アヴェスターにはこう書いている?
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陣内秀信 編 『中国の水郷都市 蘇州と周辺の水の文化』(その2)

 その後、住宅を何軒も見ていくうちに、この住宅の敷地がけっして例外ではなく、むしろ間口が狭く、奥に長いという水郷都市の住宅の典型であることに気付いた。このような敷地が、運河に対して短冊状に連続している。しかも、間にいくつも中庭を挟みながら、奥に行けば行くほど、日常生活の舞台としての重要度が増すのだ。外から見るだけでは、何も見えてこない訳がここにある。
 中国の建築は、もちろん地形や気候によってばらつきはあるが、一般に南向きが主体で、明快な中心軸を持ち左右対称に構成されるという特徴をもつ。これは、単に住宅だけでなく、廟のような宗教施設や都市全体の配置にまで及んでいる。水郷都市の住宅にも、こうした特徴が見られるのはいうまでもない(写真50)。
 だが考えてみると、間口が狭くて奥に長い住宅が、ここ江南の水郷都市で顕著に見られるのは不思議だ。中国の他の地域の住宅は、奥に展開することはあってもこれほど極端ではないし、ましてここでは官僚や地主、大商人の住宅でさえ、間口が北京など北方の住宅の半分にも満たない10メートル前後なのだから、きわめて特徴的というほかない。江南では、水を積極的に取り込み、運河を骨格として都市をつくりあげてきた。しかし、陸地と呼べるところもほとんどなく、建物を自由に築くことができない。ここに、それを解く鍵がある。
 水郷都市では、建物が運河に面することで、そこに住む人々の快適な生活が約束される。最も重要な交通手段の船を直接建物に着けることができるだけでなく、生活用水としての水も常に確保することができるからだ。しかし、土を突き固めるだけの北方とは異なり、このあたりでは木杭と石を用いて地盤の強化をはからなければ、建物を容易に築くことができない。そのうえ、陸地と呼べるところがほとんどないほどの低湿地帯だ。
 そこで、すべての建物が運河に面するという条件を満たし、かつ運河沿いの限られた土地を有効に利用するには、一軒一軒の間口を狭くするのが理にかなっている。そして、間口が狭いかわりに、奥へ展開することで住空間の拡張をはかることができるのである。とりわけ、官僚や地主は大家族をかかえるため、住宅を奥に拡張することで住空間を確保した。間口が狭く、奥に長いという水郷都市独特の住宅は、こうして誕生したのであろう。(p.195-197)


なかなか説得力のある説明である。

何となく見るのではなく、ものを見るときの基本的な枠組みをもってみると問題を発見したりしやすいというのが私の経験から言えるが、上記の一連の叙述は中国の住宅を見る際の一つのパラダイムを提供してくれていると思う。

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