FC2ブログ
アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

小野善康 『不況のメカニズム ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ』(その2)

 流動性の罠が起こるのは、人々の貨幣保有願望(流動性選好)がいつまでも残るからである。このとき、何と比較しての願望かと言えば、ケインズは実物投資との比較でしか考えなかった。・・・(中略)・・・
 しかし、人々が貨幣を保有するとき、収益資産との比較だけでなく消費との比較も行う。消費するか、使わずに貨幣としてとっておくかという選択である。消費が増えていくと、さらに消費を増やすことによって得られる効用の増分は減っていく。これに対して貨幣保有量を増やしても、さらに持ちたいという気持ちは減退しないから、消費が控えられる。そのため物が売れなくなり、企業にとっても生産設備を拡充する意味がなくなるから、投資も減少する。その結果、総需要が減って企業収益も悪化するし失業も増えるから、所得が減少する。
 つまり、流動性選好の持続と消費願望の減退が、消費だけでなく企業の収益予想悪化を通して投資をも抑制し、総需要とそれによって実現される総所得を低水準にとどめてしまう。これが著者の提唱する「不況動学」の考え方である。(p.170-171)



本書の考え方を最も端的に要約している部分を抜粋した。特段付け加えることはなく、全く同意する。




すなわち、不況脱出には不安を拡大させない状態を地道に積み重ね、人々に安定状態にいるという確信を強めてもらうしかない。しかし、それを待てない政府は不良債権だ国際累積だと騒ぎ立ててますます不安を煽り、財政削減や人員削減を推奨して失業を拡大させる。そのため、人々は流動性選好を強め、物が売れずに所得が下がって税収も大幅に減少するから、財政支出は逆に悪化してしまう。
 実際、不況の深刻化は、1998年に実施された橋本政権下の財政構造改革と2001年以降の小泉政権下の構造改革始動後に起こった。さらに、赤字国債が激増したのは98年であったし、歴代政権でもっとも財政赤字を蓄積したのは小泉政権であった(図25)。(p.187)



歴代政権で最も財政赤字を蓄積したのは小泉政権だったというのは、あまり指摘されない事実である。安倍政権は「成長重視」路線として小泉の経済政策をほぼ引き継いでいる。財政や失業、給与所得の上昇などの点からも、この政策は批判されるべきであろう。




 デフレ緩和手段の一つとして、政府が公共事業によって労働需要を増やし、人余りを減らすということが考えられる。そうすれば、貨幣賃金と物価の下落が抑えられて消費を刺激する。・・・(中略)・・・
 乗数効果の論理とは異なり、ここでは公共事業に使った金額は重要ではない。重要なのは、どの程度人余りを改善し、それによってどの程度デフレを緩和したか、ということなのである。このため、平成不況期の日本のように300万人から400万人もの完全失業者があり、企業の稼働率も大幅に低下しているような状況で、公共事業によってわずか数万人程度の雇用を作っても、デフレにはほとんど影響がないから、需要拡大効果もあまり期待できない。(p.192-193)



本書で小野は、乗数効果を否定し、公共事業の効果は別のところにあることを論証するわけだが、そこから引き出される政策の意味を述べた箇所がここである。投入する金額が問題ではなく、余剰労働力をどれだけ解消するかという考え方は、もっと広く浸透するべきものである。




 小さな政府推進政策の一環である公務員の削減問題も、公務員が非効率だから減らすべきだという議論にすり替えられてはいるが、実際は税金を取って公務員に支払うのはけしからんという、純粋に分配の問題である。その証拠に、職を失う公務員をどこで吸収し活用するかという本当の意味での効率化の視点が、完全に欠落している。おまけに「天下り反対」というスローガンのもとで、辞めた公務員の再就職を禁止する政策まで取り沙汰されている。公務員が天下りで高額の報酬をもらうのは不公平であるが、効率面から見れば、彼らに働く場を与えずに放置する方がもっと悪い。
 つまり、効率が重要だと言いながら分配面だけで議論しているのである。不当に高額な給料を禁止するのは当然だが、効率面から見て本当に行うべきは、仕事場を確保して彼らの能力を生かすことである。(p.200)



そもそも、主として民間企業が通常は行えない(損益分岐点以下になってしまう)事業を公務員は行っている。その意味で公務員を非効率といってしまうのは不公正であろう。収益が上がらないことをやらせて、収益がないと言って非難しているということなのだから。

小野はその点には触れないでおきつつも、公務員削減の議論の誤りを的確に指摘している。公務員の削減を行うとしたら、それは基本的には経済が完全雇用の状態になったときである。

非自発的失業が存在する場合、公務員の削減をしても意味はない。公務員給与を多少抑えて、(さらに言えば、高所得者への課税を強めて)その分、公務員の雇用人数を増やすという政策の方が、効率の面から見れば遥かに良いのである。
スポンサーサイト




テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント
消費性向の低下は本当か
>つまり、流動性選好の持続と消費願望の減退が、消費だけでなく企業の収益予想悪化を通して投資をも抑制し、総需要とそれによって実現される総所得を低水準にとどめてしまう。これが著者の提唱する「不況動学」の考え方である。(p.170-171)

 確かに需要不足が不況の原因と言うのは正しいと思いますが、それが本当に「流動性選好の持続と消費願望の減退」つまり消費性向の低下によって生じているのでしょうか。もし本当にそうならそれは家計的に余裕があることの証明ですから、これほど自殺者や自己破産者の増加は問題になっていないと思います。
 また本当にそうなら理由はどうあれ過剰貯蓄の人たちは反社会的行為を行っているのですから、それに税金をかけて消費を促すか税金で回収して財政支出に回せば日本の不況は簡単に解決するはずです。それをやらないであれこれ理由を付けて財政赤字を増やそうとするのは、税金たかり族の気楽な妄言としか言えません。
私はどう考えても平成不況の原因は中国初のデフレ不況だと思います。
【2007/06/13 00:57】 URL | 金子吉晴 #- [ 編集]

私からの異見提示
金子吉晴さま、このような小さなブログにコメントいただきありがとうございます。

はじめにお断りしておきますが、私はブログのコメント欄は議論の場だとは考えておりませんので、ここで込み入った議論をするつもりはありません。ですから、以下の記述も金子さんと議論するためというよりは、「頂いたコメントを読んで私が何を考えたか」を示すに留めたいと思います。

消費性向の低下に関する疑問に関しては、問題とされている文章は『不況のメカニズム』の本文ですので、私が答えるよりも、ご自分でこの本を読まれるほうが良いとおもいます。既にご存知かもしれませんが、ケインズの理論と小野の理論では消費性向に関する認識(理論)は大きく異なります。

私の理解では、「流動性選好の持続と消費願望の減退」は、「家計的に余裕がある」ことを必ずしも意味しません。この2つの条件は、家計に貨幣が蓄積される傾向を示すことは確かですが、最低限の生活に必要な財にも消費がまわらない(ケチる)ケースもありうるからです。例えば、失業者などは、流動性選考は相対的に高くなると考えられますし、消費願望も相対的に減退しているでしょう。これは自殺や自己破産などとも深く関連するでしょう。

税に関して私の見解を述べれば、所得税(個人・法人)の累進性は高めるべきという考えです。その立場から見ると、多くの有権者たちは金子さんのおっしゃる「税金たかり族」ということになります。経済成長と歳出削減だけでかなり財政再建できるというような自民党内にある見解などは完全にこのパターンです。小野もこれらの見方を批判していると私は理解しています。

また、「平成不況の原因は中国初(発?)のデフレ不況」という説については、中国の安い労働力がデフレの要因になっていることは確かでしょう。しかし、それが「中国発」かというと、やや疑問です。中国国内でモノを作っている企業や中国の国内に投資されている資本の多くは、中国の外から来ているのではないでしょうか?また、企業自体が中国の企業でも、そこに注文しているのは外国の企業ではないか?もしそうであれば、「中国の安い製品」の出所・出発点は、中国というよりも、それ以外の地域にあることになり、「中国発」と表現することは結論を誤導させることになると考えます。

また、安価な中国製品が国内に輸入されることや投資が国内ではなく中国に向かうことなどによって、「平成不況」が続いたとするならば、日本と同様に中国と貿易や投資を行っている他の国々も不況になっているはずです。従って、中国製品や中国の労働力がデフレ圧力になっている面はにあるとしても、それだけを強調して不況の原因と見なす見方は単純化し過ぎていると考えます。

繰り返しますが、コメント欄は議論のための場所ではないと考えています。異なったいろいろな意見があることを示したり、挨拶程度のやりとりをするところ、という程度に考えています。
【2007/06/14 00:53】 URL | Zarathustra #/7LGe6zc [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/169-a7b7ebad
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)