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アヴェスターにはこう書いている?
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橘木俊詔、浦川邦夫 『日本の貧困研究』(その1)

 各世帯類型が全世帯の貧困率に与えた寄与率の95年から01年にかけての変化を調べた表3-8を参照すると、高齢者世帯を除いた単身世帯は、95年から01年にかけて寄与率が7.8%上昇しており、世帯全体の貧困率の上昇に最も大きな影響を与えていることが読み取れる。すなわち、90年代半ば以降、「仕事を引退した世代の貧困」に加えて、「働き盛り世代の貧困」が表面化してきたといえる。(p.84)



 95年から01年における寄与率の変化を考慮すると、もっともプラスに変化したのは、無職(若年・壮年・中年)世帯の8.4%であり、1年未満契約の雇用者世帯の2.5%がそれに続く。すなわち、90年後半(ママ)における失業の増加や、不安定雇用の拡大ならびに不安定雇用者における貧困の増大が、日本における貧困の全体的な増大に大きく寄与したと結論づけられる。(p.85-88)



90年代以降の貧困の増大は、非正規雇用の拡大(労働の規制緩和)が大きな要因となっている。この点に関して、政府と与党の罪は重いというべきだろう。




 イギリスでは雇用保険の給付期間を終えた失業者や、未加入で受給権利のない失業者に対しても「求職者手当」として最低限の生活を支えるための公的扶助が行われているのに比べて、日本では、「失業者の生活保障に関して社会保険と公的扶助が連動していない」のが現状である。(p.116)



参考としてメモしておく。




貧困ラインを中央値の50%に設定したケースで全世帯をサンプルとした場合は、92年から01年にかけて貧困削減の効率性は一貫して80%を超えており、決して低くない。すなわち、貧困層への過剰受給、非貧困層への無駄な受給は、日本の生活保護移転に関してはほとんど確認されないことがわかる。(p.139)



重要な事実。但し、日本の生活保護制度は「本来、生活保護を受けてしかるべき世帯の多数が何らかの原因によって保護を受給していない」(p.139)という問題がある。




 興味深いのは、最賃と雇用の関係は非線形であることを示したイギリスのDickens et al.(1999)の研究である。Dickens et al.(1999)は、NES(New Earnings Survey)を用いて計量分析を行うことにより、最低賃金と労働者の平均賃金を比較した比率であるカイツ指標(Kaitz Index)が0.55より低い地域では、最賃の引き上げによって雇用の上昇が見られる一方、0.55以上の地域では、雇用に有意な影響を与えないとの実証結果を示した。この研究は、上記のような推定結果が得られたことは、労働市場に買い手独占の考え方を応用した理論モデルからも説明できるとしている。
 最低賃金のアップが雇用に与える効果は、労働市場が完全競争にあるのか、それとも買い手独占にあるのかが、効果を区別する一つの論点であることがわかる。我が国の労働市場がどちらの状況にあるかを判断するには、綿密な実証研究を待たねばならないが、完全競争から離れていることはほぼ確実ではないかといえる。このように最低賃金が雇用に与える影響についての見解は様々であるが、重要なことは、最賃の引き上げが必ずしも雇用の喪失をもたらすものではないこともある、という視点を持つことであろう。我が国でも、最賃の引き上げが雇用に与える影響は、労働者の属性や地域、産業によって相当異なると考えられる。(p.171-172)



最賃を上げると雇用が減るという批判に対して、必ずしもそうは言えないという実証研究に基づいて反論している。その上で、日本の統計を用いて検証した結果が次の箇所。

 したがって、『就業構造基本調査』の集計データによる分析では、最低賃金の水準が高い県において、若年女性の雇用が有意に低くなるという現象は見られない。この結果は、被説明変数を60歳以上の女性や10~99人の規模の企業に勤める被雇用者の雇用者割合にした場合も同様であった。すなわち、我が国においては、最賃の引き上げが雇用の喪失をもたらすと、明確に結論づけることは不可能である。(p.175)



日本では最賃を上げても雇用は減らないとすれば、それによる貧困の削減効果はどの程度だろうか、というのが次の箇所。

 しかしながら、最低賃金を10%上昇させた場合は貧困世帯のうちの約5%、15%上昇させた場合は約6.5%が貧困ラインを脱出できる。10%程度の引き上げではなかなか大胆な貧困の削減につながらないことが示唆されるが、それでも日本全体で換算すると、10%の最賃上昇で約20万世帯が貧困から脱出できる計算であり、決して少なくはない。第4章の分析で述べた公的年金制度や生活保護制度に比べれば、貧困の削減に対する効果は限定的であるとはいえ、ダグラス=有沢法則が弱まり、夫と妻がともに低所得である世帯が増加傾向にある現状では、勤労者世帯の最低生活を保障するセーフティ・ネットとして、最低賃金制度の効果は無視できない。(p.177)



10%の上昇というのは、時給にしてせいぜい60円とか70円の上昇の世界である。しかし、それでも20万世帯が貧困ラインから脱するというのは、なかなかの効果ではなかろうか。

民主党などは最賃を時給1000円にするといっているが、金額がどの水準が適当かは別としても、上記の実証研究の結果から推定する限り、最賃を上げるという方向は、現在の日本においては間違っていないと言えそうである。




もう一つ期待されることは、最賃に関する運用実態を情報公開して、国民の最賃への関心を高め、政策がうまく機能するような土壌を形成することである。最賃未満で労働者を働かせているような企業の財・サービスを多数の消費者が敬遠するようになれば、必然的に不公正な企業は淘汰されることになる。(p.182)



最賃を引き上げると、企業の側が脱法行為を行う可能性が高まるが、それに対して行政に期待するとされていることの一つ。この情報公開が完全に意図したとおりに機能するかどうかは別としても、これは有意義な情報公開ではある。

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