・犠牲的な者・有徳な者たちを称賛すること――要するに自分の力と理性の一切を自分の保持・発展・高揚・促進・権力拡大のために使わないで、自分に関しては慎ましく無思慮に、それどころかおそらく無頓着か皮肉に暮らしている者たちを、称賛すること、――こういう称賛は、どっちみち、無私の精神からおこったものではない!「隣人」というやつは無私を賞めたたえる、無私によって彼が利益を得るからだ!(p.88-89)


このことは私も昔考えたことがあり、同意見である。こうした「無私」を推奨するイデオロギーは宗教思想によく見られるものであり、90年代に流行したカルト宗教や自己啓発セミナーなどでも多用されている。したがって、過度に利他主義を推奨することは胡散臭いことと思われ、これを批判することには意味があると私も考える。

ただ、ニーチェの指摘は一面的であり、全く不十分である。なぜならば、ある人の無私の行為によって隣人が利益を得るのは確かだとしても、「無私の行為」をした人の利益にもなると経験的に言えそうだからである。ニーチェの一面的な指摘を鵜呑みにすれば、自分の利益を減らして他人に利益をあたえるかのようなゼロサム的な考えを想起させられることにより、あらゆる「無私」であるとされる行為は非難されるべきものになりかねない。

しかし、他人の利益を優先する行為は、ゼロサム的に自分の利益を減らすものであると一般化することはできないということを、ニーチェのように非難の調子で語る限り、読み手が瞬時に読み取ることは難しいであろうし、書き手もそのようには考えていないはずである。もし、そのように考えていれば、自分も隣人も一方的に利益を搾取するような関係ではないのであり、むしろ、いわゆる相互に利益を高めあう関係も想定されるのだから、非難の調子になるはずがないからである。

上記のように利益についてゼロサム的な想定してしまうことと「誰の利益を目的として行為するかということと、行為の結果が誰にどのような効果を及ぼすかは別のことであるということの区別がなされていないこと」、少なくとも、この2点でニーチェの論は不十分である。もちろん、利己主義と利他主義を巡る議論の中では、「利益」という概念が多義的であるために決して決着がつかない議論になることが多い――即ち、利己主義とか利他主義とかいう議論は、そもそも問題の建て方自体が間違っている――ということもあるが。

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