アヴェスターにはこう書いている?
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毛里和子 『日中関係 戦後から新時代へ』(その1)

 これらの諸国(引用者注;東南アジア諸国)への賠償はほとんどの場合、日本政府が賠償額に相当する生産物ないしサービスを日本の企業から調達し、それを相手国に提供する形をとった。つまり賠償には、戦後で与えた被害への償いというより、これを通じて日本の経済復興を実現し、他方で相手国の経済発展に間接的に寄与しようという狙いがあった。賠償する相手の東南アジア諸国は、日本にとってあくまで「市場」だったのである。その際、相手国の独裁政権と賠償にあたった日本企業との癒着が生まれた点も問題として指摘しておかなければならない。(p.12)



戦後責任の観点からも、戦後の日本の経済復興という観点からも、これは基本となる認識である。その際、東南アジアに市場が向かった要因として次の指摘は興味深い。

 きびしい冷戦の中、西側はソ連・中国などに戦略物資の禁輸措置をとった。1949年にはココムが成立、翌年12月には米国政府は「対中国戦略物資禁輸措置」を決め、日本はそれに同調した。・・・(中略)・・・
 日本の対中輸出制限は、カナダに次いできびしかった。中国大陸との経済関係を求める声は日本国内では強かったが、政府がそれを抑えたのは、工業力をもつ日本が中国などに近づくことを阻み、西側の同盟国として日本を確保しておきたい米国の戦略があったからである。米国も日本政府も、50年代から経済の主な進出先を大陸ではなく東南アジアに向けるようになる。(p.36)



こうして反共の防波堤として位置づけられることによって、日本の経済力は急速に発展していったのである。冷戦崩壊後の日本の経済の低迷は、この防波堤がなくなったことにより、日本の地政学的な重要性が低下したために起きた現象としての側面が強い。

85年のプラザ合意までは恒常的に円は安い水準に固定されていたために、日本の生産物は輸出に有利になっていた。これは今で言えば、人件費が安い中国の製品が有利な地位にあり、他国から工業生産を奪う形で「世界の工場」となっていることに相当する。円が高くなり、製造業などで「高度な技術を要する製品」以外のものは安い労働力によって作られる方がいいのだから、日本の立場(製造業の優位による高い経済的地位)がなくなっていくわけである。

この事態に一国レベルで対処するいかなる方策も、決定的にこの流れを転換させることはできないであろう。その意味で、日本が90年代以降経済的に低迷するのは半ば必然的であった。ただ、問題は、そこで政策を誤ったことである。アメリカの要望を次々と受け入れ、利用されるだけ利用されて捨てられようとしているのが、昨今の流れである。

財政赤字でさえ、アメリカが貿易摩擦を解消するために430兆円の公共投資をせよと日本政府に言ってきたことにまともに応えてしまった(しかも、その後、さらに200兆円ほど追加する約束までした!)ために、内容が熟慮されない公共投資が連発されたことの帰結ともいえる(★注)。それによって「公共事業」というもの自体への不信感が高まってしまい、日本政府は、政策のオプションを一つ失った状態が続いている。

ヒラリー・クリントンが先日、「米中関係は今世紀で最も重要な二国間関係」という趣旨の発言をしたが、この発言は日本の没落・切捨てと中国の台頭・優遇を如実に示していると思われる。

(★注)91年から2000年の投資規模430兆円を約束し、その後95年から2004年で630兆円に増額するよう改訂された。





 だが、対米協調か対米自立か、日米安保による安全保障か非武装中立かというような、日本の行き方や外交をめぐって国論が二分状況にあったことは、必ずしもすべてマイナスだったわけではなく、むしろ経済関係の一定の進展に見られるように、中国とのある種のきずなをつくりだし、この間の二国間関係を一種独特のものにした。(p.47-48)



この箇所は、多元的で重層的に外交を行っていたことの事例であり、今後の外交を考える上で示唆的なものを含んでいると思われる。
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