慶派については次のような思い出もある。康慶の弟子定慶作と伝えられる興福寺の金剛力士像に良く似た力士像に、敦煌莫高窟で出会ったことがあった。莫高窟の南端に近い194窟の力士像は、八世紀の中唐期のもので、大きさは等身大の定慶の力士像の半分程度、しかも材質は塑像(定慶は寄木造)。奈良から遥か数千キロの彼方で、中唐期より約四百年後の建久年間(1190~99)の作品と共通した造型に出会うとは驚きであった。これもまた、天平の旧像を熟知した定慶が、その復元を目指した結果にちがいない。(p.64)
旅をして様々な文物を見て「面白い」と感じる一つのパターンとして、こうした比較対象を見つけることがある。これらの関係に思いを馳せることは知的な楽しさを感じさせてくれる。(そうした着想を文献などを通して確認していったりする作業もまた楽しい。)
近々、奈良や京都に行くことを計画しているのだが、最近、よく行っていた中国の建造物や各種の造型との比較をしながら、私も楽しんでみたいと思う。
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