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アヴェスターにはこう書いている?
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毛里和子 『日中関係 戦後から新時代へ』(その2)

 1971~72年の米中交渉では、周恩来もキッシンジャーもニクソンもきわめて率直だ。とくに米中のリーダーが語る赤裸々な対日戦略や日本像が興味深い。
 周はキッシンジャーに対日警戒が必要だと切々と訴える。・・・(中略)・・・
 これに対しキッシンジャーは、米軍の存在が日本の軍事力強化への抑止弁になり、日米安保条約はまさにそのためにあるとくり返す。いわゆる「瓶のふた」論である。彼は、在日米軍の撤退を求める周にこう答える。「私が大学で教えていた理論からすれば、我々が日本から撤退して日本に再武装を許し、太平洋の向う側で日本と中国に互いの力のバランスの崩し合いをさせる、というのは筋の通ったことかも知れません。でもこれは我々の政策ではありません。日本が大々的に再軍備をすればやすやすと1930年代の政策をくり返すでしょう」(七月九日)。
 翌年二月ニクソンも・・・(中略)・・・「[しかし]保障はできませんが、われわれは日本に対してきわめて強力な影響力を行使できるし、われわれの政策で、日本に、朝鮮や台湾に対する冒険をさせないようにできると確信しています」と述べた(1972年2月22、23日。W.バー編・2003)。



アメリカにとっての日米同盟(日米安保条約)の意味は興味深い。日本の軍事力増強をさせないために米軍を置いておくという意図が当時からあったということ。90年代以降、米軍再編に伴う米軍の相対的な撤退とともに日本に再軍備の要求を出していることと対応している。

また、アメリカが日本をコントロールできると考えており、実際にそれを行ってきたことにも注目してよい。アメリカが日本にとってどのようなパートナーなのか、よく考える必要がある。アメリカの都合で日本を利用しようとする意図は常にアメリカには存在する。日本政府に、それに対抗する戦略があるかどうかが問題であり、それをもたなければならない。




 他方中国にとっても、日本がOECDの開発援助委員会(DAC)諸国中最大の援助国であり続けている。・・・(中略)・・・
 日本の圧倒的シェア(42%)は、80~90年代半ばまでの中国近代化建設で果たした日本の役割が決して小さくなかったことを如実に示している。ちなみに同時期の米国政府の対中借款は、1件、2300万ドル、全体に占めるシェアは0.1%にすぎず、順位にして20位である。(p.114-116)



この点は重要であり、日本側がもっと主張してよいことかもしれない。79年から95年6月までの累計についての日本のシェアは41.91%であり、他国を圧倒している。ドイツ、9.86%。フランス、8.42%、スペイン、7.89%。イタリア、6.98%と続くからだ。これら4カ国を合わせた以上の割合を日本一国で占めている。




 内外ダブル・スタンダードが崩れてくるのは、新ナショナリズムが公然と主張され始めてからである。
 とくに戦後半世紀たった90年代半ばが転機となった。衆議院で「戦後50周年決議」の動きが始まると、自民党保守派議員の間で「歴史の見直し」の動きが活発になる。(p.170)



内外ダブル・スタンダードとは、国外に向けては反省とお詫びを表明しつつ、国内に向けてはA級戦犯も戦争の犠牲者だった、とか、太平洋戦争は侵略戦争ではなかった、といった主張がなされていた状況を指している。

自民党保守派が歴史修正に動き出した時期は大変興味深い。この時期の直前まで、自民党は下野しており、党内の極右勢力が政権与党としての責任を無視してやりたい放題、言いたい放題を言える状況になっていたと推察する。その上、政権にようやく復帰したと思ったら党内のリベラル派が村山談話などを出して、反省の論理を従来よりも強く主張したから、それへの反発が高まり、歴史修正主義が党内でも保守的な傾向の人々には支持されやすかった(反対されにくかった)という状況が想像される。

そして、再び政権を取った自民党は、メディアを通して世論操作も行えるようになり、それが続けられた結果、(さらにインターネットの普及という要因などもあるが)近年の過激で虚妄に満ちたナショナリズム言説が大量生産されるようになったのではなかろうか。

唯一の原因とは言わないが、現在の日本のナショナリズムが政界で特に顕著になっていることの理由は、こうした点に求めることができそうである。

(2015.1.18一部訂正)




台湾問題問いアキレス腱を抱える中国からすれば、米国との同盟関係を強めている日本が拒否権をもつ常任理事国となり、国際社会で中国と並ぶというシナリオは避けたいからである。(p.199)



日本の常任理事国化に中国が反対する理由の一つ。




龐によれば、戦前は脱亜入欧、戦後は脱亜入米で、日本はアジア・アイデンティティを喪失した。「多数の日本人は自分たちはアジアに住んでいるとは考えているが、自分が“アジア人”だと考えているとは限らない」(龐中英・2005、同2004)。



アジア・アイデンティティというもの自体、オリエンタリズムの所産であるから、それを「喪失した」とは私は考えない。もともとそんなものはなかったからだ。

しかし、その後の龐中英(ほうちゅうえい)の言葉は、確かに私自身にも思い当たる節があり、ギクリとさせられた。

もちろん、アジア人というカテゴリーもオリエンタリズムであり、そうした観念を抱くことがないこと自体にはそれほど問題はないと思っている。しかし、もし中国やその他の「東アジアや東南アジアの諸国」の人々の多くが「アジア人」という意識を形成しているとした場合、そこに日本の人々が加わっているという意識がないとすれば、それは問題でありうる。

また、それ以上に懸念すべきは、上記のような「アジア人」意識は実際には形成されていないとしても、日本の人々が「彼ら」としての「アジア人」に対して「われわれ」としての「日本人=欧米世界の一員?」という意識――ちなみに、これは冷戦時代の思考(「日本=西側=欧米の一員」という発想)でもある――からオリエンタリズム的な見下した姿勢を周辺諸国に対して持っているとしたら、どうだろうか?いや、実際にそうした見方が広く見られるのではないか?

現実の社会が各国の「追い上げ」によって、もはやそれを許さない状況になりつつあるところに、多くの素朴な(すなわち批判的でない)人間が、過激なナショナリズム言説に賛成し、国際社会では通用しない「内側の論理」を対外的にまで主張してしまっている要因があるのではなかろうか。

龐中英の言葉は、私から見ればオリエンタリズムの枠内にあり、その意味で私の思考の枠組みとは異なっており、彼の言葉には首肯できないところがあるが、その内実においては、日本の言論状況を鋭く指摘する良い言葉だと思う。




 だが一番大きな問題は、将来において中国がアジアの中の一員としてアジアとともに歩む、という保証があるわけではない点である。すでに述べたように、経済の急成長で大国化してきた中国では、超大国化をめざすラディカルな民族主義が大衆レベルで歓迎されている。経済力はグローバルだし、核を含む軍事力は着々と整備されている。これまで東アジアの国々を自らの“周辺”としてしか見てこなかった中国が、「周辺を地域に上昇させ、中国を地域の中に融合せしめ、地域と中国を融合させ、自分と周辺を区別しない伝統的な中華思想から脱し、[二国間の]“善隣友好”から“地域融合”政策に発展させる」(龐中英・2004)ことができるだろうか。(p.214)



日本の多くの人々がこの点を懸念していることだろう。確かに尤もである。私もこうした懸念がないわけではない。しかし、それが現実のものになるのは20年程度は先のことだろう。アメリカがヘゲモニーを持つようになったのも、19世紀の半ばから急速に経済発展した延長上で、20世紀前半の「三十年戦争」(1914年からの第一次世界大戦から1945年までの第二次世界大戦)を経た後のことである。それと同じように、ヘゲモニーを握るまでには長い年月がかかる。

中国がヘゲモニー国家となるかどうかさえ今では未定だが、アメリカが中国との関係を重要視するメッセージを発したことは、歴史におけるヘゲモニー移転の図式と一致している。しかし、中国は一人っ子政策の影響で30年後には人口構成が今の日本のような高齢化を急速に迎えることになる。移民を受け入れなければ、経済発展には限界がある。しかし、政治の改革の速度は遅く、ヘゲモニー国家に伴う自由主義は当面実現しそうもない。

そうしたこともあって、日本や他国を大きく凌駕したそのとき、中国のヘゲモニーは崩れる方向に向かうと私は見ている。その意味で、覇権の拡大だけに注目してもダメで、いかに経済発展の突出ぶりを適度に抑えながら、敵対関係にならないようにするかが重要だと考える。この辺についてのもう少し細かい点は別の機会に別の箇所で述べようと思っている。
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