アヴェスターにはこう書いている?
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河本英夫 『メタモルフォーゼ オートポイエーシスの核心』(その1)
「はじめに」 より。

パラダイム転換は、対象化された枠組みの切り替えであり、それによって経験は異なる見方を習得することはできているが、知識は増えても経験そのものが新たな形成回路に入ってはいない。物を捉える視点だけ増えても、なにひとつ経験が変わらないことがある。パラダイム転換を行うとはどのようにすることなのかが、パラダイム転換の議論からはまったく理解できないのである。しかもパラダイム転換が起きたと理解できるのは、すでにパラダイム転換が起きてしまい、それに対していっさいが手遅れになって以降である。変換ということの意味を知りうるのは、それに対してすべてが遅すぎる時期になってからであり、ここでも「物語文」の提唱者であるダントの鉄則があてはまっている。
 これに対して知のメタモルフォーゼで対置されたのは、経験が新たな形成回路に入り、別様な経験を実行することである。それはものの見方ではなく、経験が別様に形成される回路を探り当てることであり、それを実行することである。このとき経験そのものが形成されるのであって、それがメタモルフォーゼとなる。気がついたとき、すでに別様の経験ができるようになっていることが、メタモルフォーゼの課題である。(p.20)


この対比は河本の思想の基本となる構図である。河本の思想のすぐれたところは、テクストを読み進める中で、「新たな形成回路」に入らせる、それがどのような事態であるかに気づかせることにある、と思う。



二重作動の着想そのものは、オートポイエーシスから直接取り出されている。オートポイエーシスの提唱者マトゥラーナが使ったあの建築の隠喩である。建物を建てるさいに、職人を集め、見取り図も設計図もレイアウトもなく、しかも棟梁もなく、職人各人は当初偶然に持ち場につく。職人相互の関係でどう振舞うかが決められている規則があるとする。この規則にしたがって職人は行為を進める。設計図なしのこのプロセスの継続によっても家はできる。この場合職人は何を作っているのか自分で知ることなく家を建てたおり、しかも家が立ち上がったときでさえ、立ち上がったことに気づくことはないであろう。実際アリやハチが巣を作るさいに、事前に寄り集まって見取り図を前に談合を行っていたというような観察報告はなく、またそんなことをしているとも思えない。プロセスを自動的に経ることが、同時に別のことを行っているというのは日常に頻繁に見られることである。そして現在の人間の知識では、同時に進行している二つの事態を、統合することはできそうにない。・・・(中略)・・・。異なる事態が二重に進行するということは、この二重性が分離してシステムが新たな局面に入ってしまう可能性を含んでいる。二重に進行するもの相互は、相互に決定関係はなく、作動の継続の一点だけでつながっているからである。作動の継続さえ満たすことができれば、双方に可変性の余地が本来的に含まれ、しかも作動の継続をつうじてそれらは現実化していくのである。二重作動は、それじたいが別様のものになっていくメタモルフォーゼの中心的な機構である。そこでこの二重作動を基本にして、メタモルフォーゼのカテゴリーを整備していくことにしたい。(p.21-22)


本書の中心的な概念である「二重作動」について極めて簡潔に凝縮された説明がなされている箇所である。マックス・ウェーバーが描き出した「ある行為をするさいに主観的に思われている意図」と「その意図に基づいてなされる行為の意図せぬ結果」との区別にも通じるものがある点が私としては興味深い。

また、これによって、「作動」を担う構成素はリレーのように変わってもよいことなど、オートポイエーシスの基本的な考え方を理解する上で非常に役立った箇所である。よって、備忘録的に記録しておく。
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