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アヴェスターにはこう書いている?
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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樋口直人、永吉希久子、松谷満、倉橋耕平、ファビアン・シェーファー、山口智美 『ネット右翼とは何か』(その1)
「第1章 ネット右翼とは誰か」より

 第二に、従来の説とは違いネット右翼やオンライン排外主義者は社会経済的地位が低かったり、社会的に孤立していたりしているとはいえない。通説が当てはまる可能性があるのは、性別と、主観的な地位を示す階層帰属意識の効果だけである。つまり、客観的にみて学歴や世帯収入、雇用形態の面で不利な立場にいるわけではなくとも、本人が主観的に自分は不利な地位にいると認識している場合には、ネット右翼やオンライン排外主義者になりやすくなる。この場合、不満が原因という通説も一定の妥当性をもつ。(p.36)


ネット右翼的な言説には明らかに屈折した感情や承認欲求が満たされていない感じがついて回る。こうした書き込み内容などから従来、ネット右翼らは社会経済的地位やそれらと結びつきの強いと思われる学歴が低いと思われてきたし、社会的にも孤立していると想像されてきた。主観的に自分は不利な地位にいると認識していると、ネット右翼のようになりやすい、というのは、彼らの書き込み(言説)の内容と適合的であることには何ら驚きはないが、社会経済的に低い地位ではない人が、あのような言説をまき散らしているという点は社会にとっては、従来抱かれてきた通念よりもネット右翼は危険な存在であり得ることを示していると言えるように思われる。



 第四に、政治・社会問題の情報源としてインターネットや本・雑誌、所属団体からの情報を利用する人ほどネット右翼になりやすく、テレビを利用する人ほどなりにくい傾向がみられた。書籍やインターネットは選択的接触が起こりやすいメディアである。また、インターネット上ではニュースや掲示板、SNSなど異なる媒体の間で相互参照がおこなわれ、それによって互いに情報に信憑性を付与することができる。保守系雑誌・書籍やインターネット上の情報を通じて「マスコミが報じない真実」を学習することで、人々はネット右翼へと近づいていくのではないだろうか。(p.37)


ヘイトスピーチ的な言説を垂れ流したり、歴史修正主義の言説を公言するような保守系雑誌・書籍に対する規制が必要であると思われる。表現の自由については、それを盾に自称「保守」(実際は反動)的な言説を守ろうとする自称「保守」(実際は反動)主義者が散見されるが、その辺りについて一定の決着をつけていく必要があるように感じる。(誤った「表現の自由」理解を正す。)



オンライン排外主義者はニュースサイトの運営者が編集した情報や、発信力をもつブログの著者の声ではなく、ネットワークのなかに流れる無数の「個人の声」を重視するといえるのではないだろうか。仮にそうだとすれば、反中・反韓が社会の「標準的」態度となっていくことが、より多くのオンライン排外主義者を生み出していく可能性もある。(p.38)


中国や韓国については、政府の動きだけでなく、人びとが日本に対してどのような見方をしているのかを知り、相互の関係を良くしようとしている動きがどの程度あるのかといったことなどにも目を向けていく必要があるように思われる。



 本章での検討を通して明らかになったのは、排外意識をもち、インターネット上で意見発信をしている人々のなかには、政治への意識や情報の取得方法が異なる二つの集団が混在している可能性があるということである。ネット上での排外的言説を発信・拡散している人々を一枚岩の集団と見なしてしまうと、彼らの動機の多様性を見落とす危険性がある。(p.38)


確かに。



「第2章 ネット右翼活動家の「リアル」な支持基盤」より

 しかし、これらの人々を「極右」支持層と位置付けた場合、階層的な偏りや特徴がないという点は、ヨーロッパ極右と異なる日本の特徴といえる。ヨーロッパの場合、高学歴層、専門職層などには明らかに極右を忌避する傾向がみられる。日本の場合、階層的地位が相対的に高い人々に極右的なものへの警戒心や反発が少ないということを意味するのかもしれない。(p.65-66)


このことは、社会科学的な教育が日本ではほとんど行われていないという教育内容の貧困さが要因になっているのではないかと私は考えている。本書では自営業、経営者、IT関係の専門職などにネット右翼的な傾向があることが示されていたが、前二者は学校教育を受けても、それを尊重する態度があまりない人々と思われ、後者のIT関係は理系であるため、社会科学をまともに学ぶ機会がほぼない人々であると私は見る。もしそうであるとすれば、社会科学的なパラダイムを習得しない傾向が強い人々という点でこれらの人々には共通点が認められるのではないか。このことが日本の特性へとつながると思われる。なお、大学が入学すれば誰でも卒業できるようなシステムであることも、このことに繋がっているのではないかと考えている。



「第3章 ネット右翼の生活世界」より

すなわち、地域政治が保守優位の状況にあるため、地域が基盤の生業と右派政治勢力は親和的な関係にあるといえる。そのため、自らの商売――地域活動――政治活動――ネトウヨ活動が、断絶することなく社会生活のなかに収まっている(こうして点で、自民党員にはかなり多くのネット右翼がいると予想できる)。(p.98)


なるほど。この説明は腑に落ちた。



「第4章 ネット右翼と参加型文化」より

 以上のように振り返ると、ウェブが登場してから約30年がたとうとしているいま、インターネットをめぐる状況は初期の思想とはまるで逆の方向に向かっていることがわかる。「フリー」「オープン」「シェア」ではなく、管理され、クローズドで、商業化されているのが現在のインターネット文化なのである。(p.110)


確かに。



 このとき立ち上がった現象の構造的側面は、「参加型文化」と「集合知」と呼べるものである。すなわち、1990年代の右派論壇は、歴史学の通説に対して「みんなで考えよう」「みんなで考えたことを共有しよう」という姿勢を示したのである。さらに重要なのは、これが学術出版ではなく商業出版で展開されたことだった。右派の政治言説は、インターネットやCS放送といったオルタナティヴなメディアにしか言論空間がなかった。こうした背景のもとで、言論空間は「ビジネス」として展開されるようになり、政治言説では売れる言説こそが正しいという「文化消費者の評価」が重要視されていく時代へと変化していったのである。(p.11-112)


ネトウヨ的な言説がビジネスとして展開されてきた点は非常に重要な指摘だと思われる。このルートを断つことが必要と思われる。



これまでの研究では、ネット右翼が一般に認知されるきっかけは02年のサッカー日韓ワールドカップでの日韓翻訳掲示板での日韓双方のユーザーの「論争」にあるとされている。日本の「2ちゃんねる」利用者は歴史認識問題をめぐる論戦で「勝利」した。そして、インターネットでの「論破」というコミュニケーション・モードに快感を得て、自ら知識を探求するわけではなくその手法だけを模倣する「フリーライダー」を増殖させた。
 こうした「論破」に熱中する傾向は、1990年代の歴史修正主義者の「歴史ディベート」にもみられた特徴である。歴史のテーマをめぐって2チームに分かれ、それぞれの主張のどちらに説得力があるかで勝者を決めるゲームを歴史認識の真理判断に導入しようとする活動がおこなわれていた。しかし、これはその場で相手を沈黙させることができればいいだけであり、単に自分の主張に都合のいい知識と論理を強化するばかりで、歴史の真実を明らかにしようとする営為とはとうていいえない。(p.112-113)


ネトウヨ言説のもつ特徴の一面を良く捉えている。「敵」を「論破」して「勝つ」ことが目的となっている。満たされない人(現状に不満がある人)であることとこれは関係がある。



 ここでは明らかに完全な「反転」が起こっている。「全体主義」「ファシズム」「プロパガンダ」「マルクス主義」、そして「メディア・リテラシー」といった用語はすべて左派が体制批判のために用いてきた分析概念だった。これらの用語が、本来の意味やそれまでに使われていた文脈を無視することで「右旋回」させられているのである。
 このことこそ、インターネット時代の一つの特徴ではないか。自分たちを攻撃するものとして敵視する「サヨク」の言葉をまさしく自己の武器にしているのである。(p.119-120)


この点については、私もかねがね思ってきたところではある。概念だけではなく、安倍晋三がしばしば口にする「印象操作」などの言葉もこれである。

なお、安倍政権では左派の政策を奪いながら「右旋回」させている点にも一言触れておきたい。例えば「アベノミクス」と呼ばれているもののうち、大規模な金融緩和とそれによる財政のファイナンス、財政出動という形式は欧州左派の政策であり、それの使い道が人々の生活ではなく経済界の意向に沿うものである点が異なっている。

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