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アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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太田雄三 『クラークの一年 札幌農学校初代教頭の日本体験』(その1)

クラークにしろホイーラーにしろ西洋文明こそ唯一の真の文明と信じていたと思われるから、その摂取に非常な熱意を見せている日本人に彼らが中国人に対する以上の好感を持ったのはある意味では自然であったと言えよう。(p.26)


本書では随所にクラークが日本人に対して好感を持ち、政府高官などとも関係が良好だったことが語られている。クラークが無批判的に日本びいきとなった点について本書はやや批判的であり、ホイーラーの方が日本の長所と短所を冷静に距離を取って評価できていたと考えられているのが特徴的だったりする。それはそれとして、クラークの日本観の形成に寄与した要因のひとつとして、この引用文のような日本人の欧米に学ぼうとする姿勢があったのは確かだろう。

本書でも言及されている通り、この後数年もすると、この流れは変わっていくし、幕末の頃にも攘夷思想などがもっと強かったため、クラークが来ていた時期は、ちょうどお雇い外国人にとって当時の日本の人々は受け入れる雰囲気が高まってた時期だったということは押さえておいて良いだろう。



ありがたいことに日本では新聞の編集者たちは彼らが印刷する記事について責任を負わされています。そして、彼らのうちのかなりの数がアメリカの新聞編集者たちの大多数がいるべきところ、つまり監獄、に入れられています。私は自由を愛しますし、出版の自由(一定の規制を受けた)の大切なことも信じていますが、多くの点でアメリカでは私達は極端に走りすぎたと思います。私は〔日本で〕公人や公的機関に対する誤解と中傷に基づいた記事に満ちていない日刊新聞を読むことが出来ることをとても愉快に感じています。(p.47)


クラークが言論統制を支持する見解を表明していることについては、私も最初は驚きを感じた。ただ、本書が解説するとおり、クラーク個人の経験に基づく背景がある。つまり、本書によれば、「政府による新聞の弾圧を肯定するような口吻をもらしたのはおそらくクラーク自身がアメリカにおいて新聞による直接間接の批判にさらされ、アメリカの新聞に対してかなり強い敵意を抱くようになっていたためであろう」(p.52)という。これはこれでクラークの発言がどこから発しているかが分かり的確な解説と思われる。

ただ、新聞がマサチューセッツ農科大学(本書ではマサチューセッツ農学校)の経営がうまくいっていないことを批判するのはジャーナリズムとしては当然のことであり、ましてや民主主義のシステムを採用している国で政府に対して監視をしない新聞などほとんど社会的意義がないと言ってよい。疑義を向けられたらそれに応答する(response)のが公的な側の責任(responsibility)であろう。当時のアメリカの報道がどのようなものだったのか、わずかしか知らないが、自らが批判を受けたからと言って言論統制を是認する発言をすることは、自らの立ち位置などを適切に把握できないとしか言えず、適切ではないだろう。(クラークにはこうした反省が十分でない点がしばしば見られるように思われる。)



日本ではクラーク達の来日の前年の1875年(明治8年)6月に新聞条例が改正され、また同時に讒謗律が制定されて政府による言論・出版の取締りが強化された。(p.52)



讒謗律は「ざんぼうりつ」と読むそうだが、「事実の有無に関係なく、他人の名誉を損ねる行為を暴き、広く知らせることを讒毀」として、罪に問うものだったようである。個人的には、事実があっても名誉を損ねたら罪になるというのは、全く理解に苦しむところである。支配する側が勝手に言論を統制できるという体制は、現在の香港(中国が国家安全法を押しつけている)を見ても極めて問題が大きいことは明白。立憲主義と権力分立が重要である所以だろう。

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