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アヴェスターにはこう書いている?
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藻谷浩介 『世界まちかど地政学 90ヵ国弾丸旅行記』(その2)

 台湾高鐵は、これまでのところ海外で唯一、日本の新幹線方式(在来線と完全に分離された高速軌道を専用の電車が走行する)を採用した高速鉄道として知られる。それに対して韓国や中国は、欧州同様、在来線の駅を使いつつ途中区間で専用軌道に乗り入れて行く方式を採用した。
 高鐵が新幹線方式を受け入れたのは、「台湾人が親日的だから」と説明されることが多いが、実際の理由は台湾の鉄道の状況が日本と似ているからだろう。台鐵は日本の在来線と同じ狭軌(軌間1067ミリ)であるために、標準軌(同1435ミリ)である新幹線車両の乗り入れができないのだ。だからこそ専用軌道を一から建設するしかなかったし、そうであれば独立したシステムとした方が混乱が少ない。
 新幹線方式には他にも、事故が少ない、高頻度運行ができるなどの特色があるというが、次回以降に紹介する韓国や中国でも言われるほど事故は多くないし、中国では線によっては日本同等の高頻度運行が行われている。台湾高鐵の運行本数も、韓国や日本の九州新幹線、北陸新幹線などと同レベルで、中国の北京-上海ほどではない。(p.175-176)


適切な評価と思う。



 より構造的な問題は、台中、台南とどんどん客席が空いていくことだろう。旅客流動が対台北の一方向で、全線通しての乗車効率が悪いのだ。これは日本で言えば、上越新幹線や、東北・北海道新幹線の仙台以北と似ている。
 とはいえ繰り返すが、台中や高雄は福岡や札幌、台南は広島や仙台と人口で同規模なのだ。九州新幹線がそうであるように、台北以外の都市の相互間にも、本来はかなりの移動需要があるはずなのである。うまくつかめば、乗車効率はもっと改善するはずだ。
 そこを取り逃している元凶は、台北以外の全駅が、まるで岐阜羽島駅のように都心から30分内外も離れた位置に設けられていることだろう。都心に駅のある台鐵を使えば、たとえば台中-高雄は一時間に一本の特急で二時間半少々、1800円程度。高鐵なら一時間だが、3000円するうえ、駅までの交通手段の料金と時間が別途かかる。それどころか台北-台中であっても、毎時二本の特急で二時間内外、1400円程度で行けるのだから、値段が2700円程度で台中駅から台中市街まで30分かかる高鐵の競争力は弱まる。
 このような設計は、台鐵の経営への悪影響を減らそうとしたのか、新駅周辺への土地投機でもうけようとした勢力が暗躍したのか、いずれにせよ高鐵の利用を減らす方向に働いた。しかも新駅周辺の開発は軒並み進んでいない。日本でも新幹線の新駅の周囲で、歩いてみたくなるような魅力のあるまちづくりに成功した事例は、古くは新大阪や岐阜羽島から、最近の上越妙高、新高岡、新青森、新函館北斗に至るまで皆無ではないか在来線に乗り入れない新幹線方式は、都心駅への直接乗り入れとセットでこそ真価を発揮する方式であると、台湾高鐵は改めて教えてくれる。(p.184-185)


私は日本の新幹線にはあまり乗ったことがないが、知っている範囲の日本の新幹線駅と台湾高鐵に乗った経験と合致する。



 いずれにせよ以上は、戦前の大日本帝国が、島である台湾には日本と同じ狭軌の鉄道網を構築し、大陸である朝鮮では満州とシームレスにつなげられる標準軌の鉄道網を拡張した結果なのだから、今の日本人があれこれ文句を言うべき筋合いはない。当時から日本人自身が、島国向けの方式と大陸向けの方式を使い分けていたのである。(p.192)


意図的に使い分けていたのかどうかは、やや疑問がある。日本と台湾では建設コストなども考慮して狭軌としたのに対し、大陸では他の地域と接続できる可能性を考慮して標準軌としたことで、島国と大陸とで軌間に相違が出たといったところであろう。



 中国政府が、この高速鉄道システムを「中国製」と称して世界各地に売り込んでいることは、日本で強く批判されている。だが、これはある外国人が以前から指摘していたことだが、日本人が「日本の優れた新幹線システム」と力めば力むほど、外国人は買わないだろうというのだ。言えば言うほど、「あのマメでクソ真面目な日本人でなくては運用できないシステム」と聞こえてしまう、というのである。その点(中国人には失礼だが)「中国で広範に定時運行しているシステム」と聞けば、「自分たちにんも使えるかもしれない」という印象を与えやすい。だからといって、他国から導入した技術を組み合わせて、「中国製」と売って歩くのはいかがなものかとは思うが、商売は客の側から考えなくては、売れるものも売れなくなるということは自覚しておいた方がいいだろう。(p.202-203)


「日本の優れた新幹線システム」と力むことが外国の顧客に違和感を感じさせるという点には共感する。そもそも技術は国に属するものとは言えない。ところが、日本では自国中心主義的な見方を強調する形で「日本の優れた技術」とやたらと言われる。しかし、このような見方は外国では受け入れられないのではないか。これでは「日本」は優れており、外国(顧客の国)はそれより劣ると言外に言っている形になるからだ。顧客の気分を害するメッセージが付属した売り方…。



 筆のついでに日本の地政学的位置に言及しますと、良くも悪くも(多くの場合には圧倒的に良い意味で)「他の世界から放置されやすい場所」です。戦略的要衝性のない世界の東の果ての島嶼群で、天然資源にも乏しい。そのくせ地形と気候の妙から農業生産力が高く、歴史を通じてむやみに人口が多かったために、ますます誰も侵略に来ない。元寇は、鎌倉幕府本体が出て行くまでもなく九州の地侍に追い払われてしまったし、大航海時代のスペインも、戦国大名に比べればあまりに軍事的に劣勢で、城一つ設けられませんでした。中国や朝鮮に至っては、文字記録が残る時代になって以降、倭寇討伐に対馬に来たのを除いて一度も軍隊を送って来ていないのです。
 日本から仕掛けて占領されたのが第二次大戦でしたが、これは「群島にある単一言語国家」という地政学的メリットをわきまえずに、半世紀ほど帝国主義の真似をして大陸を侵略した結果の、日本人の歴史上最大の失敗だったと思われます。戦後には軍事ではなく欧米アジアを結ぶ海上通商に徹することで、逆に空前に繁栄しますが、これこそ地政学的位置を最大限に活かした妥当な道だったのです。
 そういう構造を踏まえずに、中国にとって日本がさも重大な位置にあるように騒ぐのは、内田樹氏が指摘した「日本の辺境性」のなせる業ではないでしょうか。辺境国・日本の中にこもって、日本語しか話さず、行ったこともない他の世界のあり方を勝手に解釈するのは、地政学ではありません。(p.258-259)


概ね同意見。冷戦時代に沖縄がアメリカにとってそれなりに重要度があったことなど、ここで述べられた見解と多少異なる側面があることは指摘できるかもしれないが、戦略的要衝性は基本的には高くはないし、人口が多かったため侵略されなかったという点も妥当。日本ほどの人口がなかった台湾にはスペインやオランダが拠点を築き、島の一部を支配した時期があったことなどを考えても、日本はそれより遠いというのもあるが、軍事的に見た拠点の築きやすさという観点からも納得できるところだろう。



「核の傘」論とは、米国が原爆を落とした原罪を正当化するために無理に作っている議論、現実主義的な考え方の対極にあるイデオロギーだという面が多分にあります。それにかぶれるのは、北半球のいわゆる先進地域しか見ていない人なのではないでしょうか。地球全体を俯瞰し、過去の歴史と今の地理を虚心坦懐に学べば、先入観で凝り固まった世界観がどんどん溶けて消えて行きます。(p.263)


興味深い見解。

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