FC2ブログ
アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

橘木俊詔、森剛志 『日本のお金持ち研究』(その1)

 戦後の日本経営を物語るには、この経営者企業が中心となったことを強調する必要がある。新入社員として企業に採用されてから、企業内部で社員間の強烈な競争に打ち勝ち、内部昇進を重ねることによって、取締役、そして最後に社長にまで登りつめて経営者になる世界なのである。(p.75)



戦後の日本の経営の特徴として、株主の力が弱く、経営者の力が相対的に強いという性質があった。その経営者たちはかつて労働者として企業のなかですごしてきた者が多く、内情をよく知悉していた。これらが労働者に対するセーフティネットを企業が提供できた重要な要因となっていた。

これに対して、戦前の財閥では、株主は大株主としての財閥の家系のものであり、株主の力が強かった。近年では株主の力は相対的に強まってきたが、小口の株主の数が多くいる点で戦前の状況とは異なっている。

しかし、株主の力が強まり、経営者も外部から連れてこられることが多くなると、企業の経営はより短期的な成果を求めるようになると同時に、労働者の立場はより守られなくなってくる。ミクロにはこのような状態であってもなんとかなる企業も多いだろうが、マクロで見ると労働者の権利や立場の弱体化は、消費の低迷という形で企業の売り上げに歯止めをかけることになる。

マクロな経済構造を考える際の、ミクロな構成要素の変化として、この箇所の記述はそれなりに重要である。




高額所得者の名簿は公表されてきたが、1984年に公表方式が変更された。それ以前は所得額そのものが氏名、職業とともに公表されたが、84年以降は納税額が氏名、職業とともに公表されるようになった。・・・(中略)・・・
 当時の新聞記事を読むと、今までは国会議員の多くが高額所得者としてリストアップされていたが、84年には高額納税者リストから九割の議員が名前を消したと報告されている。この公表方式の変更は、自民党議員の主導で決められたと、新聞(1984年5月2日付朝日新聞)で報告されている。すなわち、政治献金等がどのように処理されているかが不明朗なので、政治家の支払う納税額がかなり低くなった可能性がある。現代においても、高額納税者100人のリストに国会議員の名はほとんどないので、不明朗さが残っている。(p.120)



高額納税者は2006年からは公表自体されなくなった。この流れは極めて
興味深いものがある。

以下の点が重要。

◆政治家は相当多くの所得を得ている。

◆政治家は納税額になると相対的に低くなる。

◆自民党の議員が納税額に公開の基準を変えさせた。

これが新保守主義が徐々に台頭しつつある時期に行われたことは、極めて示唆的であり、2006年に公開自体がされなくなったことは、それと同じ意味をもつと見ることができる。




 アメリカではすでに、所得が多い人ほど貯蓄率は高いという実証結果がいくつも出ている。所得が多くなると貯蓄率が高くなるのは、定式化された事実なのである。(p.129)



実証研究の裏づけがあるという事実は重要。




 これはアメリカのみならず、ヨーロッパ諸国でも同様であり、保守政権のときと社民党政権のときとで、税率構造が異なることが多い。・・・(中略)・・・
 では、日本はどのように評価できるであろうか。政治状況といえば、戦後の日本はごく一時期を除いて、保守政権が政治を担当してきた。したがって、経済自由主義や効率性の重視を基本としていたし、橘木(2000、2002)の主張するように、非福祉国家の典型であった。
 ただし、強調すべきことは、保守政権であったにもかかわらず、最高税率は戦後の長い間70~80%と高かったことである。これが社会主義政権、あるいは社民党政権であれば、別に不思議な税率ではなかったかもしれないが、保守政権においても税率が高かったことが興味深い。
 アメリカをはじめ、多くの資本主義国において、戦後から1970年代あたりまで最高税率は60~80%の高さであったし、所得税の累進度も高かった。これは政権がどの党によって担当されていたかということと無関係だったので、時代の背景として、どの国も強い累進税制を持っていたということである。高額所得者から相当多額の税を徴収することに、世界的にコンセンサスがあったといえる。(p.172-173)



70年代まで税率が高かったことは、金融のグローバル化によってある程度説明できるだろう。それによってもともと備わっていた「成長」という要素に加えて「優先的選択」の要素が大きな意味をもってきたので、世界的な経済的ネットワークの構造はスケールフリー性を増したと私は見ている。
スポンサーサイト




テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/166-20e431b3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)