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アヴェスターにはこう書いている?
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橘木俊詔、森剛志 『日本のお金持ち研究』(その2)

 高額所得者に高い所得税を課すと、労働供給にとってマイナスであるとする反対論は強い。さらに、労働日数や労働時間に対する効果のみならず、勤労意欲にとっても逆効果だとする説は強い。やさしくいえば、たくさん税金をとられると、やる気をなくすといったことに要約される。
 この反対論が、日本において実証的に確かめられているかといえば疑問は多い。確かに既婚女性のパートタイマーや一部の高齢者は、103万円や130万円の壁があって、税制や社会保険制度が労働供給を少し削減した証拠は確認されている。しかし、成人男子についてはそのような証拠はどこにもない。
 ・・・(中略)・・・。日本では実態はなにもわかっていないに等しいのが現状だ。
 労働供給に対する負の効果があるとすれば、それは思い込みによるか、それとも反税キャンペーンに用いる感情的な反対論から発したものである。高い税は働く意欲を阻害する、といったことは直感に訴える魅力があるので、用いられることの多い主張なのである。しかし、私たちの日常生活のまわりにおいて、税金が労働供給にとってマイナス効果を及ぼしているとする実態は、成人男子に関していえばほとんどないと、誰もが認識しているのではないか。
 実はこのことは数多くの、データが豊富な欧米諸国における統計分析において確認されている。税が与える労働供給効果は少なくとも成人男子に関していえば、多くの国で存在しないか、それとも、あったとしても、きわめてマイナーな負の効果しかないのである。
 本書の関心である高額所得者に関していえば、日本では実証研究がないので明確なことはわかっていない。しかし、アメリカに関していえば、所得税制の変更によって高額所得者が労働時間を変化させた事実はない、とされている。すなわち、税制と高額所得者の労働供給は無関係なのである。日本においてもこのことは成立しているだろうと想像されうる。
 労働供給への影響力よりも、潜在的に重要なのは貯蓄や投資への影響である。・・・(中略)・・・
 貯蓄率に関しては、平均的な日本人であれば、税が貯蓄率に与える効果は非常に小さいと報告されている。高額所得者への効果はどうかといえば、分析しないとわからないが、多分一般の人とさほど変わらない行動と予想されるので、影響力は小さいものと考えられる。ただし、どの金融商品に投資するかといったことに関しては、アメリカにおいても日本においても効果が大きいとみなされている。(p.178-180)



税制が労働供給に負の影響を与えるという証拠はほとんどないが、投資への影響は大きい。

前者は税とは直接関係のない話であり、誰も引かれる税金のことを考えて仕事などしないのだから、私の見解からしても当然と思える。

後者は流動性をどのような形で持つかという話であり、税は直接目に見える形で、債券等がもたらす利益を規定するのだから、影響して当然であろう。




 以上のような経済学による最適所得税製に関する分析をまとめてみると、次の三つが重要な要因である。(1)どのような社会的厚生関数を想定するか、(2)所得税が労働供給に与える効果、(3)人の能力分布の形状、である。
 この三つの要因を考慮した上で、日本経済における最適所得税制を求めたものとして、アトダ=タチバナキ(2001)がある。この研究の結論は、1970~80年代の所得税の累進度は、ほぼ最適に近いものであったとするものである。すなわち、効率性と公平性の兼ね合いを考慮した上で、日本の所得税制はほぼ理想に近かったのである。
 当時の最高税率は70%、最低税率は10%であり、しかも十五段階の税率が定められていたことはすでに述べた。すなわち、所得税制の累進度は相当強かったのであるが、経済学の計算上からは望ましい税制だったのである。現在は図7-1でみたようにその累進度が相当弱められているが、これは最適な税制から離脱したものである、との解釈が可能である。言い換えれば、日本の最適所得税制を求めるのであれば所得税の累進度を強めることが要請されているのである。(p.188-189)



私も以前から所得税の累進度を高めろと主張してきたが、同意見である。また、財政赤字が膨大に膨れ上がった原因の一つは、所得税と法人税の最高税率(累進性)を下げたことにあるとさえいる。

統計的にも日本の税負担がやたらと低いことは、税について高い関心を持っている人にとっては常識である。橘木氏らも統計を分析した後の結論として、次のように言っている。

日本の高額所得者への実効税率は、消費税負担まで考慮すれば、先進五カ国(引用者注;米英独仏日)の中では低位のグループに入ると結論づけられる。つまり、日本の高額所得者への課税の程度は、国際比較からは低い水準にあるといえる。(p.194)



しばしば、税に関する議論では、高額所得者に課税を強化すれば、国外に逃げられてしまうなどという屁理屈が聞かれる。しかし、それならばドイツやフランスやイギリスから高額所得者が日本に逃げてきてもおかしくないはずである。増税に対しては屁理屈が多く言われ、それによって誤った世論形成がされるのである。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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