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アヴェスターにはこう書いている?
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A.ネグリ、M.ハート 『<帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』

このようにさまざまの原理主義に共通する特徴を、前近代的または伝統的な世界とその社会的諸価値への回帰として特徴づけることは、しかし、解明するものよりも隠蔽するもののほうが多い。じっさい、過去への回帰という原理主義者の構想は、一般に歴史的錯覚にもとづいている。たとえばキリスト教原理主義者が掲げている安定した異性愛的な核家族の純粋さや健全さといったものは、合衆国にはかつて一度も存在したことがないものである。彼らのイデオロギー的基礎となっている「伝統的家族」とは、家族制度の内部でなされるいかなる現実の歴史的経験からよりも、テレビ番組からより多く引き出された価値観や実践の寄せ集め(パスティーシュ)にすぎないのだ。それは過去に投影された虚構のイメージで、ディズニーランドの「メインストリートUSA」のようなものであり、現代の不安や恐れのレンズを通して遡行的に構築されたものなのである。キリスト教原理主義の「伝統的家族への回帰」とは、回顧的なものではまったくなくて、むしろ現代の社会秩序に抗する政治的プロジェクトの一部をなす新しい発明品なのである。
・・・(中略)・・・
思い切り単純化して言えば、ポストモダニズムの言説はグローバリゼーションの過程における勝者に主として訴えかけ、原理主義はその敗者に訴えかけているのだと論じることもできるだろう。(p.196-198、強調は引用者)


近年の日本でも似たようなことが起こっているのではないだろうか?例えば、自民党の改憲案などに見られる「復古調」の論調の言説である。

「伝統」などを持ち出すので「復古調」に見えるが、これはネグリらが言うように回顧的というよりは「新しい発明品」という面を持っている。

ネグリらはこの新しさを<帝国>的秩序を拒否するものとして肯定的に評価している。しかし、現代日本の「復古調」はむしろ<帝国>的秩序を肯定するものであるように思われる。

しかし、受容層が「グローバリゼーションの敗者」であるという点は概ね妥当に見えるからである。(詳細は省くが、これらの言説を受容した人々が語り、書く内容からの推定による。)


じつをいうと、第三世界は世界市場の統一化のプロセスのなかで消滅してしまったわけではなく、いまや第一世界のなかへと入り込んでいるのである。しかも、そのようにして第三世界は、絶えまなく生産および再生産されつづけるゲットーやバラック地区やスラム街にその姿を変えながら、第一世界の心臓部に住みついているのだ。そして、その代わりに第一世界は、証券取引所や銀行や多国籍企業さらにはマネーと指令でできた冷ややかな超高層ビルといったかたちで、第三世界に移されているのである。(p.330)


こうしたモザイク的な階層構造は、ウォーラーステインの中核-半周辺-周辺といった世界システムの階層構造論がしばしば見落としてしまいがちになる点であることは確かである。ただ、ネグリらの考えは地理的な位置が持つ地政学的な重要性を軽視しているという点でウォーラーステイン的な立場からも反批判できるし、されるべきだろう。

<帝国>による規制的で抑圧的な手続きの有効性は、最終的には潜在的で構成的なマルチチュードの活動に帰すべきである。(p.452)


こうした<帝国>とマルチチュードとの関係性の捉え方は非常に興味深いものがある。本書から得た着想のうち、個人的にはもっとも重要なものだとさえ言える。<帝国>システムの抑圧の原動力になっているのはマルチチュードの創造性・主体性にあり、ある意味で表裏一体のような関係にあるということだ。

とはいえ、私見では<帝国>の存在をネグリらと同じものとして考えることはできない。彼らの考えはあまりにも「ポストモダン」的である。ここも詳論は省くが「モダン」を前提していながら、それとの断絶を強調し過ぎている。つまり、国民国家や近代的主権は破綻しているのは確かだが、全く無意味なわけではない。ネグリらが想定するよりもそれらの影響力は大きいと私は見ているのである。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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