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アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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M.バナール 『黒いアテナ 古典文明のアフロ・アジア的ルーツ Ⅱ 考古学と文書にみる証拠』

ホメーロスはふつう「ヨーロッパ、西洋文学の父」とされている詩人だ。しかし、ホメーロスが生きていたころ、私たちが考える「ヨーロッパ、西洋」は存在したのか。「ヨーロッパ、西洋」はただの土地の名ではない。ヨーロッパ文明、西洋文明あっての「ヨーロッパ、西洋」だ。ホメーロスが生きた紀元前8世紀に、その名の文明があっただろうか。当時の「ヨーロッパ、西洋」はただの黒い樹林のひろがりの土地としてあっただけのことではないのか。
 同じことは、時代はもう少しあとのことになるが、「(西洋)哲学の始祖」ソクラテス、「(西洋)歴史の父」ヘロドトス、「(西洋)医学の開祖」ヒポクラテスにも言える。彼らが生きた時代には、「ヨーロッパ、西洋」はいぜんとしてただ黒い樹林のひろがりとしてあった土地で、その名の文明があったわけではない。(p.33)



これは本書の著者バナールではなく、本書を解説している小田実氏の言葉である。

歴史観におけるヨーロッパ中心主義を批判してきた私の問題意識と通底している。本書の批判対象である「アーリア・モデル」も同じカテゴリーに入るものだが、より人種主義的な側面を中心に批判の対象としている点が「アメリカ的」である。(アメリカでは社会状況としてレイシズムが問題化しやすいため、こうした側面からの議論が日本よりも多くなされている。)

小田氏の報告で面白かったことをもう一つ引用する。99年のコソボ空爆の際のことである。(引用文中の「卍」は本当は逆向きなのだが、うまく表示されない。)

アテネの目抜きの大通りには、「USA」の「S」を「卍」に替えて「U卍A」と大書した壁の落書きをいくつも見かけた。(p.37)



さて、では、いつものごとく、本書の中で興味を惹かれた箇所の幾つかをピックアップして記録しておこう。

「枢軸時代」説の隠れた意図はギリシアの事例で露呈する。「枢軸時代」説は、ギリシア人が、したがってヨーロッパ人が、文明世界の始まりにいたという説である。(p.104)


これはなかなか興味深い指摘である。枢軸時代説はアーリア・モデルに立脚しているというわけである。これには基本的に賛成できそうである。

ただ、枢軸時代説を世界システム論的な視点から読みかえれば、その時代に「大陸規模の世界システム」が存在していたことを示すことができると思われ、その意味では発見的なモデルとしても利用可能だと思われる。実際、本書を読む前の私にとっての枢軸時代説はそうしたものであった。

しかし、私のように読み替える際にも、バナールの指摘を十分意識しておくことは極めて重要であることに変りはない。私の読み替えはヤスパースの枢軸時代説そのものを支持するものではなく、全く別のものへの変換だから。

本書は邦訳で1,000ページを越える大著であり、しかも非常に興味深い論点に満ちている。それを逐一書き出していくことはできないので、特段興味深い論点について次の機会にメモしておくことにする。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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