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アヴェスターにはこう書いている?
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鈴木幸壽・山本鎮雄・茨木竹二 編 『歴史社会学とマックス・ヴェーバー――歴史社会学の歴史と現在――(上)』
島田信吾 「比較歴史社会学序説」より

ドイツでは言葉を通じての議論、並びに文章を通じての“歴史”が重く見られ、それが過去の分析の中心になっていると思われる。それが一つには歴史学でもあるし、他方では歴史合理性と呼ばれるものであるのかもしれない。日本の場合、確かに歴史学的な議論は存在するし、過去の事実のテーマ化には事欠かない。しかし、社会的な傾向として、こうした言語を通じた議論はどうしても日常生活からかけ離れ、二次的なものになっているという印象を受ける。過去の意味はどうしても“歴史の中”にディスクールを通じて探られるということにはならず、いかに生存者が死者に意味付けを行うかということにあるからである。
 この意味付けが政治的な象徴性を帯びていることは2001年8月13日における小泉首相の靖国神社参拝にも色濃くに現れている。また1963年以来、毎年8月15日には、全国戦没者追悼式が行われているが、そこでの歴代の首相の挨拶の言葉を追っていくと、大変はっきりとした意味付けが行われているのが見えてくる。吉田裕が指摘するように、戦没者が生存者のための犠牲になり、今日の繁栄の礎となったという見方である。こうした追悼儀礼はもちろん一つの宗教とは呼べないが、ここで強く出ているのは、先祖があって現在があるという、時間の連続性である。この国家儀礼が日本人の戦没者の追悼を目的としている以上、この時間の連続性が国家の連続性、並びに文化アイデンティティーと深く結びついていることは明確であろう。
 さらに各地に存在する護国神社の祭りを見ていった場合、この時間の連続性が宗教儀礼を通じて人々に伝えられていっていると見なせるであろう。祭られている“英霊”と現在の間には儀礼によって関係が保たれ、後裔のために自ら犠牲となった先祖という意味付けがはっきりと見てとれる。
 ここでの歴史観は先祖から受け継いだ連続性の時間の流れであり、“現在”はこうした意味で過去に規定され、歴史の流れの他の可能性は否定される。いってみれば、この先祖のおかげでの現在というコンセプトは過去の対象化をはばみ、戦没者を加害者として見る視点を否定するわけである。つまりこうした思考は過去の“現在性”を強調しその対象化を阻む。こうした過去は結局は歴史になり得ないわけである。(p.104-105)


ある事実が歴史叙述の対象になりにくいということがありうる。この点の指摘にはなるほどと思わされた。

日本で第二次大戦や日中戦争などのことについて歴史学での研究があっても、それが参照されることなく、ネトウヨ的な自慰史観に基づく歴史物語がやたらと流通していることの要因を、上記引用文は指摘し得ているように思われる。すなわち、戦没者は現在のわれわれのために犠牲となった先祖であると意味づけられ、その犠牲により現在に貢献してくれた人である、という意味付けがされているため、戦没者は被害者としての側面だけが言われることになる。彼らの加害性は否定され、隠蔽される

客観的かつ公平公正に歴史を叙述しようとすると、戦没者を含めた当時の人々の被害性と加害性の両面を見なければならないが、「現在に貢献してくれた恩人」として(事実を知る前に、あるいは、事実を知っていたとしても、それ以上に強く)意味づけされてしまっているため、「英霊」たちの加害性を認めることができない。このような不当な信念が先立っているため、公的な場で議論をしようとしても議論が成り立たず、不毛な議論しかできない。不毛な議論ばかりが続くと、議論をしようという気も起きなくなっていく。結果、ドイツのような状況とは全く異なる現在の日本の言論状況が現れることになる、といったところか。



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