アヴェスターにはこう書いている?
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神野直彦 『財政のしくみがわかる本』(その5)

 つまり、財政が借金をしてもいいという基準が二つ出てきているのです。一つは、前にお話しした資本的経費など、あとの世代に利益をもたらすような使い道だったら、借金をしてもいいという「使い道基準」です。もう一つが、今お話しした、不況のときに借金をして、好況のときに黒字にしましょうという「景気基準」(景気の状況にあわせて借金をしたり黒字にしたりする)です。(p.130-131)


たしか、先日のニュースでは、地方自治体に赤字地方債の発行を当面の間許すことになりそうな情勢になっていたはずだ。これはまさに上記の「使い道基準」を守らなくするということに他ならない。もし増税をしないで状況を改善するならば、本来であれば交付税を増額して、赤字国債という形で管理した方がいいはずである。

自治体には事実上、歳入の自治も歳出の自治も十分にないのだから、そこに赤字地方債を許してしまうと取り返しのつかないことになりかねない。財政についてイメージでしか捉えられず、家計や企業と同じような発想でしか見られない一般庶民や頭の悪い政治家には、こうしたニュースの重大さは認識されない。

背景にあるものの一つは財務省による自治体への責任の押し付けである。政治家も自治体なんてどうでもいいと思っているフシがある。ところが、自治体というのは、福祉や教育関係の事務のほとんどを請け負っている下請け業者みたいなもんだ。日本の場合。ここに赤字がたまるとどうなるかは長期的には火を見るより明らかなんだが、反対の声は全然聞こえない。絶望的とはこのことを言うのだろう。。。

さて、私は増税論者だが、増税を主張する根拠の一つは、上記の「景気基準」と深く関係がある。90年代に債務が急増したことはよく知られているが、当時は明らかに不況だった。その意味で財政出動すること自体は正当な行為だったはずである。

ところが、その間に世界経済の構造が変化して、金融グローバル化が急激に進んできたため、大まかに言えば「金融の世界」と「経営・労働の世界」とを繋ぐパイプが極めて細くなった。そのため後者の世界には金が回らず、前者の世界では使い道のない金がバブルを生み出しながらクルクル回っているという状況を作ってきた。(中国など新興市場に資金は流れて、それらの地域では労働条件も改善されているとは言えるが。)

日本について言えば、そういう「金融の世界」にアクセスできる人間の資産は急激に増えているはずで、突出した金持ちが以前より増えている。それに対して「金融の世界」にアクセスできない一般庶民は全般的に所得が低下傾向にある。つまり、前者の世界では好景気、後者の世界では不景気という状況になった。それが主として小泉の登場前後から急激に進んできた事態だろう。小泉はその流れに乗っただけにすぎない。

一つの国と言う範囲で経済を見たときには好況と不況が並存している状況が続いてきた。そして、単に数字上で比較してみると、「金融の世界」のプラスが「経営・労働の世界」のマイナスより少しだけ大きいと言う状態が続いてきた。それが2000年代の「好景気」の内容である。

余談だが、財政というのは、そうした状況を是正する2大チャンネルの一つだと私は考えている。一つは労働法制と労使関係であり、もう一つが財政による所得再配分である。前者の話は今は措く。後者はそこで累進的に課税を行なって国内の金のめぐりをよくする役目を担うべきであったのである。

話を戻すと、そのような「格差是正」のほかにも、90年代の不況の際の赤字を、好況である「金融の世界」の住人達が返済する必要があるのである。しかし、2000年代になっても未だにプライマリ・バランスが赤字が続いている。全体として好況であれば、これは必ず黒字にしておかないとおかしい。つまり、好況時に税額が足りないのはおかしいのだ。不況時に膨れ上がった一時的な公共事業はすでにもとの水準に戻っているはずで、社会保障は人口構成によって必要額が変わるから、90年代より増えていても削れという話にはならない。こういう状況であれば、当然、90年代の赤字を増税で賄わなければならない。当たり前の話なのである。

だから、今こそ累進課税であり資産課税の重課が必要なのである。ところが実際には消費税だ。消費税を増税して借金返済というのは、たしかに借金は減るだろうが現状に逆行する面がある。「経営・労働の世界」から「金融の世界」へと金を流すことになるからだ。なぜなら国債を持っている人の多くは「金融の世界」の住人だから。(しかし、サブプライム問題によって、再度不況になる可能性があり、それには注意が必要だ。しかし、「金融の世界」の住人からはもっとしっかり税を取れるしくみにならないと話にならんという点は変わらない。)

なかなかこうしたことが一般の理解を得られないというのは困ったことである。その意味からも、本書のようなわかりやすい本はその点でも多くの人に読まれるべきだ。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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