FC2ブログ
アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

倉橋耕平 『歴史修正主義とサブカルチャー 90年代保守言説のメディア文化』(その3)

「つくる会」の藤岡信勝が「専門家の時代の終わり」を告げたように、アマチュアリズムの知性は、エビデンスに基づかなくても目の前の「ディベート」に勝ちさえすればいいという知的態度を推奨していった。それは実は「論破」に至らなくても(マウントをとって屈服させなくても)、有効な言葉を繰り出し、相手の主張を相対化することで価値を得られるゲームである。(p.221)


確かに、こうした「アマチュアリズムの知性」にとって、エビデンスに基づく科学的な知識を持っている側の「まともな知識人(専門家)」は、権威であり、正当な知識を持つ者として、その分野では他の人より一段上の者として扱われる人である。それに対して、「アマチュア」が相手の主張を相対化できれば、それと同列のレベルにあるかのように振舞うことができる。

このゲームにおいては、「アマチュア」は依って立つほどのものを持たないがゆえに、失うものがない駒であり、このため容易に負けることがないゲームである。「非専門家である」ということが、このゲームにおいては、相手(専門家)を攻撃するための土台であると同時に、自分を守る殻でもあるという構造になっている。このような安全地帯から無責任は言葉を放ち続けることができるという構造は、「商品化された言説」を、それが批判により否定されても繰り返し同じ主張を続けることと結び付いているように思われる。(なお、ネトウヨとやり取りをする際も、こうした構造的な力が働くように思う。)

こうしたゲームのルールを明らかにしたことは本書の功績であるように思われる。

余談だが、80年代から90年代頃にポストモダニズムなどと呼ばれて一部では人気があった思想について、私はその頃から違和感を持っていたが、ポストモダニズムの相対主義は、上記のようなやり方が歴史修正主義や右派の側に取り入れられていくにあたって、追い風になったのではないか。ポストモダニズムの中でも左派的な主張では、権力側を相対化することで人々の側に権利を取り戻せるかのような考え方がないとも言えないと思うが、今度は同じやり方を権力側(右派や反動側)が取り始めたことで、その手法の持つ位置価は大きく変化している。このやり方は権力側から使った方が効果が大きいやり方であり、安倍政権は、ここ20年ほど続けられてきた右派によるポストモダニズムの取り込みにより得られた「論破マニュアル」(より正確に言えば、ゲームで負けないためのマニュアル)を非常に有効に使っており、マスメディアやリベラルな知識人たちなども、それに対して有効な対処ができていないように思われる。(なお、同じやり方を使うなら政権側が有利なのだから、メディアやリベラル派は不利なゲームを強いられている、ということは付言しておきたい。安倍政権がとっている手法はそれ自体としては難しいものではなく、何らの特別な能力や卓越性を必要とするものではない。)



 本書では、歴史修正主義の「知」そのものの特質について、次の二つの側面を実証した。第一に、「相対主義」を絶対化するコミュニケーション様式である。ディベートの方式がまさにそれだったように、自説を主流派の説と同じ俎上に載せることで、たとえそれがマイナーな説であっても同じ水準で議論するための格上げを可能にする。そのうえで、相手の意気をくじくための知識だけでもって、思想の言葉をもてあそぶ。「相対主義」の絶対化は、個々の議論に付随しているはずの重要度や客観性を等閑視させるのである。第二に、正当化の「偽装」である。歴史修正主義は、実際のところ「事実」や「議論の新奇性」には興味がなく、手続き上正当化できない「歴史」への言及を、消費者の参加と商売を成り立たせるメディアの制度を利用してあたかも正当なものであるかのようにして通用させる。第3章で検討したように、「論壇」といういかにも理性的なメディアの姿を装って。(p.229-230)


前者の部分はこれまでも気づかれることが多かったが、後者に関連することを明確にしたことが本書のよいところであろう。本書は、多くの人に推薦できる良書である。

スポンサーサイト




この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/1410-d2f776ef
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)