アヴェスターにはこう書いている?
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栃木県弁護士会 編 『生活保護法の解釈と実務』

 他方、生活保護制度においては、従来から補足性の原則や不正受給の防止等を理由として、過度の調査による負担を課したり、申請を回避させるなどの問題が指摘されていたところであるが、平成12年(2000年)5月の「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案」に係る附帯決議などで生活保護制度の検討や見直しが必要とされ、平成15年(2003年)8月に厚生労働省の社会保障審議会福祉部会に「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」が設置された。(p.8)


一応このあたりが、現在の制度改正(老齢加算の廃止や母子加算の廃止など)の動きが具体化し始めた時点であるといえるらしい。

もちろん、基本的な趨勢として捉えるならば、80年代頃の第二臨調や第三次行革審などの時代にまで遡れるのだろうが。具体的な生活保護制度との兼ね合いについてはまだ踏み込んで調べていない。



 しかしながら、生活保護基準は、人間に値する生活を保障する極めて重要な基準である。平成19年(2007年)11月28日に可決成立した改正最低賃金法は、「生活保護との整合性に配慮する」ことを銘記して最低賃金引き上げに道を開いたが、生活保護基準が下がれば、最低賃金の引き上げ目標額も下がることとなる。また、生活保護基準は、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法による利用料の減額基準、公立高校の授業料免除基準、就学援助の給付対象基準、さらに、自治体によっては国民健康保険料の減免基準など、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動している。したがって、生活保護基準の引下げは、現に生活保護を利用している人の生活レベルを低下させるだけでなく、所得の少ない市民の生活全体にも大きな影響を与えることは明らかである。(p.9)


生活保護基準が他の制度とリンクしていることについては当然の指摘と言えばそれまでだが、議論の展開の仕方として、どの制度のどの部分と関連するかを個別に列挙すると説得力が増す。

今のところ、老齢加算や母子加算などの漸次的縮小、廃止はあったものの、大幅な基準引き下げは行なわれていない。むしろ、生活保護基準以上に低所得層の所得水準の下がり方の方が激しいのが現状である。日本の生活保護制度には一度受給してしまうとなかなかそこから脱け出すことが難しい構造があり、こういう状況では生活保護制度を充実させること以上に、生活保護を受給せずに済むための体制が重要であるように思う。

制度から立ち直りやすくする方法は、制度を分野ごとに分立させることである。制度を利用しなくて済むようにするためには、それ以前の雇用・労働法制を整備し、社会保障を充実させることである。いずれも破壊が進められてきたものであることが、こうした時期になって社会に大きなダメージを与えることになるのである。



現行の水準均衡方式により算定される保障基準は、一般勤労世帯の消費水準の67パーセントを目安として決められているが、それが客観的に「健康で文化的な最低限度の生活」又は「健康で文化的な生活水準」を満たすものであるか否かの検証はされていない。(p.19)


確かにその通りである。

ただ、そうしたことの厳密な検証は事実上不可能であろう。「健康で文化的」という概念が一義的に測定不可能な概念であることがその一つの理由であるが、仮にそれをある指標によって代表させることにし、そのように代表させることに正当性を認めた場合でも、検証するためには受給者個別の生活状況を具体的に把握しなければならないため、実際に調査すること自体が難しいからである。

そして、具体的な個別事例の状況を把握できる場合には、具体的に把握すればするほど、最初に述べた概念の曖昧さが問題を難しくしていくことであろう。

こうしたことを検証しようとする姿勢は重要なものではあるが、厳密さを求めると実現不可能な問題であるから、かなり緩やかな基準によって大まかに測るしかない。その際、すべての人が最低限度を満たす「客観的な基準」を設けてしまうと、多くの人にとっては「過支給」となる。いずれにしても問題はなくならない難問である。ある意味、この問題に拘泥して保護基準の適正さを問うよりは、生活保護制度以外の「過度に保険主義に陥っている制度設計」を見直すほうが重要であると私には思われる。


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