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アヴェスターにはこう書いている?
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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エミール・マール 『ロマネスクの図像学』

このサン・ジルのフリーズに表現されているのはイエス・キリストの受難である。この主題はどこにでも見られるもののように思えるかもしれないが、実は中世芸術においてはまったく例外的なものなのだ。そこには「オリーヴの園での逮捕」、「ピラトによる裁判」、「鞭打ち」、「十字架を担うキリスト」が次つぎに描き出されているのだが、芸術家たちがこうした主題を取り上げたのはそれほど昔のことではない。おそらくはこれに先立つ数年前、トゥールーズのラ・ドラード修道院回廊の柱頭彫刻にはじめて現われ、ついでボーケールの教会のフリーズとサン・ネクテールの教会の柱頭彫刻に登場する。このことからも知られるように、こうした作品はすべて南フランスに属するものであって、北フランスにはまったく見られないものなのである。たとえば、あれほど豊かな説話的柱頭彫刻の宝庫ブルゴーニュ地方においてさえ、キリストの受難の系列に属する彫刻は皆無なのだ。このことは、12世紀初頭の南フランスに受難を中心とする挿絵入り写本が存在し、芸術家たちはこの写本を手本にしているのだと推測させずにはおかない。(上p.57-58、強調は引用者)

11世紀はじめに中央高地を旅していたアンジェの学僧ベルナールの言葉を聞いてみよう。「わたしは今まで」と彼は言っている、「聖人を讃えるのは絵や図によるべきであって、彼らのために像を造るの愚かしく、冒瀆的なことと思っていた。しかし、オーベルニュやルエルグやトゥールーズ地方およびその周辺地域の住民の感情はそうではない。彼らの間では、教会がそれぞれの守護聖人像を持つのは昔からの習わしである。教会の財源いかんによって、像は金や銀だったり、あるいはもっと価値の低い金属だったりする。そこには聖人の頭蓋骨や何らかの注目すべき聖遺物が入っている。」このように、北部の人間が南部に入ると、もう一つのフランスを発見することになる。(上p.299、強調は引用者)

このように、南フランスが彫刻と金銀細工によって聖人たちを讃えたのに対し、北フランスはそれをステンドグラスによって行なったのである。(上p.340-341、強調は引用者)

13世紀の偉大な彫刻、シャルトルからパリ、パリからアミアン、アミアンからランスへと発展したあの素晴らしい芸術は、しばらくの間、南フランスには知られていなかった。やがてそれは南フランスにも入っていったのだが、それもやはりサンティヤゴへの巡礼路を通じてだったのである。(下p.109、強調は引用者)

ギリシアとローマが、われわれの柱頭彫刻や教会扉口の装飾にほとんど影響を与えていないというのは不思議なことかもしれない。たしかにプロヴァンス地方の芸術には、古代ギリシア・ローマの繊細な香りが漂っている。そこでは、古典的な唐草文様、ギリシア雷文、ハート形葉飾りなどがロマネスク建築に全体として優美な外観を与えている。だが、ここでも他と同じように、柱頭の怪物たちは古代オリエントから借りてこられたものなのだ。フランスのそれ以外の地方では、古代ギリシア・ローマの模範は忘れ去られているようであり、何かしらギリシア芸術の息吹きを感じさせるようなモチーフはかろうじて散見されるにすぎない。(下p.197)


近年の私の問題関心の一つに、地中海世界とアルプス以北の世界との関連性についての認識がある。

12~13世紀とそれ以前に関しては、やはりかなりの地域的な差異があったと言えそうである。ここに引用しなかった記述も参考にする限り、南フランスには主にレヴァントを介して中東やイスラーム世界から様々な形で文物が伝播しており、その限りでギリシア・ローマの遺産を継承していた。それに対し、イル・ド・フランスなど北部では地中海世界との直接的な交流も少なく、慣習などにも相違が大きかったことがわかる。

これらの地域の共通点としては、知識人・支配階層の用いる共通語としてのラテン語があり、教会組織を介して知識人層に交流があったことは不思議ではない。個人的に気になるのは、民衆レベルの言語生活の近親性がどの程度だったのか、という点である。それが交流の度合いを示すものだと思われるからである。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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