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アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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飯島渉 『感染症の中国史 公衆衛生と東アジア』

 中華民国政府はさまざまな面で日本をモデルとした国づくりを進めようとしました。しかし、大総統に就任した袁世凱が急速な中央集権化政策を進めたため、各地でそれに反対する動きが起こりました。(p.102)


中華民国政府の政策と日本の政策との関係には興味がある。台湾での中華民国政府の政策も日本をモデルとした政策や制度は、国民皆保険制度などそれなりにあるように思う。戦前の中国に政権があった時の中華民国でも日本をモデルとした政策や制度の設計が行われていたというが、それらは中華民国政府の中でどのような位置づけにあったのかということを知りたい。



 コレラが国家や社会に与えた影響を考えるとき、最も重要なのがコレラ対策として進められた水道事業の整備です。これはヨーロッパ諸国から進められます。ロンドンでコレラが流行したのは1832年のことです。濾過機で給水した地域に患者が少ないことがわかると、各地で大規模な都市計画とともに水道が整備されていきますが、その目的のひとつはコレラ対策でした。
 水道事業の整備には莫大な資金が必要となります。この結果、衛生行政の役割がしだいに拡大し、政府が積極的に関与する体制になっていきます。これは「国家医療」(state medicine)と呼ばれます。感染症対策、とくにコレラ対策が政府の役割を肥大化させたことは、感染症が歴史に与えたインパクトとして見逃すことのできない事実です。(p.127)


感染症対策が政府の役割を肥大化させたというのは、本書を読むまで考えたことがなかった観点だった。統治と感染症対策とは意外なほど深い関係があるということに気づくことができたことは、本書から得た収穫だった。

コロナ対策が世界的に行われているが、コロナ対策以後の時代は権威主義的な政府が増える可能性がある。人権や個人の自由を制限できるような制度が創設されたり、使われる事例となることなど様々な経路を通ってそれが実現しうるからである。すぐに急速に進むかどうかということではなく、例えば、5年や10年後に権威主義的統治を志向する支配者が表れたときに、コロナ時に創られた人権や自由を制限できるような制度を活用してしまい、それに歯止めがかけられない事態などが想定される。



 台湾総督府のマラリア対策を回顧するなかで、堀内次郎(台湾総督府医学校教授・校長)や羽鳥重郎は、「欧米人が新領土を新しく統治していくには、先ず宗教家をやってそうしてその方から段々宣撫していくのが普通ですけれども、日本人にはそういう便宜がありませんので医者を中心として」と述べ、水利事業などの土地整理やインフラの整備もマラリア対策を理由として実施されたと指摘しています。
 マラリア対策は日本の台湾統治の根幹であり、台湾総督府が台湾社会、とくに原住民社会を含む農村社会との関係を築く重要な回路だったのです。
 台湾の医療・衛生事業は、植民地統治のプラスの部分とされることがあります。たしかに、マラリアがある程度抑制されるようになったことは事実ですが、他方、台湾総督府が血液検査という回路を通じて原住民を含む台湾社会への介入を強めたことも事実なのです。(p.159-160)


安易に植民地統治を称揚するのは慎むべきだということがこうした指摘からもわかる。



 その意味では、戦後の日本は、近代日本の植民地医学をほぼ継承しました。しかし、戦後の感染症や寄生虫の研究の基礎に植民地医学があったことは、封印されます。そして、中国も日本住吸血虫対策に日本の植民地医学が関係していたことはこれを封印したのでした。(p.187)


こうした隠された歴史を明るみに出すことは重要である。

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