アヴェスターにはこう書いている?
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杉村宏 編著 『格差・貧困と生活保護 「最後のセーフティネット」の再生に向けて』(その2)

 しかしわが国では、資産調査が資産の調査のみではなく、むしろ稼働能力の活用や扶養義務の履行などの調査を厳しくする傾向があり、OECDの調査によれば、わが国の資産調査はもっとも厳しい国のグループに属するという。
 最近では、稼動年齢にあるというだけで申請書を交付しないとか、扶養義務調査を厳しくすることによって保護の申請を思いとどまらせるなど、いわゆる「水際作戦」が横行している。このようなことが起こる理由は複合的であろうが、制度そのものがオープンでしかも包括的な保障であることも一因と考えられる。一般扶助による包括的保障のシステムを、運用によってこのように歪曲することは好ましくなく、本来の機能を発揮するように運用することが必要である。
 また、生活保護制度は、所得保障にとどまらず最低限度の生活保障を行うこととされており、事実上の社会生活全般のナショナルミニマム保障制度となっているが、このことが各領域におけるミニマムの追求を鈍らせてきた面があることである。(p.82-83)


水際作戦が起こる一因として制度が包括的なものであることを挙げているのは慧眼である。一度保護を開始してしまえば給付を行う側はそれだけ大きな財政的および事務的な負担を抱え込むことになる。受給者が際限なく増えれば、それだけ負担は大きくなる。

現在、私が読んでいる最中である『生活保護の経済分析』によると、情報の非対称性が存在する場合には、日本の生活保護のような包括的な保障よりも、分野や給付対象者のカテゴリーを限定した給付を分立させるほうが効率的であるという実証結果があるとされている。そうであるならば、現在の日本で問題になっているような不正な運用(水際作戦や辞退届強要など)を防ぐ上でも、カテゴリーごとに分立した制度の方が有効なのかもしれない。(なお、引用文の最初に指摘されているように日本の生活保護のミーンズテストが厳しいのは、包括的な給付であることに起因する面が大きいと思われる。水際作戦が行われるのと同じ誘因に基づくものであろう。)



 そして現在、わが国の社会保障の諸制度は、社会福祉構造改革路線により極端な保険主義に陥っている。(p.85)


極端な保険主義というのは的を射た表現である。



 123号通知は、生活保護を利用しようとする者および利用している者に対して無差別に不正受給との疑義をもたせ、調査件数を競わせてきた。福祉事務所は生活困窮問題解決のための第一線現業機関から、「取り調べ室」ないしは「調査機関」と化した。・・・(中略)・・・。
 しかし、123号通知に拘束力があるわけではない。自治体側が監査で追求や指摘を免れるため違法行為を行っていることになる。元々、関係先調査については、生活保護法第29条に根拠をもつとしているが、条文にはどこにも全件調査しろとは規定されていない。ただ「必要があるときは」とあるだけである。一方、123号通知の内容には、提出書類や家庭訪問により疑義が生じた場合に調査を行うことができるとしか記述されていない。したがって機械的・一律に調査を行うことは明らかに調査権の濫用にあたる。また、金融機関等と生命保険会社に関しては、会社側は福祉事務所からの照会に回答することができるのは、本人届け出の印鑑と同意書の印鑑が一致した場合のみである(このことは銀行協会に確認済みである)。したがって、いずれにしても必要最小限度の関係先調査しかできないのである。(p.211-212)


金融機関や保険会社に対する機械的で一律の調査に対する批判。123号通知は本物を読んでみる必要があり、その上でコメントするのが妥当なのだが、現時点での考えを記しておく。

確かに一斉調査をすることには問題はあるだろうし、どこにも明示されていないというのは恐らくそうなのだろう。しかし、受給の公正さを保つには、行った方がよいとも言えるのではないだろうか。
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