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アヴェスターにはこう書いている?
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中西聡 『北前船の近代史――海の豪商たちが遺したもの――(増補改訂版)』(その2)

 北海道開拓の進展とともに、小樽と札幌でも1880年代後半から「企業勃興」現象が生じたが、その性格は小樽と札幌で全く異なった。小樽では、函館に匹敵する流通拠点としての重要性の高まりとともに、流通関連の銀行・商業・海運・倉庫業などで会社設立が進んだのに対し、札幌では、開拓使時代に開設された札幌近郊の官営工場が払い下げられるなかで製造業中心の会社設立が進んだ。(p.31)


小樽は民間の資本がベースになっているのに対し、札幌は官営工場がベースになっている点は重要。札幌はかなりの程度、官庁が置かれたことによって発展した都市という面が強い。ただ、対する小樽も純粋に民間の力で発展した街だったかというと、そうも言えない。確かに、企業の面では民間の資本が進出したと言えるだろうが、そもそも流通の拠点となり得た要因を考えると、鉄道の敷設や港湾の建設などといった政策的なインフラ整備があったからこそ、発展の条件が整ったという面がある。(このことは、戦中から戦後に小樽が衰退し、斜陽の街と呼ばれるようになるのは、国の政策の転換が大きく作用しているということからも裏付けられるだろう。)



 汽船運賃積はある程度まとまった輸送量を確保できないと効率は悪く、汽船購入には多額の資金が必要となるため、北海道産魚肥市場が完全に汽船運賃積輸送には至っていない段階では、汽船を所有することに経営リスクが大きかった。ところが、定期汽船網が定着し、本州の肥料商が汽船運賃積を利用して直接北海道の海産物商と取引するようになると、まとまった汽船輸送量が確保できるようになり、また日清戦争での日本の勝利により、朝鮮や「満洲」への日本勢力の進出が拡大し、東アジアでの定期汽船網の拡大が見られると、そこへの進出も見越して廣海二三郎家は1904年から積極的に大型汽船を購入し始めた。(p.148-149)


このように汽船購入へと舵を切るのと並行して買い積みの経営を縮小していったという。北前船の消滅は概ねこの時期のことだったと言ってよいかも知れない。



1916(大正5)年に刊行された日本の資産家番付から、日本の大資産家の分布を示すと、当時500万円以上の資産を所有した家が約130家、100万円以上の資産を所有した家が約770家、50万円以上の資産を所有した家が約2200家存在していたと推定される。そのうち北前船主で500万円以上の資産を所有していたと推定されるのは、石川県の廣海二三郎家・大家七平家、富山県の馬場道久家、福井県の右近権左衛門家の4家で、いずれも汽船経営に展開した北陸の大規模北前船主であった。その一方で、汽船経営に展開せずに廻船経営から撤退した北前船主も、資産額50万~200万円の間にかなり存在しており、北前船経営時代の資金蓄積の多さを物語っている。(p.157)


旧北前船主たちの資産レベルが概ねわかる。ピケティ的に言えば、上位1%に入る世帯はごく少なく、上位10%程度の世帯が多かったのではないか。



 北前船主が銀行に関心を持った背景には二つの面が指摘できる。まず北前船主は、輸送手段を持っていたことを活かし、江戸時代から遠隔地間の手形決済を行っていた。一般に、遠隔地間取引では、現金輸送のリスクが高いため、手形による決済が進展すると考えられるが、江戸や大坂のように両替商が発達した大都市ではなく、両替商があまり存在しない地方の湊町では、手形決済を北陸船主のような遠隔地承認が商人為替として直接担うことが多かった。こうした江戸時代からの金融面での北前船主の役割が、明治時代に銀行制度が広まるなかで彼らが銀行設立に積極的に関与した背景にあったと考えられる。(p.158)


倉庫業は物を保管するだけではなく、一種の金融業でもあったといった解説を聞いたことがあるが、そのこともここで述べられているようなことが関わっているのではなかろうか。
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