アヴェスターにはこう書いている?
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杉村宏 編著 『格差・貧困と生活保護 「最後のセーフティネット」の再生に向けて』(その1)

 2003年8月に、生活保護制度の在り方に関する専門委員会が設置され、2004年12月最終報告書を発表した。その詳細や評価は別にして、報告書がこの「開始時手持ち金」の問題を提起している。
 資産活用の在り方の預貯金の項目で、「保護開始時に保有可能な預貯金の額について、保護開始後の運営資金としての必要性や自発的な家計運営の有用性の観点から拡大することにより、結果的に早期の自立につながりやすくなる。その具体的な限度額については、たとえば新破産法にかんがみ、最低生活費の3ヶ月分までは保有可能とすることも考えられる」としている。
 新破産法とは、2005年施行の改正破産法のことであり、ここでは自己破産をした場合の本人の手元に残す金額として、標準生活費の3ヶ月分をめどとしている。生活保護の最低生活費は標準生活費の約7割といわれている。せめて自己破産並みの扱いをというわけである。
 ・・・(中略)・・・。
 厚生労働省保護課は、委員会報告を尊重して開始時手持ち金を最低生活費の3ヶ月分に改正すべきであろう。(p.32)


生活保護の開始時手持ち金として現在認められるのは、最低生活費の1/2までである。月16万円の最低生活費であれば8万円ということだし、10万円なら5万円である。そこから最低生活費分だけが支給される生活が続く。

生活保護を受給している人びとの声(例えば、『この国に生まれてよかったか 生活保護利用者438人 命の叫び』など)によれば、冠婚葬祭などが保護受給者にとっては非常につらいものになっていることがわかる。つまり、知人の葬式などの臨時の出費にすら耐えられない生活を送っている人がおり、生活保護受給者にはそれは少なくないのである。

そこまでギリギリの生活をしている以上、保護費を受給する状態から抜け出すことは容易なことではないことは想像に難くない。不正受給を防ぐことは重要だが、経済的に自立できる世帯(高齢者や障害者の世帯以外)にまで、その可能性を奪うような制度設計には問題があるといえよう。例えば、資格を取ることで就労の可能性や収入増加の可能性が高めたりすることも現行の制度ではやりにくいが、資産保有をもう少し認める制度設計になっているならば、経済的自立を助長する制度としての機能を果たしうる。



 以上の結果からわかることは、今日の被保護層は国民全体の1%程度にすぎず、稼働能力を失った高齢者や傷病・障害者世帯が大多数を占め、経済的な自立によって生活保護から脱け出していくことが困難になりつつあるということである。その結果、生活保護受給期間は長期化し、5年以上生活保護を受けている人は50%近くを占める状況にある。さらに世帯規模は極小化の傾向にあり、全体の73.7%が単身者であり、2人世帯と合算すると90%に達する状況にある。
 職場や家族、さらには地域からも切り離された状態が、今日の生活保護世帯の実像であり、その特徴は社会的孤立である。
 このような状況は、稼動年齢層を「適正化政策」によって締め出した結果、ワーキングプアといわれる稼動貧困層の生活保護利用が困難になっていることもその一因である。(p.42)


生活保護の現状について簡潔にまとめられている。

とりわけ、保護受給者の特徴として社会的孤立が挙げられている点は興味深い。これはある意味では、補足性の原理の帰結だとも言える(誰からも援助を受けられない人であればこそ、水際作戦を突破して生活保護を受給できる)が、資産やちょっとした予備費すら用意するのが難しい生活を強いられている保護受給者には交際費すら十分でないことを反映している。実際、保護受給者の声を集めた前掲書でもそうした声が多数掲載されていた。

そして、このように社会的に孤立してしまった人は、人的なネットワークを活用できなくなるということだから、何をするにしても困難な状況、不利な状況に陥りやすいのである。こうして悪循環に入っていくわけだ。



 社会保障審議会福祉部会の「生活保護制度の在り方に関する専門員会」の検討報告(2005年12月15日)では、「入りやすく出やすい制度(利用しやすく自立しやすい制度)」へと生活保護制度の改革の方向性が示される一方で、生活保護の自立の考え方として経済的自立のみを自立として狭くとらえるのではなく、保護制度を含め、さまざまな社会保障・社会福祉の諸制度を活用しながら社会的自立や日常生活自立をめざすことも生活保護における自立に含まれることが確認された。しかしながら、制度運営のレベルにおいては、保護を受けさせないこと、保護から脱却させることこそが生活保護における自立であるという従来の考え方に基づいて、リバースモーゲージの活用を半ば強制することで、高齢者までも生活保護制度から排除しようとしている。(p.48)


ここで述べられているような自立の概念についての理解が深まった点が本書から私が得た最大の収穫であった。こうした考え方が中央の審議会で出ているということはある意味画期的なことであるようにも思われるが、しかし、実施する側から考えたとき、経済的自立以外の自立を促すインセンティブは非常に低いように思われる。(現場のケースワーカーにしてみれば、日常生活的に自立しているケースに対しては手がかからなくなるから歓迎されるだろうが、それすら出来ていない人が、「まっとうな」生活が送れるようにすること自体、とてつもないエネルギーを必要とすることが想像できる。)

こうしたことを考えると、「制度運営のレベル」においては、従来の考え方が前面に出てくるのは半ば必然的とも言えそうである。問題は、これをどのようなやり方で改めていくか、ということであろう。


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