アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

杉本信行 『大地の咆哮 元上海総領事が見た中国』(その1)

 中国は日本にとって、時としてやっかいな隣国である。しかし、だからといって日本は引っ越すわけにはいかない。中国が日本にとって好ましい存在になるように全力を尽くすのが外交の要諦だと考える。少なくとも中国の失政のつけが日本に回ってこないよう賢明に立ち回ることが大事だ。(p.14)


敵を減らし味方を増やすことこそ外交の基本原則というべきであろう。やたらと好戦的な「タカ派」と呼ばれる人々は現実的には「バカ派」と呼ぶべきであるのは、このような初歩的な原則に反していることによる。



 中国の人たちは、76年の天安門事件以前を知る人と、それ以降に生まれて、以前の実態を知らない人、それから、文化大革命の十年を知っている人とそうでない人で、考え方、意識がまったく違っていて非常に興味深い。
 ・・・(中略)・・・。彼ら(引用者注;文革時代の酷さを知っている世代)は共産党が何をしてきたかを自分の目で見、体験してきたわけで、意識的に共産党のスローガンに対してものすごく醒めている。
 だから、政治が躍起になって、戦争で日本がどれだけ悪かったかという教育を一生懸命してみても、その片方で彼らは「だけど、共産党はもっとひどかった」と平気で語る。もちろん、絶対に信用できる人間に対し、隠れてではあるが。(p.56-57)


中国の人々の意識について考える際、この世代間の差異は考慮に入れるべき枠組みであろう。



 そこで78年、小平は改革・開放政策に大きく舵を切った。復活翌年のことだった。
 路線変更した一つのモデルとして、小平は中国人民に日本を見せた。訪日した小平が視察する日本の最新鋭工場の映像が中国国内に何度も流された。日産自動車の座間工場でロボットが精密に動いて自動車がつくられていく現場を見せて、「これが現代化である」と説いた。時速二百キロ以上で疾駆する新幹線を、中国の人々は未来世界の映像を見るような眼差しで眺めた。
 80年代初めに、中国で頻繁に放映された日本の映画やテレビの作品も、中国の改革・開放を後押しする役割を担っていた。(p.85)


最後の一文で想起されるのは、中国で日本のアニメが初めて放送されたのはこの頃であり、「鉄腕アトム」がその最初の作品だったということである。



 対外援助に関し、それ以前の中国は、共産圏の先輩のソ連一辺倒で、外国からの資金や物資援助、投資、借款を受け入れない「対外貿易三原則」の立場を貫いていた。
 ところが、50年代後半から始まった中ソイデオロギー対立のあおりで、60年7月にソ連側が対中援助協定を突然破棄した。同時に派遣していた1390名のソ連人技術者全員を一斉に引き上げた。そのため、当時着工中であった257の経済プロジェクトはすべて停止の憂き目を見た。
 さらに中国側を苦しめたのが、建国直後の50年代に友好国ソ連から受けた総額14億ドルにのぼる借款であった。ソ連は利払いを含めて借款を全額返済するよう中国に迫った。
 60年、中国は大飢饉に見舞われるが、自国民が飢え死にしても食料を輸出して借款を返す、いわゆる「飢餓輸出」という悲惨な経験をした。このときに中国は、外国から金を借りることについての危険性を嫌というほど味わったといえる。
 その後も中ソ対立が続く一方で、西側との関係が回復する前は、ココム(対共産圏輸出統制委員会)より厳格な中国向けの技術の輸出規制「チンコム」を課されており、西側からの技術支援は望めない孤立した状況にあった。
 そうした国際環境を踏まえて、中国は自力更生の道を選ぶ。極端な国有化政策をとり、国民の土地を取り上げ、全国に人民公社をつくって、集団生産を行う計画経済を進めた。60年代後半は、外国から一切借款、援助を受けず、内債も外債も持たなかった。だが、その後十年間続いた文革の混乱により、国内経済は完全に疲弊してしまった。(p.89-90)


50年代から60年代の中国の暗い時代の国際的な状況は、どことなく昨今の日本と似たところがあると言えないだろうか。この時代の中国の事例は、特定の一国との関係だけを強化し、他との関係が弱いことがどれほど脆弱であるかをよく示していると思われる。

スポンサーサイト

テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/352-897ca12a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)