アヴェスターにはこう書いている?
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遠藤誉 『中国動漫新人類』(その4)

中国では公けのマスコミに発表が許されるのは、政府が公認した見解である。しかし日本はまったく自由だ。その違いがわからない彼らは、日本のマスコミに公開された内容なので、政府が許可し公認した内容だと勘違いするのである。これは異文化体制というよりも、言論体系、言論の自由度に関する差異の問題である。
 2000年1月に「南京虐殺」に関する東史郎裁判の判決を受けて、日本の任意団体が「二十世紀最大の嘘『南京虐殺』の徹底検証」と題する集会を開くと、それに対し中国では「日本の右翼が南京虐殺を否定した」として全国民を巻き込んだ激烈な抗議運動が展開されたが、これを「日本国」が、あるいは「日本国民全体」が「南京虐殺」を否定したと解釈する傾向を持つ。だから中国全土で激しい反日感情が燃え広がった。・・・(中略)・・・。
 日本の一部の右翼が行動を起こしても、それが大手新聞やテレビ等で報道されると、まるで「日本国」によってその行動が許されたので政府が報道を許可したと解釈して、中国の国民は、すべて、「日本という国が、そのように意思表示したのだ」と勘違いするのである。(p.360-361)


この指摘は中国の言論状況を知り、誤解を解いていくために有用であると思われる。

(もっとも、「日本はまったく自由だ」というのは言いすぎである。日本にも報道に関する政治がらみバイアスは存在する。まさにNHKの番組に安倍晋三や中川昭一が圧力をかけたことはそれである。)



 日本がかつて、中国はじめ近隣アジア諸国を侵略し、無辜の民を虐殺したのは歴然たる事実である。その史実に冷静に客観的に教科書に記述し、日本の若者を教育していかなければならない義務を、日本は「全人類」に対して負っている。一方、日本の戦後処理のあり方は、たとえばドイツの戦後処理と比較され、「いつまでも反省していない」と、非難の対象となりやすい。とりわけ中国を筆頭とするアジア諸国から。
 なぜだろうか。理由は明確である。日本人の多くは、あくまで「アメリカに負けた」と思っているからだ。逆にいえば、中国やアジア諸国に負けた、とは思っていないのである。(p.365)


概ね同意見である。本書はこの、日本の多くの人がアメリカに負けたとは思っているがアジア諸国に負けたとは思っていないことの理由について掘り下げているのが興味深いところである。



 日本がこの「中国」と戦争状態を終結させたのは、72年9月27日の日中国交回復のときに発布された「日中共同声明」においてである。このとき日華平和条約を破棄し、「中華人民共和国」を「中国」唯一の合法的な政府として承認した。
 ここで初めて「敗戦国日本」と新たな「戦勝国中国」の戦争は終わった。だが、すでに経済繁栄を謳歌していた日本に、「敗戦国」として「戦勝国」中国を仰ぎ見るような意識はすでに薄かった。いや、もっと正確にいえば、「なかった」のではないだろうか。それどころか、日本人の中には、文化大革命等で破壊しつくされ荒廃を極めた中国に対し、それを蔑む視点さえあったのではないかと思われる。(p.368-369)


敗戦後、日本が特に中国に対して敗戦国であるという認識が薄かったのは、第二次大戦後、すぐに中国で国共内戦が始まり、どちらが正統な政府であるかがやや曖昧な状況になったことがあり、さらに、朝鮮戦争によりアメリカによる中国封じ込めと日本の西側への取り込みが同時に行われたことが構造的な要因として効いてくることになる。もちろん、日本はアメリカに空襲され原爆投下されて降伏を宣言したのであり、さらに敗戦後の占領もアメリカが行ったことも要因ではあるが。

本書はこうした見方をしているのだが、説得力がある。私も基本となる構造は冷戦により中国と日本が別の陣営に引き裂かれ、中華人民共和国がソ連から距離を置くまで交流できなかったことがかなり大きいと見る。



 終戦協定が連合国側と結ばれる前の1950年6月、旧ソ連のスターリンと北朝鮮の金日成の策略により朝鮮戦争が勃発し、10月に中国は参戦に追い込まれた。・・・(中略)・・・。
 このとき特に中国を敵視していなかったアメリカは、北朝鮮が戦いの火蓋を切り、中国が参戦を余儀なくされたのを見て、急遽、1951年4月、中国封じ込めのための「太平洋防衛構想」を発布し、日本はその構想内に取り込まれてしまう。
 毛沢東としては、朝鮮戦争など起こしてほしくなかったし、朝鮮戦争に参戦するなど、最も避けたい事態だったはずだ。・・・(中略)・・・。
 日本はといえば、アメリカの特需を受けて、朝鮮戦争の武器弾薬の倉庫となり、それにより戦後の経済復興の第一歩を歩み始め、共産中国との敵対関係を構築していくことになる。終戦後、5年も経っていない日本が、またもや武器弾薬を製造して、その弾で朝鮮戦争の最前線で戦っている中国人民志願軍の命を奪っていく。あの侵略戦争で中国人民の命を奪ったことを反省するどころか、またもやわが民族の命を奪うのか。あのときは日米安全保障条約締結も手伝って、「反対武装日本」という歌が全中国を多い尽くし、そのスローガンの真っ只中で私は自殺さえ試みたことがある。日本が軍事大国の道を歩もうとしているのではないかという警戒心は、あの時点で形成されてしまったのだ。
 こうして「中国」と終戦協定を結ぶ前に、日本は冷戦構造の真っ只中に組み込まれてしまい、「中華人民共和国」に「侵略戦争に対する謝罪」と終戦処理を行うチャンスを逸したまま、1972年に至ったのであった。
 このとき、日本も中国も、アメリカとソ連という、大国の犠牲になった側面がある。この点を日中両国が理解しあえば、今日のような対立感情は減少しているだろう。
日中両政府と国民は、この事実を冷静に見つめるべきだと、私は強く思っている。(p.369-371)


冷戦構造とそれを主導的に構成していった米ソ両国に日中が引きずられていくことによって、日本政府は共産中国に謝罪をするチャンスを逸した。これは事実の一面を的確に捉えているように思われる。この側面を強調することによって心情面において「責任」を軽減することができるのは確かであろう。「謝罪」という道徳的行為を政府が行う場合、それには相手の政府も必要になってくるし、その政府をもつ人々に対する謝罪をするにも、国交がなければ事実上不可能であって、その意味では日本は72年に至るまでそのチャンスが閉ざされていたわけである。

どちらかというと、中国の人々が日本政府(「日本」)を許す際の考え方として、この見方は有効であるように思われる。ただ、中国の人々には本質主義的な物の見方が強いので――私見では、教育水準が低いと半ば必然的にこの見方が支配的になるし、そうした人々が多い社会にいると教育水準が高くてもこの見方が強くなる――ここに示されているような関係論的な見方を大衆ができるようになるにはまだ時間がかかるように思われる。



 また、教科書に侵略の事実を薄めて書くことに、どのようなメリットがあるのだろうか。なぜか文部科学省は自国の過去の加害の事実をきちんと青少年に教え込むのをいやがる。教育現場でも、その部分は簡単に飛ばしてしまう傾向にある。それは今後の若者たちが世界に羽ばたくときの正しい判断力の養成を怠っているということになる。(p.373)


同感である。

「日本」という観念と「自己」を同一視してくれるような若者を育成しないと文部科学省には都合が悪いのだろうか?などと言ってみたくなる。教科書にしばしば見られる「わが国」という表記もやめてほしいし、また、新聞やテレビなどのメディアも含めて「中央政府」のことを「国」と表記することも相当の誤解の原因となっている。

「日本人」なる者が加害の事実を行ったことを強調するのではなく、日本国籍保有者が「加害の事実を行った」ことを強調し、その背景要因としての社会関係を明らかにすることによって、将来、同じような地政学的な配置が生じた際に過ちを犯さないように警告してやるべきなのであり、それこそが教育というものだろう。

(状況が同じようになれば、同じようなことが起こる可能性があるのだから。例えば、中国の歴史では、北方の遊牧民が南方に攻め入って領土を占領することが多く、南方から北方への反転攻勢はほとんど成功しないが、それは「民族性」の問題ではなく、社会的背景の問題である。「日本政府」がかつての過ちを犯さないためには、その過ちを犯した必要条件となった状況をよく認識することが予防の重要な方法だと言えようし、そうした予防をすることこそが「反省」を行為として具現することに他ならないのである。)

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