アヴェスターにはこう書いている?
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横手裕 『中国道教の展開』

 これにたいし「宗教」はヨーロッパで成立し、近代に東アジアへはいってきた概念である。日本で明治維新が起こり、西洋の文化や学問の輸入が積極的におこなわれるなかで、ラテン語religioをもとにした西洋諸国語(英仏religion/独Religionなど)の和訳後が複数あらわれることになったが、明治十年代ころからそのうちの「宗教」が優位になり、しだいに定着していくことになったようである。ここで「宗教」という言葉をさかんに語りながら仏教、神道、儒教などにたいして文明的優越を主張したのがキリスト教であり、それに対抗して仏教も自らを優れた「宗教」であると説きはじめるようになった。そのような過程をへながら、「宗教」はキリスト教を範型としつつ、世界共通の文化の一つとして人が思考するにあたって必要な概念とみなされて定着した。そして、日本では仏教をはじめとしてそれに類似する既存の文化も「宗教」の名で呼び、その型にあわせて理解することになっていくのである。このような状況下で、道教もいつしか宗教とされたようである。(p.5-6)


日本における「宗教」の概念の形成史。この用語自体がキリスト教を範型としていたということは極めて重要なポイントであり、それにあわせて他の「宗教」も裁断されることとなった。「宗教」という言葉の核心部分に「超越的な神への信仰」が漠然とイメージされるのも、このことによると言えよう。

私としてはキリスト教であれ、仏教であれ、道教であれ、イスラームであれ、こうした「宗教」と呼ばれる現象は、「共通の信仰」がそのメルクマールであるというよりは、むしろ、集団形成のひとつの形態として捉えるべきであると考える。集団を形成する際のメルクマールとして教義や信仰というよりも、とりわけ儀礼を共有している場合にその集団が形成される形態を「宗教」と呼ぶべきだと考えている。即ち、理論ないしイデオロギーを中心として形成される学派や政党とは異なり、共通の教義に基づく儀礼――実質的に自己目的的な儀礼であって、プラグマティックには何らかの目的のための手段として位置付けられないような儀礼――を共有している集団形成の様式を宗教と呼ぶ。

このような読み替えを行うことによって、「超越的なもの」への信仰を中心として捉えられがちな、キリスト教をモデルとした宗教観よりも、様々な「宗教」の現象を捉えやすくなるのではないかと考える。



一言でいえば、文化を形成し担う中心的主体が貴族から富裕市民層に移り、その質も貴族趣味から庶民化したといえよう。(p.57)


唐代から宋代は中国の文化のターニングポイントとされるが、道教も同じであったと本書はいう。唐から宋にかけての時代における文化の性質の変化を分かりやすく端的に表現していると思う。

もちろん、唐代にも「庶民の文化」は存在したが、それがメインカルチャー的な扱いを受けてこなかったのに対し、宋代になると「庶民の文化」が肯定的な評価を受け、残されるようになったというところだろう。



 「道士と道観の道教」が道教として正統であり権威をもつということは一般論的に認められているが、じつはそれ自体の活動内容は伝統に依拠しその遵守をむねとするわけであり、大きな内容的変化は起こりにくいことになる。それにたいし、本来は非道士による道教文化がいろいろなかたちで展開発展し、道士の道教にも流れ込んでそれを豊かにしていくものであったといってよいであろう。(p.78)


興味深い現象であり、道教以外の分析にも使えそうなモデルだと思われる。フォーマルなものはフォーマルであるがゆえに伝統に拘束されて固定化される傾向にあるが、インフォーマルなものにはそれほどの拘束性がないために時代とともに変遷していき、それがフォーマルな世界にも影響を与えていくとする。

「伝統」とされるものの多くは実際には過去も現在もそれほど長く同じものは続いていないということからすれば、ややフォーマルなものの伝統的拘束性を高く評価しすぎているきらいはあるが、それらが実際には時代と共に変化していくことを説明するモデルにはなりうる。余談になるが、80年代の村上陽一郎の「意味空間」という仮説とも通じるところがあるのが興味深い。

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