アヴェスターにはこう書いている?
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『世界』2007年11月号(その2)
田岡俊次 「「給油をやめると日米同盟は危うい」は本当か?」より

まず、安倍の辞任についての見方は「なるほど」という感じである。

 だが、この意味不明の辞任声明も「私がいることが」の後に「公明党との関係上」という語句を挿入すると論旨がつながる。公明党の姿勢こそが、11月1日に期限切れとなる通称「テロ対策特別措置法」(01年11月2日制定、当初は二年の時限立法、三回延長した)を延長するにしても、あるいは別個に洋上給油を可能とする新法を作るにしても決定的重要性を持っているのだ。
 ・・・(中略)・・・。衆議院では480議席中、自民305、公明31議席だから三分の二を得るには公明党の賛成(あるいは欠席)が不可欠となり、同党は「嬉しくないキャスティング・ヴォート」を握らされそうな立場に立っていた。
 ・・・(中略)・・・
 安倍氏が辞任する前日、9月11日夜10時から二時間余、都内のホテルで与謝野馨官房長官、麻生太郎自民党幹事長、北川雄一公明党幹事長らが、洋上給油を可能とする新法について協議したが、公明党側はそれが参議院で否決された場合、衆議院での再可決には協力しがたい、との態度を示したようだ。・・・(中略)・・・。安倍氏は米、英などアフガニスタン攻撃への参戦国(およびその後の「国際治安支援部隊」参加国の一部)からの洋上給油継続の要請と、与野党逆転の参議院との板挟みとなり、頼みの綱の公明党も再可決に難色を示したため、もはや「詰み」の形成に陥っていた。生来小心で緊張すると神経性下痢に悩まされる安倍氏は、この絶望的状況の中で体調がさらに悪化し、国会の大臣席に長時間座ることに耐え難い症状となり、ついに突如「投了」を宣言したもののようだ。(p.154-155)



安倍がまともな政治家だったら、公明党を説得するためにあらゆる手段を講じるところだろうが、彼の知的レベルと困難に立ち向かう能力の低さでは、それは適わなかったということだろう。(それだけの交渉術があるとすれば、あれほど強行採決の連続などせずに、もっとスマートに法案を成立させられたはずなのである。強行採決の連続は交渉力やオルタナティブを構想する力が極めて弱いことを示している。)

なお、下痢で大臣席に座っていられなくなったという話は面白いが、体調悪化はとってつけた理由と思われる。




 日本の補給艦が引揚げた場合、「米国人の対日感情は悪化し、日本は国際社会から孤立、日米同盟も危うくなる」と外務省や自民党、一部の新聞は説いてきた。従来も在日米軍に対する「思いやり予算」の削減などの論議が出るたび、対米追従主義者は同じことを唱えてきたが、これは「お布施をしないと地獄に落ちる」というオウム真理教のお告げに似ている。(p.157-158)



根拠のない脅しによって人を半強制的に誘導しようとする点は完全に共通である。この比喩は非常に優れているので、利用価値があると思う。




 ③ブッシュ政権は「ユニラテラリズム(独善的姿勢)で、孤立化を招いた」と民主党から非難されている。米国人のほとんどが無関心な日本の給油活動が法律の期限終了で中止になったことを騒ぎ立てれば「孤立化」を裏付け選挙に不利だ。米政府がイラクからの各国軍の撤退を非難したことがないのもそのためだ。(p.159)



日本国内(特に、国会やマスメディア)で行われる外交に関する議論では、こうした他国の状況への配慮が多くの場合、omitされる。




 ⑤米国が僅か35億円程度の話で日米同盟をやめ、横須賀、佐世保などの基地使用権と、年間2200億円の日本からの補助金を失うとは思えない。冷戦の終了で海外基地の必要性は減じたとはいえ、米国が西太平洋、インド洋での制海権を確保するためには、日本の二つの港とそれに付随する厚木、岩国飛行場は手放せない。英国は1704年、スペイン継承戦争で奪取したジブラルタルを、スペインと悶着を続けつつなお支配し、米国は1898年の米西戦争で得たキューバのグアンタナモ港をなお保持している。敵対してでも軍港は確保したいのだが、もちろん同盟関係を保ち、友好的に使えればはるかに好都合だ。日本は基地従業員の人件費や、光熱水道費など約2200億円を「思いやり予算」で出すほか、基地内の建設費、周辺対策費、民有地の地代、国有地の推定地代を含むと、米軍への財政支援は年間で計約6500億円に達する。こんな気前の良い同盟国は他にない。もし35億円の燃料の件で日本と対立するなら、まるで毎年1億円の利益を得ている取引相手と50万円の問題で争い、取引をやめるような形になる。(p.159)



日本にとってはこうした基地とその周辺の費用を提供しているという事実は、アメリカとの外交カードとして使えるのだが、日本政府にはそうした積極的な意思はないようだ。国会が自民党一党支配から脱すると、このあたりの変化も出てくる可能性がある。例えば、政府=自民党という立場では国内事情を盾にしてアメリカと交渉するのは難しいが、国内の対立をうまく利用すれば、交渉に持ち込むことも可能だからである。




伊勢崎賢治 「日本は「美しい誤解」を生かせ」より

今でも日本は「大義」を議論しませんね。当のアメリカでは、今でも大変大きな政局になって中間選挙でブッシュさんは負けたのに。
 これは情けない。なぜかというと、軍事作戦の「大義」にかかわらず軍を出すのは、いわゆる「発展途上国」です。・・・(中略)・・・。失礼な言い方になりますが、彼らにとって「大義」はあまり関係なく、経済的なインセンティブによって派兵します。日本は経済大国でありながら「大義」が議論できない希な国です。(p.166)



この理由の一つは、国内での議論積み重ねがないからだろう。憲法の法律論で、軍事作戦に参加することは、否定されていることももちろん影響している。しかし、日本の支配層がこれまでアメリカとの関係を徹底的に重んじてきたという事実は、決して捨象できない現実である。そうした圧力が議論を抑圧した面もある。

こうした支配層の特性のせいで、庶民の側に対して重要な事実が隠蔽され、それによって世論が形成されてしまうのである。そのような権力と直結し、情動的に操作された世論(彼らの「利益=大義」を議論せず押し付ける側)と対抗するには、「利益とは別の大義」を語る側は法律を盾に取るという形で防戦するしかないという状態なのだと思う。

従って、俗に「憲法9条があるから軍事や防衛について議論ができない」というのは誤りであり、権力者側の利害と結びついた側が、そうでない議論をできないようにしているために、法律論という選択肢しか残されなくなってしまっているわけである。

この状況を変える方法は、情報を隠蔽できないようにすることである。権力を分散させること(一党支配を終わらせること)や情報公開の仕組みを整えることなどが考えられる。もちろん、左派は知的に法律論以外のフィールドでも議論を戦わせられないかどうか、模索することもあってよいだろう。




 はじめにお話ししたように、SSRというのはアメリカにとって、世界テロ戦争の根幹の土台です。そこで日本は、アメリカ自身も含めて他の同盟国ではできないことをやった。それが武装解除です。ドイツにもイギリスにも不可能だったでしょう。それはなぜか。
 「美しい誤解」と言った人がいます。日本はアフガニスタンで美しい誤解をされていたから、武装解除に成功した。
 アフガン人は誰も自衛隊のインド洋上活動について知りません。
・・・(中略)・・・
 それが「美しい誤解」だったわけです。日本は軍事的な関与はしていない、銃で脅して武装解除をするのではない。日本は中立な立場でアフガニスタンのことを考えている。だからこそ私たちは抵抗勢力に対して、武装解除されて新政権に組み込まれることの安心感を説得できた。(p.166)



こうした「美しい誤解」を嘘ではない形で実行することが、平和的な国際貢献であろう。

平和主義を掲げた外交とは、本来こうしたものであるはずであり、今後の日本の外交は、こうした方向性を基本に構築していくべきだと私は考える。
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