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アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス 『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』(その1)

ロシアには古くから飲酒の習慣があり、特に18世紀の皇帝(ツァーリ)たちが民衆をおとなしくさせておくために飲酒を奨励してから、その度合いがいっそう高まったようだ。(p.64)


ローマ帝国では「パンとサーカス」などと言われていたが、ロシア帝国では酒が政治的に利用された面もあるということか。国全体としては弱くなる方向の振舞(人びとの生活の困窮化を促進し、かつ健康を損なわせることで社会保護の支出を増大させ、労働力も失う)であるが、権力者が自らの権力を守るために権力を利用するという腐敗した状況が表れている事例と言えよう。



 アイスランドの例は、非常事態であっても、つまり特別措置が必要になっても、民主主義を維持することがどれほど大切かを教えてくれる。厳しい措置が必要なときほど民主主義を堅持しなければならない。自分たちで決めたことならば、それが苦い薬であっても少しは楽にのみ込める。(p.136)


現代日本の人々もこのことを理解しておくことは重要である。憲法に緊急事態条項を設けようという動きがあるが、これは緊急時には民主主義を停止させよう、という動きであり、本書の歴史的事実を踏まえた指摘とは真逆のことをしようとしているということは理解する必要がある。

アイスランドの例とは、未曽有の金融危機にあって、IMFから厳しい緊縮政策を求められていたにもかかわらず、国民投票の結果、それを拒否したことであり、その結果、国民の死を含む健康被害を食い止めることができ、経済的な立ち直りも早まった、ということである。



英フィナンシャル・タイムズ紙が報じたように、アイスランドの人々は「銀行より国民を優先した」のである。その考え方はアイスセーブ返済問題のみならず、銀行の責任者の追及という形でも表れた。たとえば、グリトニル銀行の元CEOラルス・ウェルディングは違法ローンを提供した罪で起訴され、有罪になった。グリムソン大統領も、「アイスランド政府は国民を救済し、今回の金融崩壊の原因を作った銀行幹部を刑務所に送りました。つまり、アメリカや他のヨーロッパ諸国とは逆のことをしたのです」と述べている。欧米の大手銀行と同じように、アイスランドの主要銀行も「大きすぎて潰せない」と見なされていたが、アイスランド政府は潰れるに任せた。その決断が正しかったかどうかは、結果を見れば明らかである。多くのヨーロッパ諸国が苦しみつづけるなか、アイスランドは景気回復に成功したのだから。(p.138)


こんな政府を持つ国民が羨ましい。翻って今の日本の政府(特に安倍政権)はどうだろうか?



2009年に開館した新アクロポリス博物館もその一つである。旧博物館が手狭になったために計画されたものだが、かつてイギリスのエルギン卿が持ち去ったパルテノン神殿の彫刻――エルギン・マーブル――を大英博物館から取り戻すためでもあった。(p.145)


旧帝国主義勢力が旧植民地などから文化財を持ち去ったことについて、元の場所に返せという動きがある。それはそれで確かにそれなりにもっともな点がある主張ではある。ギリシャのエルギン・マーブルもそうしたものの一つだったが、それを収容するための博物館を建てるというのは、果たしてどうなのかという気がする。ギリシャは、好況の時にこうした形での財政的な浪費が多く、そのため、不況時に対応する余力が小さくなる選択をしていたのだからなおさらだ。



EU諸国は、リビアでは民主主義のためにカダフィ政権を崩壊させながら、民主主義発祥の地であるギリシャでは民主的な投票を阻止したわけである。(p.159)


興味深い対比。外交の場で登場する「民主主義」は基本的に胡散臭いと思った方がいい。



無保険者になるのは実に危険なことで、2009年のある調査によれば、無保険者は保険加入者に比べて早死にする率が40パーセントも高いことがわかっている。(p.176)


日本は国民皆保険ということになっているが、事実上の無保険者はかなりの数存在する。被保険者証番号を個人単位に割り振り、いわゆるマイナンバーと連動させることで保険の加入資格を一元的に管理できる仕組みを構築する方向で議論が進められているようだが、無保険者をなくするためには望ましい方向性だと言ってよいように思われる。(加入したくない人も強制的に加入させられることになるが、現行の制度でも制度上は強制加入であり、その実効性がより担保されるかどうかが今までとは違う。)

余談だが、「マイナンバー」と呼ばれるものについて一言述べておく。「私の番号」とこの番号には名付けられているわけだが、このことによって、番号はあたかも自分のものであるかのような錯覚に陥らされる。しかし、この番号は「私の収入、資産、健康等に関する情報を行政機関等が利用しやすくするために政府が私に割り振った番号」であるにすぎず、行政のため、特に税務署の業務遂行のために私に割り振られたものであると理解しておくことは重要であると思われる。



アメリカでは賢い予防医療などの「ヘルスケア」ではなく、ずっと高くつく「病気のケア」に金を注ぎ込んでいる。そしてその高くつくケアにおいて、医師たちは費用効率というものを考えず、医学的には必要がなくてもCTスキャンを多用したり、人口膝関節置換手術といった金のかかる手術に飛びついたりする。そのほうがもうかるからである。こうした状況から見えてくるのは、結局のところアメリカの医療制度は患者のためにあるのではなく、医療を提供する側――病院チェーン、製薬会社、健康保険会社――のためにあるということではないだろうか。(p.181)


公的保険などが不十分な、市場に任された医療というものは、当然、資金も知識も関連情報もより多く持っている供給側にとって有利な市場となる。医療に市場を導入・拡大することは、基本的に愚策である。


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