アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

石川真澄 『戦後政治史』(その2)

 臨調はまる二年の審議ののち、83年3月14日、「増税なき財政再建」「超緊縮財政の堅持」などを柱とする最終答申を次の中曽根首相に出して解散する。鈴木内閣と、時の行政管理庁長官であった中曽根の掲げた「行政改革」は、このあと10年余り続く政治シンボルとしての「改革」のはしりであった。(p.153)


ここで臨調と言われているのは第二臨調のことである。日本において新自由主義の政策が本格化するのは、このときからだと言ってよい。既に25年が経過している。



 中曽根は就任当初の「不沈空母」発言などで支持率が下がったのをみて、その後はタカ派的言動を控え、閣僚の資産公開、平和と軍縮、行政改革、教育改革などを強調するようになった。これらによって内閣支持率は回復した。しかし、その政治手法は「審議会政治」と名付けられた独特なものであった。84年、中曽根は周辺に、「高度情報社会に関する懇談会」「経済政策に関する懇談会」「臨時教育審議会」「閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会」など、公私の新しい諮問機関をいくつも作った。それらの委員には、中曽根のブレーンである瀬島竜三・伊藤忠商事相談役、佐藤誠三郎東大教授、香山健一学習院大教授らが複数かけもちで入り、議論をリードした。その答申を通じて世論を動かし、政策実現をはかるという手法である。(p.159)


小泉のやり方と全くというほど同じであることに気づくだろう。ただ、橋下内閣における省庁再編と小選挙区制による派閥の解体という条件が整った上で登場した小泉はそれをより「有効」に(つまり、彼の意に沿うように)活用することができたと言うことはできる。



 84年9月6~8日、韓国の全斗煥大統領が韓国大統領として初めて公式に来日した。6日の宮中晩餐会で昭和天皇は、「今世紀の一時期において〔日韓〕両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾であり、再び繰り返されてはならないと思います」とあいさつした。植民地支配の過去についての最初の正式な反省の弁であった。大統領はこれに対して「厳粛な気持ちで傾聴しました」と答えた。(p.160)



今これと同じようなことが起こったらどうなるか?想像すると興味深いものがある。恐らくそれは、この24年の歳月でどれほど日本の世論が右傾化したかを示すことになるだろう。



 海部内閣は、発足当時からもう一つの主題をかかえていた。「政治改革」である。「政治改革」が具体化に向かったはしりは、リクルート事件によって高まった政治腐敗根絶の声に応じ、自民党が竹下内閣末期に政治改革委員会(後藤田正晴会長)をつくったあたりだろう。委員会は竹下の辞意表明後の89年5月22日付で「政治改革大綱」を発表した。大綱には、五年後に完成する小選挙区・比例代表並立制(以下、並立制と略記)を意味する提案が書き込まれていた。
 ・・・(中略)・・・。
 しかし、このころ自民党は党勢の復調に安心して「政治改革」熱は冷め、答申を受けての法案化はなかなか進まなかった。この時期には、小選挙区制によって不当に議席が減るに違いない野党はこぞって並立制に反対であり、自民党内にも強い反対意見があった。海部にとってはしかし、「政治改革」こそがリクルート事件で傷を負った安倍、宮沢、それに中曽根派を継いだ渡辺美智雄ら派閥領袖の復権を阻んで、自分の内閣を長続きさせる基礎であった。(p.180-181)


せっかく誰もやろうとしなかった政治改革を海部内閣が自らの延命のためにやってしまったわけだ。そして、このエゴイズムのツケが今、重くのしかかっているのだ。

政治改革が89年頃から本格化し、それが汚職などによる不信を起爆剤としていたことには注意が必要である。なぜならば、こうした政治家への非難から生じた「政治改革」は、政治家が自分の意思を政策により強く反映させることができるシステムを招いたからである。すなわち、民意は聞かずに我意を政策に反映させるシステムである。

この後、90年代のバブル後の不況期になると、ネオリベラリズムの陣営(財界)から官僚批判も出てきたのだが、高級官僚批判から次第に一般の公務員批判へと拡大して行きながら、「行政改革」が謳われ、それが行なわれてきた。政治改革が改悪であったのと同様、行政改革も改悪であり、ポジティブなビジョンのない、不満の爆発だけに押されて行なわれる「改革」がいかなるものであるか、ということをよく銘記しなければならない


なお、この後、90年代の選挙では「史上最低の投票率」が次々と更新されていくのだが、このことはこの時代の政治不信を反映していると言える。私が少しばかり興味があるのは、ちょうどこの時期は団塊ジュニア世代が成人した時期だということだ。現在の30代半ばくらいの世代だが、この世代が「ネット右翼」のかなりの部分を占めていると思われるし、また、小林よしのりのマンガなどに「啓発」されて右寄りの国家主義的な政治スタンスに共鳴しているのもこの層が多いと私は見ている。

もしそうだとすると、この世代の政治意識がどのような「空気」の中で培養されてきたかが見えるように思われる。政治家と官僚は「汚いもの」であり信用できないという観念が、この世代の心理には根付いている可能性が高い。そして、より上の世代(団塊の世代あたり)との違いとして、ある程度ではあるが「信頼できる政治や行政」についてのイメージがない。単に不信だけがある。

ここに付け加わるのが、長期の不況であり、アジア諸国の台頭であり、冷戦終結に伴うアイデンティティの危機である。反韓・反中を核とするナショナリズムが台頭する要因はここにあり、上記のようなリアルな政治と行政に対する不信に対するアンチ・テーゼとして、「観念的なナショナリズム」が台頭する余地が生じた。もちろん、政治行政への不信はネオリベの温床でもあり、ネオリベやナショナリズムの「分かりやすい」メッセージは彼らは実際には「政治音痴」であるにも拘らず、政治が「わかったような気分」にさせてくれる。

まともな人間関係のある世界では当然、そのような未熟な政治的な意見は表明できないが、インターネットのように発信のコストが低い世界では容易にその意見を発信できるため、ネット上でだけは妙に目立つということになる。(もちろん、インターネットのネットワークの特性としてのスケールフリー性も不可欠の基礎的要因なのだが。)ネット以外の世界でも、同じ傾向はやはりあり、その極端なものがネット上に姿を現わしている。その意味で、ネット上の言説はスケールフリーであることによって実際の人間行動とは異なった形に変形されてはいるが、一応の「認識根拠」であると位置づけることができると私は見ている。

これらは他の世代にも同様の条件ではあるのだが、既に述べたように、団塊ジュニア世代は団塊世代とそのすぐ下の世代と比較して、現実の政治に関する肯定的なイメージがない点で異なり、また、ネットに対するリテラシーが上の世代よりも高いという点が彼らの政治意識の形成に一役買っているように思われる。

まぁ、他にもいろいろ考慮する要因があるとは思うが、差し当たり、こうしたこともあったのではなかろうか。



 しかし、実際に政治を動かすのが議席数の分布であるとしても、それが有権者の政治的意思の分布をストレートに表現しているとは限らない。・・・(中略)・・・。
 こうしたひずみを除いて有権者の選択を正しく計量するには、得票率の変化を見るほかない。(p.197-198)


政治意識の分析をするにあたって、極めて重要な指摘であると思われる。もっとも、得票率自体も選挙制度によって左右されるのだが、それでも議席数で見るよりは遥かに妥当な見方ができるだろう。



国会議員の選挙運動を実際に末端で担っているのは、都道府県議会や市町村議会の議員、それに準ずる地域の世話役たちである。彼らは国会議員候補者たちのために、自分の影響下にある有権者に投票を働きかける。しかし、その選挙運動は同時に自分の影響力を保ち、さらに膨らませる機会でもある。現在または将来の自治体議員らが国会議員の選挙のために走り回る動機のなかには、「自分自身の運動にもなる」という部分があるとみていい。
 ところが亥年には自分の関係する選挙は四月に終わり、そのあと二ヶ月ほどで参院選となる。参院議員候補者のために働いても、自分のためになるかどうかを計算すると、次の自治体選挙は3年10ヶ月先で、効果の持続は期待できない。そこで、活動はどうしても鈍ることになる。(p.201-202)


去年も話題になったが、亥年の参院選は投票率が下がることについての仮説。それなりに説得力がある。ただ、2007年には「安倍晋三」への反対票を投じるために多くの有権者が怒りの一票を民主党に投じて勝たせたから、この仮説の通りには行かなかったことは記憶に新しい。

スポンサーサイト

テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/301-cb5cb7f4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)