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アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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大塚英志 『「伝統」とは何か』

 そもそも、木村敏が「貰い子妄想」が日本固有であると仮定する前提として、「日本固有の家制度」があることをあげていることにぼくは疑問である、とすでに記した。というのは、たとえば今日の「夫婦別姓」をめぐる論議などで持ち出される「日本の伝統としての家制度」が、実は近代に新たに作られたものであることは、初歩的な歴史学の書物で容易に知ることができるからである。
 たとえば18世紀から19世紀にかけての江戸時代後半において、武家社会では全相続の四割が養子によるものであったという研究があるほど、「家督の相続」と「血縁」は一致しなかった。「家」を継ぐ条件は「血統」が唯一ではなかったのである。
 また一方では、「姉家督」と呼ばれる女性による家継承は豪商や豪農の間で広く行われていたし、末子相続という末っ子による家継承などを含め、武家以外の社会では、ぼくたちが近代の「家制度」から連想する「長男が戸主として家を継承する制度」とは全く違うかたちの家族習慣が存在していたのである。
 ところが、明治政府がドイツ民法をモデルに導入した、「戸主」によって「家」を代表させ、さらに「万世一系」の「天皇」という国家の「戸主」を根拠づけるため、「戸籍」に血統性を導入した結果として、ぼくたちが、今、なんとなく信じている「日本の伝統としての家制度」が出来上がったのである。(p.41、強調は引用者)


本書はこうした「なんとなく信じられている」信念が政治的に作られてきたものであることを具体的に示そうとする。大塚氏自身も言っているように、こうしたスタンスは全く珍しいものではない。しかし、まだ十分に広まっているとは思えないので、一つの事例として引用しておく。

 時代劇などでしばしば登場する「生類憐みの令」を、犬を人間以上に大切に扱えという奇妙な法律と思い込んでいる人は少なからずいるはずだ。
 しかし、1687(貞享4)年に出されたいわゆる「生類憐みの令」の第一条には実はこうある。
 ・・・(条文は漢文なので略)・・・
 つまり、捨て子があっても届けるには及ばない、拾った者が自分で養うか、誰かに養育を頼めという、拾った者の責任を強調するものだ。「犬」や、それから犬以上に実はこの法令で「憐れみ」の対象となった「馬」、そして行きだおれの人々をいずれも捨てたりせずにちゃんと養えとするのが「生類憐みの令」であり、「生類」のところに「犬」と「馬」と人間の赤子が入っているところに当時の子供観が実は見てとれる。
・・・(中略)・・・
 江戸時代の文芸を少し気をつけて読んでいくと、困惑するのは捨て子に対する淡白ともいえる感情だ。(p.64-65)


これは雑学的な知識としても使えるような箇所であろう。私見ではこのあたりの着想はフィリップ・アリエスの議論と並行している。恐らく(間接的に?)影響を受けているものと見られる。(というか、こうした議論をしようとする人がアリエスの作品を知らないとは思えない。)

アリエスの『<子供>の誕生』における議論というのは、主にフランスの話なのだが、上と同じように17世紀以前くらいまでの社会では(現代では)「子供」(とされる年齢の人間)に対する考え方、感じ方が異なっていたというものである。とりわけ、乳幼児に関しては死亡率が高かったこともあり、かなり(現代では考えられないほど)淡白な扱いであったとされている。

「歴史」教育で何を教えるべきかといえば、「歴史」をめぐる様々な記述や発言を生徒たち一人一人が批判的に読みとっていくための「歴史の批評的な読み方」であるべきだ、とぼくは思う。(p.203)



同感である。しかし、(上の引用文は教科書問題への言及の中で出てきているのだが)実際の学校教育の場でこの考えを実践するのは簡単ではなかろうとも思う。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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